- 著者
-
田中 直人
岩田 三千子
- 出版者
- 一般財団法人 住総研
- 雑誌
- 住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, pp.177-186, 1998
長寿社会の到来とともに,福祉のまちづくりとして,住宅をとりまく地域環境のあり方が問われ,阪神大震災では住民の構造的な課題とともに,地域でのコミュニティの重要性が認識された。本研究では,被災地である神戸市において,小学校区を計画単位として地域福祉の観点から,これまで設けられた「地域福祉センター」を中心に,既存のコミュニティ活動団体の連合体としての「ふれあいのまちづくり協議会」の活動状況や関係者の意識を調査し,(1)地域とのかかわりとしての付き合いの状況は,どの地区も比較的密であるが,震災による地域のまとまり具合の変化は非被災地区の方が大きく意識されている。(2)ふれあいのまちづくり協議会の活動については,よく認知されているが実際の活動への参加は条件しだいであるという住民が多い。(3)活動拠点としての地域福祉センターの規模については,おおむね満足しているがやや大きい規模を望む傾向がある。設備的には新しい施設機能としての風呂・サウナや花壇・菜園・車いす用トイレなどのほか全般的に手すり・スロープ等のバリアフリーヘの配慮が求められている。(4)地域の活動拠点としての地域福祉センターは,よく利用されているが施設利用のきっかけづくりや交通等の利便性の向上,地域内の他の施設の有効利用が今後さらに必要である。(5)事例調査からは,集会施設だけでなく既存の福祉施設や他の施設を行政による計画だけでなく,住民の自発的活動を支援するようなプログラムづくりが有効である。等が明らかになった。今回の調査では,農村地区やニュータウン等の新興住宅地区での差異が明らかになったが,今後は既成市街地における地域特性と地域コミュニティの関連について,さらに詳細な検計が必要と思われる。今後は本研究を,地域環境を形成する社会資源の評価とそれらを有機的に地域福祉につなげる方法論の構築へむけて,さらに発展させたいと考えている。