- 著者
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水野 一晴
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.3, pp.127-153, 1990-03-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 28
- 被引用文献数
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カール内の植物群落は,地形,微気象(消雪時期,受光量,風など),地表面構成物質の性状と安定性など多くの環境要因の相互作用を受けて成立している.群落の空間的分布に対し,地形はこれらの要因の中でもっとも主導的な役割りを果たしている.地形と植生の間には次のような関係がある.1)カール内では,多くの地形がある程度定まった位置に形成されている.このため,カール内では地形の形態(凹凸)とその地形が一般に形成される位置(斜面方向)によって,消雪時期が特定化され,消雪時期の差が植物の生育期間や嫌雪性などの要因を通して群落の分布に影響を及ぼす.したがって,地形によって分布する群落が限られる.2)ただし,崖錐のように,形成される場所が不定の地形の場合,その地形の斜面の向きや場所によって風の強さや受光量に差が生じ,その結果,消雪時期,ひいては植生が多様になる.3)地形が消雪時期-植生に及ぼす影響については,(a)その形態(凹凸)がとくに重要な場合と,(b)その地形の占める位置(斜面方向)がとくに重要な場合があるが,(a)の場合は凹型・凸型斜面,(b)の場合は平滑斜面であるのが一般的である.4)地形は地表面構成物質の分布と性状に影響を及ぼし,この違いが土壌水分や地表の安定度などの要因を通して,群落の分布に影響を及ぼす.