- 著者
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高橋 豪仁
- 出版者
- 日本スポーツ社会学会
- 雑誌
- スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.2, pp.33-48, 2011
内閣府の「『新しい公共』宣言」によると、「新しい公共」とは、支え合いと活気のある社会をつくるための当事者たちの協働の場であり、「国民、市民団体や地域組織」、「企業やその他の事業体」、「政府」などが一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し、協働するのである。「新しい公共」はコミュニティ・セクター、公的セクター、私的セクターの連携によって成り立つ。文部科学省で策定された「スポーツ立国戦略」において、戦略の1つに「社会全体でスポーツを支える基盤の整備」があげられており、地域スポーツクラブが「新しい公共」を担うコミュニティの拠点として発展していくことが期待されているとある。本稿では、スポーツの公共的セクターは、何を根拠にして他のセクターからの支援やパートナーシップ構築の同意を得るのかを、「スケボー・コート設置を求める会」の事例を通して検討する。10代の少年たちのスポーツ享受スタイルと、彼らがスケートボード・コートの設置を求めて千人以上の署名を集めて県と町に提出し、町と交渉した様子を記述した。そして、加藤の公共性の論理とその理論から菊が演繹したスポーツの公共性についての考えを参考にして考察を加えた。<br> 結果的には、少年たちが集団をアソシエーションとして組織化することを嫌がったこともあり町との交渉は頓挫したのであるが、ここで注目すべきは、彼らをスケートボード・コートの設置運動へと突き動かしたものは、スケボーをしたいというスポーツ欲求であったということである。これまで地域スポーツの振興は、スポーツ活動が公共の福祉に寄与するということで正当化された。しかしながら、この事例においては、加藤が言うところの私利私欲に相当するスポーツ欲求によってスポーツの公共性が構築されようとしたのである。スポーツ欲求が無条件に承認されることが、スポーツの公共性を構築する基となるのであろう。