- 著者
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髙橋 伸幸
水野 一晴
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2015, 2015
<u>1.</u><u>はじめに</u> <br>2012年からボリビアアンデスのレアル山脈に位置するチャルキニ峰周辺において周氷河現象の観察、気温・地温測定、土壌水分測定を行い、低緯度高山帯における周氷河環境の一端を明らかにしてきた。しかし、現地調査は8月~9月(冬季、乾季)に限られていたため、それ以外の時期については気温・地温等の観測結果から積雪状況等を推定するのみであった。そこで、2013年9月に同峰西カール内にインターバルカメラを設置し、ほぼ通年(2013年9月~2014年8月)にわたるチャルキニ峰西カール内の様子を画像で記録した。その結果、周氷河環境に関するより実証的な知見を得ることができた。なお、写真撮影は、毎日正午頃に一度行い、その時点での西カール内の様子(とくに積雪状況)と天気(画像内の空域の状況)を記録した。<br><u>2.</u><u>調査地<br></u> 調査地は、ボリビアの首都ラパスの北方約25kmに位置するチャルキニ峰(標高5392m)の西カール内である。チャルキニ峰でも氷河の後退が認められ、西カール内ではその谷頭部のカール壁基部にわずかに氷河が残されており、谷底には完新世の氷河後退に伴って形成された複数のモレーンがみられる。<br><u>3.天気</u> <br> 画像に含まれる空域の状態から、天気を晴天(空域に青空が見られる状態)とそれ以外の天気(空域が100%雲に覆われている状態:曇り、霧、雨、雪)に区別した。観測期間中(361日間)の晴天の頻度は166回(46%)であった。とくに2014年6月と7月には、それぞれ28回と27回記録されたが、2013年12月~2014年2月には、それぞれ4回、1回、5回のみであり、乾季と雨季との天気状況の違いが顕著であった。<br><u>4.</u><u>降雪・積雪と地温<br></u> 画像から判断する限り、年間を通して断続的に降雪が認められる。ただし殆どの場合、降雪の継続時間は、一日以内あるいは数時間程度と判断される。積雪状態になることは少なく、複数日にわたって積雪に覆われたのは、2014年5月下旬や7月下旬など冬季の数回程度であった。M2観測点における表層地温は、冬季を中心に年間約150回に及んだ。また、積雪が複数日に及んだ期間のみ、日変化が小さくなった。<br><u>5.</u><u>周氷河環境</u> <br> 髙橋・水野(2014)で示した通り本調査地域においては気温の凍結融解日数が300日を超え、土壌表層部の凍結融解頻度も244回に及ぶ地点があった。しかし、その一方で周氷河地形の発達は貧弱である。その原因として、とくに土壌の凍結融解が頻出する時期(冬季)が乾季と重なり、地表面付近の水分量が少なく、周氷河地形形成が効率的に行われないと考えられていたが、今回のカメラ画像でこのことがより明らかになった。また、顕著な積雪をもたらす降雪頻度が少なく、雪が地温変化に与える影響は小さい。また、積雪状態もきわめて一時的であることから、水分供給源としての役割も小さい。<br> 本研究は、平成26年度科学研究費補助金基盤研究(A)「地球温暖化による熱帯高山の氷河縮小が生態系や地域住民に及ぼす影響の解明」(研究代表者:水野一晴)による研究成果の一部である。