著者
牛山 素行 本間 基寛 横幕 早季 杉村 晃一
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.81-102, 2021 (Released:2021-11-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

筆頭著者らは近年の日本の風水害による死者・行方不明者(以下「犠牲者」)に関するデータ ベースを構築しており,これまでに1999~2018年の1259人について分類している(以下「1999- 2018」)。本報告では,2019年台風19号(令和元年東日本台風)による犠牲者(以下「台風19号)と 1999-2018の特徴を比較することを目的とする。台風19号では,東日本一帯で犠牲者88人(関連 死を除く)が生じた。台風19号による犠牲者の特徴としては以下が挙げられる。1 )犠牲者の 72%は洪水など水関連の犠牲者だった。水関連犠牲者の比率は,1999年以降の主な風水害事例 中では最も高くなった。2 )犠牲者の58%は屋外で生じ,その54%は自動車で移動中の遭難だっ た。この比率も1999年以降の主な風水害事例中では最も高い。3 )水関連犠牲者の66 %は浸水 想定区域付近で発生した。これは,1999-2018に比べ高い比率だった。水関連犠牲者の93%は低 地で発生し,これは1999-2018の結果と整合的だった。犠牲者軽減にはハザードマップ的情報が 重要であることがあらためて示された。
著者
加藤 史訓 諏訪 義雄 鳩貝 聡 本間 基寛 内田 良始
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_326-I_330, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
4

We proposed a method to estimate tsunami inundation area according to tsunami height predicted by Japan Meteorological Agency. Fault models that corresponded to the predicted tsunami height for the southern part of the Sendai plain were extracted from 3,404 combinations of fault model parameters for both near-field tsunamis and far-field tsunamis. Tsunami inundation area was estimated by numerical simulations with the extracted fault models considering ground subsidence caused by the earthquakes. Area and depth of tsunami inundation can be estimated at the time of tsunami warnings by preparing a database system on the largest inundation areas of each tsunami height range based on our method.
著者
本間 基寛
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

洪水からの避難等の防災対応の基本資料として洪水ハザードマップ(浸水予測図)があるが,従来型の浸水予測図では想定外力のシナリオが限定されているケースが多い.また,一つの地域において内水氾濫と外水氾濫の危険性がある場合,それぞれで浸水予測図が作成されるケースが多いが,浸水予測で想定されている降水量と実際の降水量を一目で比較する方法がなく,現在進行中の大雨が浸水予測図で示された被害になり得るのか,あるいはそれを上回るのかを判断する材料がないのが現状である.本研究では,淀川水系桂川流域の亀岡市街地周辺をケーススタディの対象地域とし,複数の降雨シナリオにもとづいた浸水予測図を作成する.そして,実際の大雨時に得られる降水量情報と連動させ,一般市民が降水量情報から容易に浸水状況が想起できるよう浸水予測図の開発を試みる. <br> 降雨の時空間スケールと降雨強度の特性を考慮し,降雨量(強度),降雨継続時間,降雨面積の様々なパターンを組み合わせた降水シナリオを作成した.1988年以降のレーダアメダス解析雨量データを使用したDepth-Area- Duration(DAD)解析を行い,降雨面積別,降雨継続時間別の確率降雨強度を推定し,降雨波形を作成した.設定した各降雨シナリオについて,浸水害に関連する防災気象情報(大雨・洪水警報,記録的短時間大雨情報,大雨特別警報)の基準や累積降水量の観測史上1位の記録雨量にもとづいてカテゴリー化を行った.浸水予測計算では,RRIモデルでは,山地流出・河道追跡と氾濫原解析を一体的に解析することができる降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)を使用した.<br> 防災気象情報別に浸水予測結果を整理したところ,桂川の保津峡狭窄部より上流側では流域全体での長時間降雨(大雨警報相当,特別大雨警報相当)で浸水深が大きくなっている一方で,市街地の一部では比較的狭い範囲での短時間強雨(記録的短時間大雨情報相当)の方で浸水深が大きくなっているところもあった.このように,特性が異なる降雨シナリオのそれぞれで考え得る最大浸水深状況を把握することが可能な「防災気象情報対応型浸水予測図」を作成することで,地方自治体での避難勧告・指示の発表や地域住民の防災対応行動の判断を効果的に支援することが可能な浸水予測図になることが期待される.
著者
山口 弘誠 井上 実 本間 基寛
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

雨の音色を工学的に計測し、雨の音色と従来の降雨情報の関係性を明らかにした。1)雨の音色、および従来の降雨情報の観測: 京都大学防災研究所屋上に機器を設置して、雨滴一粒ごとの粒径と落下速度、風速、降雨強度をそれぞれ計測した。さらに、運転する車の中で集音器を設置し、計測を行い、周囲の環境が雨音とどのように関係するかに関しても解析を進めた。2)雨の音色と従来の降雨情報との関係性の解明: 上記の観測データを用いて、従来の降雨情報の関係性の何が周波数に影響するかについて、基礎解析を行った。その結果、雨滴の粒径の代表粒径(中心値)と雨音の強度に強い相関が見られた。
著者
本間 基寛 片田 敏孝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1321-1325, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

This study reviewed problems of tsunami hazard map from the view point of residents and municipalities, and pointed out an importance of the linkage between a tsunami forecast and a tsunami hazard map. And, the method of making tsunami hazard map linked the JMA tsunami quantitative information system was proposed. About 4000 tsunami propagation tsunami were calculated for Owase-city, and the fault parameters were categorized into 7 ranks of tsunami forecast height, then the maximum inundation area at each categories were evaluated by the run-up calculations. This hazard map could help municipalities to rapidly issue an evacuation warning, to reduce a failure of evacuation warning, and to extend the warning area in case of large tsunami.
著者
本間 基寛 牛山 素行
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.40, no.S08, pp.157-174, 2021 (Released:2022-03-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

台風等の豪雨災害において,予想される雨量の規模から災害対応の必要性を呼び掛けるにあたり,降雨規模と想定される人的被害規模の関係性を明らかにしておくことは重要である。本研究では,平成30年7 月豪雨,令和元年台風19号,令和2 年7 月豪雨における犠牲者の位置データと1 km メッシュでの降雨観測データを分析することにより,降雨に関する各種指標から「推計犠牲者発生数」を算出する可能性について検討を行った。3 , 6 ,12,24,48,72時間の降雨継続時間雨量や土壌雨量指数といった7 つの降雨指標について,犠牲者発生数との関係性を分析した結果,降雨指標そのものではなく過去の観測最大値との比である「既往最大比」が犠牲者発生との関係性が高いことがわかった。豪雨事例によって災害犠牲者発生との対応がよい降雨指標が異なることから, 7 指標の既往最大比最大値を算出することで,豪雨災害における犠牲者の発生数を大局的に推計できる可能性があることを示した。一方で,球磨川での氾濫のような極めて局所的な豪雨による大規模洪水での犠牲者に関しては,犠牲者発生地点の降雨指標だけではなく,上流域も考慮した雨量指標による評価関数へと改良する必要がある。