著者
名倉 秀子 渡辺 敦子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.146-156, 2003-05-20
被引用文献数
4

雑煮の構成内容から地域の特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,各地域に在住する学生の家庭を対象に,アンケートによる実態調査を行った。雑煮のもち,だし,調味料,具,盛り付けの器,伝承など雑煮の地域的な特徴について以下のような結果が得られた。1)もちの形態は角もちが北陸,東海以北,丸もちが近畿以西にそれぞれ80%以上出現した。もちの扱い方は「焼く」が関東以北4地域,「ゆでる」が北陸,中国,北九州の3地域,「そのまま汁へ」が東海,近畿1,近畿2,四国,南九州の5地域に分類できた。2)だしの種類は魚介類が東海および中国以西,肉類が東北,海藻類が北海道,北陸,九州,野菜・きのこ類が九州でやや高めの出現率を示した。3)調味料の種類から,すまし仕立て系が北海道,東北,関東1,関東2,北陸,東海,中国,北九州,南九州の9地域,味噌仕立て系が近畿1,近畿2,四国の3地域に分類できた。4)具の種類は人参,大根,鶏肉が全国的に高い割合で出現した。野菜類の緑色系において,北海道の三つ葉,東北のせり,関東1の小松菜,関東2と北陸の三つ葉,東海のもち菜,近畿1の水菜,近畿2と中国のほうれん草,北九州のかつお菜,南九州の京菜にみられるように地域に限られた野菜や正月の期間だけの野菜が出現していた。また,かまぼこやなるとの出現は地域の特徴を捉えていた。5)盛りつけの器の材質は全国的に椀の出現率が70%をしめ,母方系統の雑煮を20〜29年前から調理していることが明らかとなり,伝承について地域的な特徴は見出せなかった。
著者
名倉 秀子 長坂 慶子 高野 美幸 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.49-58, 1996-01-15
被引用文献数
7

A questionnaire was designed to inquire the actual conditions of dietary life on the first 3 days of New Years 1986-1992. The data on 1986, 1989 and 1992 were picked out and analyzed by time series analysis in a two-way layout. Four hundred and forty questionnaires of female college students returned 3 years in total. The findings were summarized as follows : 1) The distribution of the numbers of taken dishes from time to time was shifted from 2 peaks to 3 peaks a day as shown by smoothing line. 2) There were no significant differences between yearly variances of staple diets, side dishes and "Shirumono" (a kind of soup) respectively, but significant differences between daily variances of these. Besides these, there were significant differences between yearly variances of drinks and others. 3) There were significant differences between daily variances of "Zoni," "Osechi," and "Toso" respectively. These typical traditional diets were obviously taken more on the first day than the second or third day of New Year. 4) The ratio of dining out of staple diets shifted increasingly year by year and day by day, and the numbers dining out were significantly different between yearly variances and daily variances. 5) The Japanese style dishes of dining in was on the decrease, besides another style dishes was on the increase from first day to third day.
著者
名倉 秀子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.753-762, 2007-12-15

正月料理の地域的な特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,大学・短期大学の学生を対象に元日に喫食された料理について検討を行った.次のような結果を得た.1)全国平均の食事回数は2.92回/人となり,外食が0.34回/人,内食が2.58回/人を示した.関東I地域では外食が最も高く,北海道,北九州,南九州地域は低い値を示した.2)全国平均の副食料理は2.56品,その料理に動物性食品を1.97品含んでいた.副食料理数は近畿I地域より西の地域で全国平均より高く,動物性食品数では北海道,関東I,近畿II,北九州,南九州地域が全国平均より高い値を示した.3)全国平均の動物性食品の出現数は魚介類が1.39,肉類が0.43,卵類が0.16を示した.特殊化係数について,魚介類は関東II地域,肉類は北海道地域,動物性食品の調理法は北海道地域がそれぞれ最大値を示した.4)全国12地域の元日の食生活は主成分分析により,第一主成分の東西食文化要因,第二主成分の外部化要因により説明でき,北陸,東海地域を中心とし関東地域以北と関西地域以西の食文化の差が存在することを捉えた.本州,四国地域は北海道,九州地域より外部化の傾向が大きいことを捉えた.
著者
高橋 智子 齋藤 あゆみ 川野 亜紀 朝賀 一美 和田 佳子 大越 ひろ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.347-354, 2002-04-15
被引用文献数
9

