- 著者
-
竹内 裕希子
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2014, 2014
<b>1. </b><b><u>はじめに</u></b><b><u></u></b> 公立小中学校は,児童・生徒の教育の場として子供達の命を守るだけでなく,地域において重要な公共施設として存在し,災害時には避難場所等の役割を果たし,災害が発生した場合には,地域住民の生活の場となる。そのため,学校施設の安全性は防災対策を行う上で重要な課題であり,強い建物としての学校だけでなく,安全性を確保された立地条件において建設を進めることが重要である。 東日本大震災では,6,244の公立学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校,文部科学省調べ2011)が被害を受け,そのうち202の学校が「被害状況Ⅰ」に分類されている。この「被害状況Ⅰ」は,建物の被害が大きく,建替え又は大規模な復旧工事が必要とされるものである。建替えを必要とする被害は,学校施設の立地に大きく影響を受けている。 本報告では,岩手県釜石市南部に位置する唐丹地区住民を対象とした学校施設に関するアンケート調査結果から,地区内に立地する学校施設に対する地域住民の要望とその背景に存在する地形条件を考察する。 <b>2. </b><b><u>岩手県釜石市唐丹地区</u></b><b><u></u></b> 岩手県釜石市唐丹地区は唐丹湾に面しており,東日本大震災では15haが津波により浸水した。この津波により唐丹湾を有する唐丹地区では32名の死者・行方不明者,343戸の住宅被害が発生した。 唐丹地区には,唐丹小学校ならびに唐丹中学校が立地している。唐丹小学校は明治9年(1873年)の開校当時は,現在の唐丹中学校の位置に立地していた。その後の児童増加と中学校開設にともない,昭和22年に図1中の唐丹小学校跡へ移転した。東日本大震災では鉄筋校舎3階の天井まで浸水し,校舎は使用不能となった。震災後は釜石市内の平田小学校に間借りをしていたが,2012年に仮設校舎が現在の唐丹中学校敷地内に建設されたことに伴い,現在は唐丹中学校内に併設されている。唐丹中学校は,津波被害は受けなかったが,地震動により校舎が破損被害を受けた。 <b>3. </b><b><u>アンケート調査概要</u></b><b><u></u></b> 岩手県釜石市唐丹町住民を対象として,2011年10月8日~10月24日に実施した。対象数(配布数)は746世帯で,回収数(率)は308世帯(41.2%)であった。配布方法は,地区内居住者は自治会を通じて各戸へ配布し,震災による地区外居住者は郵送した。回収は全て郵便で行った。 <b>4. </b><b><u>学校施設への要望と地形条件</u></b><b><u></u></b> 回答者の50%が,学校施設から高台(国道45号線)へ直結する道路の設置を要望した。これは,東日本大震災時に地域住民が避難をした国道45号線と唐丹中学校の高低差が31.8m存在していること,国道45号線と学校をつなぐ現在の道路は東日本大震災時の浸水ライン上に位置していることが理由として考えられる。平常時の学校運営と学校用地として確保できる敷地面積を考慮した場合の立地場所と,災害時を考慮した場合の立地要因・地形要因を検討する必要がある。