- 著者
-
城下 貴司
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2017
<p>【目的】</p><p>ハイヒール歩行は骨盤後傾,膝関節屈曲の増加から重心後方化する<i>(Opila-Correia 1990)</i>,膝伸展モーメント増加,重心後方化しレバーアームが延長(<i>Esenyel 2003)</i>などの報告が散見される。</p><p></p><p>しかしながら,踵が高いにもかかわらず,重心が前方化しないことに疑問点がある。先行研究は実際の重心移動を算出していない。</p><p></p><p>本研究目的はハイヒール歩行の矢状面上の重心移動を中心に動作戦略を明確にすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p>計測機器は三次元動作解析装置Vicon MX,7台の赤外線カメラ,3枚の床反力計とし,全身に35個のマーカを貼付しFull plug-inモデルで計測した。</p><p></p><p>対象は,ハイヒール歩行をしても問題なく過去6ヶ月間,傷害により医療機関にかかっていない健常成人女性14名,平均年齢20.8±0.7歳,平均身長160.0.±4.0cm,平均体重53.9±5.2kgとし,週3回以上ハイヒール使用群をCustom群7名,それ以外をNo Custom群7名とした。踵高6cmの靴を使用した。</p><p></p><p>計測は自由歩行とハイヒール歩行を各々5回行い,1歩行周期を100%に正規化した。重心移動は膝関節軸と重心線との矢状面上の距離で判断した。重心線に対して関節軸が前方を+とした。</p><p></p><p>パラメーターは歩行周期12%,31%,50%における矢状面上の足および膝関節の角度とモーメント,膝関節軸と重心線との矢状面上の距離とした。</p><p></p><p>統計処理はCustom群とNo Custom群の比較はMann-Whitney検定で,裸足とハイヒール歩行の比較はWilcoxonの符号順位検定を使用した。各々の有意水準は5%未満とし,解析ソフトはIBM SPSS Statistics 21を使用した。</p><p></p><p>【結果】</p><p>Custom群とNo Custom群に分類したが,いかなるパラメーターも統計的な差は示されなかった。</p><p></p><p>膝関節角度は歩行周期12%,31%でハイヒール歩行が裸足歩行と比較して有意に屈曲位だったが50%では有意に伸展位であった。</p><p></p><p>足関節底屈モーメントは有意に31%で低値を,膝関節伸展モーメントは31%で有意に高値を示したが50%では有意差を示さなかった。</p><p></p><p>膝関節軸と重心線との距離は12%,30%で有意に重心後方化を示した,一方で50%では有意に前方化した。以下ハイヒール,裸足の順:12%*(134.3m,104.2m),30%*(-38.3m,-67.5m),50%*(-178.7m,-174.3m)</p><p></p><p>【結論】</p><p>ハイヒール歩行の膝関節屈曲角度が歩行周期12%,31%で増加,伸展モーメントが歩行周期31%で増加することは先行研究と類似した。一方で,膝関節角度が50%でより伸展位,膝伸展モーメントが裸足歩行とほぼ同値,膝関節軸からみた重心移動が50%では有意に前方化することは報告されていない。</p><p></p><p>以上から,立脚相前半は膝関節屈曲し膝伸展モーメント増加,重心後方化するが,立脚相後半では膝関節伸展し膝伸展モーメント減少,重心は前方化する対称的な現象となった。</p><p></p><p>ハイヒール歩行分析は少なくとも立脚前半の現象か,それとも立脚後半の現象かを明確にして臨床的に解釈する必要があると我々は考える。</p>