The necessity of tenderizing meat for the elderly and complete denture wearers was apparent after evaluating the influence of the hardness of the meat samples on the ease of feeding persons with different chewing capability. Meat samples were tenderized by soaking in a sodium hydrogen carbonate solution and then heat treated by vacuum cooking. The hardness of the meat samples decreased with increasing concentration of sodium hydrogen carbonate in the soaking solution. A sensory test showed that the ease of feeding of persons increased with decreasing hardness of the meat samples, while hydration of the meat protein was increased. The apparent hardness of the meat samples increased with decreasing compression speed, so that the chewing rhythm of complete denture wearers and of the elderly was slower than that of dentate subjects. The results indicate that meat was not sufficiently masticatable as a food for the elderly and the complete denture wearer as compared with the dentate subjects since the compression speed depended on the apparent hardness of the meat samples in this study. The overall results reveal that tenderizing meat by sodium hydrogen carbonate soaking made it easier to feed the elderly and the complete denture wearers.
著者
品川 喜代美 金 娟廷 河村 彩乃 岩崎 裕子 高戸 良之 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.126-133, 2014 (Released:2014-07-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1

高齢者向けにテクスチャーを改善した餅様食品が開発されている。その食べやすさについて検討するため,テクスチャー特性と筋活動量の測定ならびに官能評価を行った。テクスチャー特性の測定は,飲み込む直前の食塊についても行った。試料は,高齢者向けに開発された餅様食品S,K,および市販の切餅を用いた。餅様食品SおよびKのテクスチャー特性の付着性は,切餅に比べて小さいことが示された。若年者を被験者にした官能評価において,餅様食品SおよびKの喉につまる危険性は,切餅に比べて低いと評価された。また,SおよびKの筋活動量は切餅に比べて少ないことが示された。餅は高齢者が喉につめやすい食品であり,高齢化にともない咀嚼機能が低下するといわれている。付着性と喉につまる危険性および筋活動量に関係がえられたことから,付着性を抑えた餅様食品は,切餅に比べて食べやすいことが明らかとなった。
著者
高橋 智子 川野 亜紀 中川 令恵 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.314-322, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究では,高齢者に好まれるごぼうを材料とした,食べやすいレトルト食品開発の基礎的研究を,力学的特性,咀嚼運動,官能評価より検討した。その結果,加圧・加熱時間が長く,表面積を大きく成形したごぼうであるほど軟かく調理できることが判った。また, ごぼう繊維に対して, 斜め方向から咀嚼できるよう成形したごぼ,咀嚼速度が速く食べやすいことが示された。以上の結果より,ごぼうは,加圧・加熱時間,加熱時の表面積,および咀嚼時における臼歯の貫入方向を考慮することで,食べやすいごぼう調理が可能になると推測される。
著者
岩崎 裕子 大越 ひろ 城 史子 高石 聡淑 島 宏治
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.268-275, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
23

飲料の粘度が“のどごし”に及ぼす影響を,官能評価および筋電図測定を行い検討した。被験者を若年群と熟年群について,更に飲用時の頭位を頭位0°(垂直)と頭位後屈として比較した。試料はずり速度50 s-1における粘度を,40,60,90 mPa・sとした3試料と,原液(1 mPa・s)の4試料とした。以後,η1,η40,η60,η90と示す。 官能評価における“のどごし”の結果,若年群は,η1,η40,η60には差が無く,η90が悪いと評価した。熟年群は η60の試料をのどごしが良いと評価した。共通して η90は後味が悪いと評価し,のどごしが良いというイメージは,ビールやすっきりした感じを求めることが示唆された。また,嚥下筋活動量を測定した結果,官能評価ののどごしと関連性はみられなかった。のどごしは粘度の影響を受けるが,個人の嗜好によるところが大きいため,適当な値を確定することは難しい。
著者
岩崎 裕子 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.23-30, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
23
被引用文献数
2

