- 著者
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村中 淑子
- 出版者
- 社会言語科学会
- 雑誌
- 社会言語科学 (ISSN:13443909)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.1, pp.176-183, 2017
<p>「国会会議録」(予算委員会)における伝統的な関西方言の出現の様相をみることにより,なぜ関西方言が公的場面で使われうるのかについて考察した.本稿で調べたのは「~まへん」「~まっせ」のようないわゆる「コテコテ」の関西方言のみであり,国会予算委員会における出現数は約60年の間に約100件とごく少数であった.しかし,それらは国会において,自分の意見を主張して強く相手に迫ったり,ワンポイント的にピシャリと批判したりする文脈で出現すること,当初はごくまれにしか使われていなかったが,1970年代から1980年代にかけて出現数が増え始めたこと,関西方言のノンネイティブであっても聞き覚えて使った話者もいそうであること,などの傾向をみてとることができた.少数事例の観察からではあるが,いわゆる「コテコテ」の関西方言は,ある効果を持つフォーマルスタイルの日本語として公的場面において認知されつつあり,その有用さが,公的場面における関西方言使用の広がりに結びついているという可能性がある,と指摘した.</p>