著者
柘植 光代 大越 ひろ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

<br><br>【目的】山梨県の2地域について、伝統的な家庭料理の特徴を把握すること及び地域住民が次世代に伝え継ぎたいと考えている料理を明らかにする目的で、生活基盤となる暮らし及び家庭料理の過去と現在の状況について聞き書きとアンケート調査を行った。<br><br>【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、2013年と2014年に聞き書き調査を行い、同時にアンケート調査も実施した。南アルプス市(峡西地域)と南部町(峡南地域)に30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった16人の女性を調査対象者とした。食料の生産方法と加工・保存方法、日常食と行事食、食の思い出や伝え継ぎたい料理について調査した。<br><br>【結果】南アルプス市は盆地特有の内陸性気候で扇状地であるため米作には不適であるが、日照時間が長いことを活かして、現在は果樹栽培が盛んである。昭和30年代は、主食として米の補食用に麦飯やほうとうを1日1食は作り、副食は野菜、豆、卵、川魚を食べ、菓子、味噌、醤油、菜種油も自家製であった。日常食ではかぼちゃを使った「おしくじり」、行事食としては各種の餅、太巻き寿司、「みみほうとう」、「やこめ」が次世代に伝えたい料理として挙げられた。南部町は静岡県に隣接した県最南端部に位置する。温暖多雨の気候を活かして、茶、たけのこ、生姜等が特産である。昭和30年代は、主食には粉物も利用し、副食には干し魚、野菜を使い、野菜やいもの乾燥品や漬物、味噌、醤油、菜種油も自家製であった。行事食として灌仏会の「おしゃかこごり」、田植えの「新じゃがと真竹の煮物」等を料理した。伝え継ぎたい料理として、特産品を活かした「富沢こわめし」、たけのこの煮物、生姜の佃煮や天ぷら等が挙げられた。

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