大根とゾルを混合した混合系試料を調整し,固形物の硬さの相違が混合系試料の食べやすさへ及ぼす影響を検討するため,力学的特性の測定,官能評価,筋活動測定を行った。 混合系試料は大根とトロミ調整食品を混合して調製した。大根は,加圧加熱,蒸し加熱,生,と硬さを段階的に変化させた三試料を用い,それぞれMR,MS,MPとした。コントロールとして蒸し大根のみの試料を大根Sとした。 喫食者にとっては試料全体ではなく,固形物の硬さが重要であることが示された。また,大根Sが混合Rよりも総筋活動量が低く,官能評価において飲み込みやすいと評価され,ゾルと混合することよりも,食品の硬さをある程度軟らかくすることが,きざみ食の食べやすさの改善に有効であることを示した。
著者
岩崎 裕子 大越 ひろ 石原 清香 船見 孝博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.84-95, 2012-02-15 (Released:2012-03-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

コンニャク入りゼリーの破断特性に及ぼす測定条件および調製条件の影響を検討した.コンニャク入りゼリーは比較として用いた寒天ゼリーに比べて測定条件の影響を受けやすいことがわかり,この結果をもとに測定の再現性,普遍性および実用性という観点から力学測定条件を決定した.さらに,コンニャク入りゼリーは,膨潤時間のような調製条件によっても破断特性値が変化することが明らかになった.コンニャク入りゼリーの力学試験方法を標準化する際に,これらの知見は有益である.
著者
川野 亜紀 細田 千晴 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-20, 2006-01-15
被引用文献数
5

Mixed gel-sol samples were prepared by mixing yam gel with grated yam sol. The sol samples were prepared to five different levels of hardness : those resembling salad oil, yogurt, mayonnaise, grated yamatoimo, and mashed potato. The lowest hardness of the mixed gel-sol samples was achieved from the sol samples with a hardness similar to that of yogurt or mashed potato. The higher the concentration of the sol used in the sample, the higher were the values for the "adhesive energy" and "cohesiveness." The results of a sensory evaluation of the mixed gel-sol samples revealed that the higher the concentration of the sol used in the mixed sample, the more likely it was to be evaluated as "sticky" and "cohesive." The samples made from the sols similar in hardness to mayonnaise or grated yamatoimo were evaluated as the easiest to swallow. The samples made from the sols similar in hardness to yogurt or mayonnaise were rated having less "residual feeling in the mouth." The sensory evaluation comparing gel sample alone with mixed gel-sol samples revealed that those samples in which the gel was covered with the sol were more likely to be evaluated as "soft" and having less "residual feeling in the mouth" than sample of the gel alone.
著者
名倉 秀子 大越 ひろ 茂木 美智子 柏木 宣久
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.361-369, 1999-04-15
被引用文献数
7

A questionnaire survey was conducted annually on the meal times during the first 3 days of New Year for the period 1986-1995. A total of 1,435 questionnaires to female college students were returned during the 10-year period, and the data were subjected to a time-series analysis. The ratio of persons eating per responder on each hour were analyzed by the Bayesian smoothing method to identify meal-time trends on a yearly and daily basis. The meal time on the first day indicated 2 peaks at about 10 A.M. and 7 P.M., and on the second and the third days showed 3 peaks at 9 A.M., 12 AM. and 7 P.M. These peaks tended to become less prominent year by year. Special New Year dishes were often eaten at about 10 A.M. on the first day, indicating a different dietary habit in food type and timing from the normal daily one. By the third day, however, the meal time and food type had almost returned to the daily dietary habit. The trend over 10 years moved closer to the daily dietary habit.
著者
大須賀 彰子 岩崎 裕子 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-22, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5

本研究では,油脂の性状がマッシュポテトの飲み込みやすさに及ぼす影響を力学的特性と官能評価の観点から検討した。試料は性状の異なる3種の油脂,すなわち液状油O,固形脂F(ゲル状油脂),固形脂S(ショートニング),また対照として水をマッシュポテトに添加し,調製した。その結果,固形脂のテクスチャー特性の硬さと降伏応力がマッシュポテト試料に影響していた。水平方向の抵抗力の測定により得られた平均抵抗力はマッシュポテト試料のなめらかさやすべりやすさの指標となり,この測定法の有効性が示唆された。マッシュポテト試料中の副材料を顕微鏡で観察したところ,水と油脂では分散が異なり,力学的特性にも影響することが示された。官能評価では,水添加試料が硬く,なめらかさに欠ける傾向を示した。また,水と液状油Oを添加した試料が固形脂F添加試料に比べ,有意にべたつき感と残留感が少なく,飲み込みやすいと評価された。
著者
高橋 智子 園田 明日佳 古宇田 恵美子 中村 彩子 大越 ひろ
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.231-240, 2008-10-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

