著者
竹内 裕希子 廣内 大助 西村 雄一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>はじめに</u></b><b><u></u></b> 東日本大震災の「釜石の奇跡」が例に挙げられるように,防災教育を実施する重要性とその効果が認識されている。しかし,防災教育の実施は未だ手探りである場合が多く,体系化したプログラムが提供されていないため,学校防災では現場教員の意識・知識に頼らざるを得ない状況であり,実施内容や頻度は学校において違いが生じている。 本報告では,愛媛県西条市において2006年度から取り組まれ続けてきた防災に関する「12歳教育」の現状と課題を考察する。ヒアリング調査・アンケート調査から「12歳教育」の効果と継続性の要素を整理し,地理的要素である空間認識と地域特性の理解を取り入れた総合的防災教育プログラムである「新12歳教育」の提案を行うことを目的としている。 <b>2.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>愛媛県西条市</u></b><b><u></u></b> 愛媛県西条市は瀬戸内海・豊後水道に面し,背後に石鎚山を最高峰とする四国山地に囲まれた愛媛県の東部に位置する。2004年に来襲した台風21号・23号により市内の河川が氾濫し,荒廃した山地からの流木により大きな被害が発生した。この災害を教訓として西条市は,大人に近い体力・判断能力が備わってくる12歳という年齢に着目し,防災教育や福祉や環境に関する活動などを行うことによって社会性を育て,子供たちが災害時には家庭や地域で大きな働きをなせるような力を身につけていくことを目的として2006年度から「12歳教育」に取り組んでいる。 「12歳教育」は,西条市内の小学校6年生児童を対象に総合学習の時間を用いて実施されている。各学校は4月に1年間の防災教育課題を決定し,夏休みに代表児童が西条市が実施する「防災キャンプ」に参加し,防災に関して学ぶ。その後各学校で防災教育活動を行い,2月に西条市内の全6年生が集まり「こども防災サミット」と題した発表会を行う。 <b>3.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>調査概要</u></b><b><u></u></b> 西条市教育委員会へのヒアリング調査並びに,西条市内に立地する小学校25校・中学校10校の校長・教頭にアンケート調査を実施した。ヒアリング調査は2013年12月,2014年5月に実施し,アンケート調査は2014年7月に実施した。アンケート調査は,①2006年度から実施されている12歳教育の取り組み内容,②12歳教育の防災教育効果,③総合学習の時間以外の各教科科目内での防災教育の取り扱い状況,④学校管理上の防災の課題の4つの大項目で設計した。 <b>4.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>12</u></b><b><u>歳教育の防災教育効果</u></b><b><u></u></b> 12歳教育の防災教育効果を西条市が掲げる教育理念23項目ごとに4件法で回答を求めた。 全ての学校で23. 「防災教育の充実・発展」の理念向上に12歳教育が影響を与えていると回答した。また,11.「西条市の特色ある教育」として捉えられており,17.「ふるさとを愛す態度を養う」21.「コミュニケーション能力の育成」に影響を与えていると回答した。「12歳教育」では,地域住民に話を聞き地図を作成する「防災タウンウオッチング」や学習成果を地域に広める取り組みを行っている学校が多く,それらの地域学習を通じた効果であることが推測される。

言及状況

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