- 著者
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本間 基寛
- 出版者
- 水文・水資源学会
- 雑誌
- 水文・水資源学会研究発表会要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.28, 2015
洪水からの避難等の防災対応の基本資料として洪水ハザードマップ(浸水予測図)があるが,従来型の浸水予測図では想定外力のシナリオが限定されているケースが多い.また,一つの地域において内水氾濫と外水氾濫の危険性がある場合,それぞれで浸水予測図が作成されるケースが多いが,浸水予測で想定されている降水量と実際の降水量を一目で比較する方法がなく,現在進行中の大雨が浸水予測図で示された被害になり得るのか,あるいはそれを上回るのかを判断する材料がないのが現状である.本研究では,淀川水系桂川流域の亀岡市街地周辺をケーススタディの対象地域とし,複数の降雨シナリオにもとづいた浸水予測図を作成する.そして,実際の大雨時に得られる降水量情報と連動させ,一般市民が降水量情報から容易に浸水状況が想起できるよう浸水予測図の開発を試みる. <br> 降雨の時空間スケールと降雨強度の特性を考慮し,降雨量(強度),降雨継続時間,降雨面積の様々なパターンを組み合わせた降水シナリオを作成した.1988年以降のレーダアメダス解析雨量データを使用したDepth-Area- Duration(DAD)解析を行い,降雨面積別,降雨継続時間別の確率降雨強度を推定し,降雨波形を作成した.設定した各降雨シナリオについて,浸水害に関連する防災気象情報(大雨・洪水警報,記録的短時間大雨情報,大雨特別警報)の基準や累積降水量の観測史上1位の記録雨量にもとづいてカテゴリー化を行った.浸水予測計算では,RRIモデルでは,山地流出・河道追跡と氾濫原解析を一体的に解析することができる降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)を使用した.<br> 防災気象情報別に浸水予測結果を整理したところ,桂川の保津峡狭窄部より上流側では流域全体での長時間降雨(大雨警報相当,特別大雨警報相当)で浸水深が大きくなっている一方で,市街地の一部では比較的狭い範囲での短時間強雨(記録的短時間大雨情報相当)の方で浸水深が大きくなっているところもあった.このように,特性が異なる降雨シナリオのそれぞれで考え得る最大浸水深状況を把握することが可能な「防災気象情報対応型浸水予測図」を作成することで,地方自治体での避難勧告・指示の発表や地域住民の防災対応行動の判断を効果的に支援することが可能な浸水予測図になることが期待される.