The physical properties of gel samples of varied hardness were examined and the intake quantity per mouthful investigated in healthy subjects for its effect on the swallowing characteristics, mastication method, and swallowing frequency. The samples were prepared from gelatin and an agar-derived gelling agent of varied molecular weight. The subjects, regardless of the quantity per mouthful of the sample, recognized the difference in such oral senses as stickiness and ease of swallowing. Gel samples, taken in small portions, that were soft, highly adhesive, and with a high tan δ value (viscosity element divided by elasticity element) were squashed between the tongue and palate by most of the subjects before swallowing, rather than masticated with the teeth. It was also found that the greater the adhesiveness, elasticity element G′ in the linear region, torque and viscosity element G″ in the non-linear region, the higher was the frequency of swallowing until the gel sample had been completely swallowed. The overall results demonstrate that humans alter the mastication method and frequency of swallowing until the food has been completely swallowed according to the physical properties of the food.
著者
櫻井 美代子 大越 ひろ 増田 真祐美 大迫 早苗 河野 一世 津田 淑江 酒井 裕子 清 絢 小川 暁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 食文化視点より次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理を掘り起こすことを目的とする。<br /><br />【方法】 神奈川県内の主だった14地域である横浜市中区・横浜市泉区・川崎市多摩区・鎌倉市・三浦市・大和市・相模原市(旧津久井)・伊勢原市・秦野市・小田原市・大磯町・山北町・真鶴町・清川村の地域を中心に調査を行った。それらの地域の年配者に昭和年35年前後から昭和45年前後の食生活について聞き取り調査を行った。それらの料理内容をまとめ,文献による補足調査を行い,検討を行った。<br /><br />【結果・考察】<br />神奈川県は、立地により海・山の産物を利用した料理が多くみられた。水田を多く所有する地域ばかりでなく,水田や畑作からの裏作として,小麦・蕎麦・豆類が作られている地域も多く存在する。<br />その中で今回は,間食(おやつ)に注目し報告を行うこととする。神奈川県全域で小麦粉製品の所謂,粉物が多く登場する。行事(祭り等)での頻度が多い酒まんじゅうやまんじゅう類の他,小正月,どんど焼き等でのまゆ玉飾りがあげられる。月見の十五夜や十三夜に供えるだんごの他,日常では、春先のよもぎだんごや草の花だんご,へらへらだんごなどのだんご類のいろいろな種類がうかがえる。そのだんご類の材料としては,米粉,小麦粉,さつまいも粉などが使われている。行事等で供えられただんごは,きなこやあん,砂糖醤油などをつけて食されていた。また,日常のおやつとしては,蒸しパンや庭木として育てられた果物類なども間食としてあげられる。
著者
高橋 智子 河村 彩乃 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.342-350, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
18
被引用文献数
3

本研究では,食パン,およびミルク溶液の一部をサラダ油に置換した液状食品を材料としたゲル状パン粥を基本パン粥とし,加えて,基本パン粥試料の表面にとろみ(粘稠液状食品)を付加した試料を用い,ゲル状パン粥にとろみを付加することがヒトの嚥下状態にどのように影響するかを検討した。テクスチャー特性の硬さは品温20℃パン粥試料が45℃試料に比べ,有意に硬いことが認められた。官能評価より,品温20℃でとろみを付加したパン粥試料は,とろみを付加しないものに比べ,口中でべたつかず食べやすいと評価された。試料品温20℃の嚥下直前の食塊の硬さは,口中で食塊形成中に顕著に軟らかくなることが示され,嚥下直前の食塊のテクスチャー特性の試料間の差は小さいものとなった。表面にとろみを付加した45℃試料は20℃基本パン粥試料に比べ,嚥下時筋活動時間が短くなることが示された。
著者
千田 麻美子 川野 亜紀 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.4, 2003

