著者
堀口 康太 大川 一郎
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.94-106, 2016

地域包括ケアの時代においては,身体機能の違いにかかわらず自律性を発揮することがwell-beingにとって重要になり,身体機能の異なる高齢者の自律性を統合的に検討する視点が必要になってくると考えられる。本論文では,身体機能の異なる高齢者の自律性を統合的に捉える視点を提案することを目的として,老年期を対象とした自律性研究における現状と課題が整理された。要支援・要介護高齢者を対象とした研究においては,高齢者ケアに即した関係性的側面,価値観や生活史との合致を考慮した自律性を実証的に検討することが課題であり,目標志向行動の中で自律性を評価する必要性があると整理された。自立高齢者を対象とした研究においては,他者・社会志向的側面など高齢者の置かれた社会的背景や発達課題を考慮した研究を蓄積していくことが主な課題として抽出された。これらの研究における課題を克服する統合的視点として,活動への自律的動機づけに着目する視点が提案され,その利点,意義および問題点が整理された。

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