著者
れいのるず秋葉 かつえ
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.124-143, 2017

<p>一人称詞は、日本語人がかかえたどうしようもない問題である。どうして日本語にはこうも数多い自称詞があるのか。どうして主要な男性自称詞が漢語由来の「僕」なのか。過去においてあきれるほど多くの自称詞が大陸言語から借用された。欧米の言語学では、人称代名詞はもっとも安定した言語カテゴリーで、めったに他言語から借用されないものだ、と理解されている。では、日本語はなぜ常に不安定なままに続いてきたのか。説明されねばならない。この研究は、歌舞伎脚本の自称詞を歴史社会言語学的に分析し、次のような仮説をたてる。(i)原日本語は、一・二人称を区別しない「前人称」言語であった。(ii)「私」のような疑いもなく一人称詞であるものは大陸言語との接触以降イノヴェートされた。(iii)江戸前期、大量の漢語自称詞・対称詞が借用された。(iv)近代化のなかで多くの漢語自称詞が衰退したが、一人称詞は今も複数であり、不安定である。</p>

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cf. れいのるず・秋葉かつえ(ハワイ大学名誉教授) 「前人称」の発見 ――歌舞伎脚本自称詞の内的再構築から―― https://t.co/DmCb7IOPGo

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