【目的】 リゾットはイタリアの米料理であるが、そのテクスチャーとおいしさに関する報告はほとんど見られない。そこで、本研究ではリゾットのテクスチャーとおいしさに及ぼす米品種の影響について検討した。【方法】 日本米(Aこしひかり)およびイタリア米3種(Bウ゛ィアローネナノ,Cカルナローニ,Dアルボーリオ)の計4種を材料として用いた。調製方法は日本イタリア料理協会会員を対象に行ったアンケート調査を参考に、実験室レベルで調製可能なモデルを検討した。リゾットのテクスチャーとしては、調製後30分までの変化について、リゾット全体(全粒法)のテクスチャー特性の硬さ,凝集性,付着エネルギーおよび、米粒一粒あたり(一粒法)の破断荷重を測定した。また、シェッフェの一対比較芳賀変法を用い、調製後のリゾットについて、かたさ、存在感、べたつき感、好ましさの4項目について評価してもらった。【結果】 4種の米を用いたリゾットは、いずれも調製直後から経時的に、テクスチャー特性の硬さは増加傾向を示し、米一粒の破断荷重はやや減少傾向を示した。付着エネルギーは放置時間に伴い4試料とも増加傾向を示したが、Aこしひかりを用いたリゾットが他のイタリア米3種のものより大となった。しかし、Dアルボーリオを用いたリゾットは他のイタリア米のものより付着エネルギーの増加が顕著であった。官能検査の結果、AこしひかりとCカルナローニで調製したリゾットが好まれた。
著者
柘植 光代 大越 ひろ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

<br><br>【目的】山梨県の2地域について、伝統的な家庭料理の特徴を把握すること及び地域住民が次世代に伝え継ぎたいと考えている料理を明らかにする目的で、生活基盤となる暮らし及び家庭料理の過去と現在の状況について聞き書きとアンケート調査を行った。<br><br>【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、2013年と2014年に聞き書き調査を行い、同時にアンケート調査も実施した。南アルプス市(峡西地域)と南部町(峡南地域)に30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった16人の女性を調査対象者とした。食料の生産方法と加工・保存方法、日常食と行事食、食の思い出や伝え継ぎたい料理について調査した。<br><br>【結果】南アルプス市は盆地特有の内陸性気候で扇状地であるため米作には不適であるが、日照時間が長いことを活かして、現在は果樹栽培が盛んである。昭和30年代は、主食として米の補食用に麦飯やほうとうを1日1食は作り、副食は野菜、豆、卵、川魚を食べ、菓子、味噌、醤油、菜種油も自家製であった。日常食ではかぼちゃを使った「おしくじり」、行事食としては各種の餅、太巻き寿司、「みみほうとう」、「やこめ」が次世代に伝えたい料理として挙げられた。南部町は静岡県に隣接した県最南端部に位置する。温暖多雨の気候を活かして、茶、たけのこ、生姜等が特産である。昭和30年代は、主食には粉物も利用し、副食には干し魚、野菜を使い、野菜やいもの乾燥品や漬物、味噌、醤油、菜種油も自家製であった。行事食として灌仏会の「おしゃかこごり」、田植えの「新じゃがと真竹の煮物」等を料理した。伝え継ぎたい料理として、特産品を活かした「富沢こわめし」、たけのこの煮物、生姜の佃煮や天ぷら等が挙げられた。
著者
大須賀 彰子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.26, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 既報では、千葉県内を調査地とし、すしの利用において種類や具材等に地域差や特徴があることを報告した<SUP>1)</SUP>。本報告では、手作りのすしを使う割合が高かった内陸部と低かった都市部に限定し、食生活におけるすしの位置づけを、年齢層の差として把握することを目的とした。調査地域に10年以上在住する15~40歳、41~64歳、65歳以上の女性を対象にアンケート調査を行い、分析した。<BR><B>【方法】</B><BR> アンケートは既報に準じ、自己記入式の用紙を各地域で配布し、その場で回収をした。調査時期は平成18年6月~10月、調査対象は都市部・内陸部に10年以上在住する15~40歳 (91名・41名)、41~64歳 (79名・164名)、65歳以上 (37名・71名)と、3セグメントの年齢区分を行った。分析項目はすしの嗜好・印象、食生活におけるすしの利用とし、各セグメントの比較を行った。<BR><B>【結果】</B><BR> すしは年齢に関係なく好まれていることが確認され、年齢が高くなるに従い、すしという料理へのごちそう感が強くなる傾向を示した。家で作るすしは、地域に関係なく、年齢が上がるに従い、手間のかかるすしが多く回答され、年齢が低くなるに従い、手軽に作れる形態のすしが多くなった。手間のかかるすしとしては都市部で散らしずし、内陸部では太巻きずしが挙がり、地域差もみられた。すしの作り方は年齢に関係なく、母親からの伝承が多かった。すしを購入する場所は、都市部では、年齢が上がるに従い、すし専門店とデパートの食品売り場が多く回答され、内陸部では、年齢に関係なく、すし専門店とスーパーマーケットの回答が多く、地域・年齢による違いがみられた。<BR>1)日本家政学会第59回大会研究発表要旨集 P.156(2007)
著者
高橋 智子 齋藤 あゆみ 川野 亜紀 朝賀 一美 和田 佳子 大越 ひろ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.347-354, 2002-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
7

本研究では, 4段階の濃度の異なる重曹溶液 (0mol/l濃度として蒸留水, 0.1mol/l, 0.2mol/l, 0.4mol/l) に浸漬することにより, 軟化処理を施した食肉の硬さと食べ易さの関係について検討を行った.(1) 牛肉, 豚肉ともに, 浸漬する重曹溶液濃度が高くなるに従い, 生肉に対する試料肉の重量減少率が小さくなった.このことより, 食肉を浸漬する重曹溶液濃度が高くなるに従い, 水和が増し保水性が増加すると推測される.また, 重曹濃度が高くなるに従い, 牛肉, 豚肉ともに加熱処理後の肉色が暗くなり, ことに, 牛肉において, その傾向が顕著であった.(2) 肉を浸漬する重曹濃度が高くなるに従い, 軟らかくなり, ことに0.2mol/lおよび0.4mol/l濃度の重曹溶液に浸漬した試料肉が0 mol/l 試料肉すなわち蒸留水浸漬肉に比べ, 有意に軟らかいことが認められた.(3) 重曹溶液濃度が高く, 見かけの硬さが軟らかい試料肉は牛肉および豚肉ともに, 咀嚼時に軟らかく, 咀嚼後に形成された肉食塊は飲み込み易く, また口中の残留物も少ないことが認められ, 食べ易い肉であることが示唆された.(4) 試料肉の見かけの硬さは圧縮速度が遅くなるに従い, 硬くなる傾向を示した.このことより, 咀嚼速度が遅くなる傾向にある中高齢者群や義歯装着者群は低年齢群に比べ, 肉を咀嚼する場合, より多くの力を要することが推測される.このことからも, 軟らかく, 噛み切り易く, 咀嚼し易い肉の開発が重要であるといえる.本研究は基礎的研究であるため高齢者や義歯装着者をパネリストとして官能評価を行っていない.しかし, 高齢者や義歯装着者にとっても咀嚼時に軟らかく, 食べ易い肉は, 重曹などにより軟らかく処理した肉であることが推測され, 肉の軟化操作の重要性が認められた.
著者
高橋 智子 川野 亜紀 大越 ひろ 中川 令恵 道脇 幸博 飛田 昌男 長門石 亮 別府 茂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.223, 2005

<b>目的</b> ユニバーサルデザインフード区分の「容易にかめる(かたいものや大きいものはやや食べづらい人を対象)」に分類されるレトルト市販介護食品について、咀嚼運動の特徴をあらわすことができる物性を検討した。<br><b>方法</b> レトルト市販介護食品17品目に含まれる肉、魚、豆腐、芋、根菜類等の調理品32種類のテクスチャー特性、および破断特性を測定した。ことに硬さについては、圧縮速度を変えて測定を行い、圧縮速度依存性を検討した。併せて、同程度の硬さではあるが硬さの圧縮速度依存性が異なる4種類の材料(太刀魚、揚げ豆腐、里芋、ごぼう)について、2次元6自由度顎運動測定器により下顎運動の測定を行った。21_から_25歳までの健常な女性5名の被験者が、同一試料について4回の咀嚼を行った。咀嚼時における下顎運動の垂直成分を示すパターンより、第一咀嚼の波形から最大開口量、最大閉口速度、閉口相時間、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間、平均閉口速度、および嚥下開始迄の咀嚼回数、咀嚼時間を求めた。<br><b>結果</b> 線維の多いごぼうの硬さは圧縮速度が遅い方が硬いことが認められ、他の3種類の試料とは異なる圧縮速度依存性を示した。他の3種類の試料よりも、一口量が大きい揚げ豆腐の最大開口量、嚥下開始迄の咀嚼回数および咀嚼時間は有意に長いものとなった。また、圧縮速度依存性の異なるごぼうは他の3種類の試料に比べ、最大閉口速度に有意差は認められなかったが、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間は有意に遅くなり、また平均閉口速度も有意に遅いことが認められた。