- 著者
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西島 健
高山 義浩
小林 智子
小澤 幸子
岡田 邦彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, pp.67, 2007
【緒言】第2報では、2002年より2006年までの5年間に佐久総合病院を受診した新規HIV感染者について、AIDS発症者数、国籍、医療保険の有無、初診時受診契機、感染経路、転帰により分析する。そこから対策すべき課題を検討し、とくに佐久総合病院が実施もしくは検討している外国人感染者を対象としたHIV対策を紹介する。<BR>【結果】2002年1月より2006年12月までに39人の新規HIV感染者の受診があり、24人(61.5%)のAIDS発症者の受診があった。その国籍の内訳は、日本人27人(69.2%)、タイ人12人(30.8%)であった。また、タイ人感染者のうち医療保険のない者が6人(15%)を占めていた。これら39人の初診時契機は、AIDS関連疾患の発症 61.5%、その他の疾患による受診 17.9%、パートナー陽性のために検査 12.8%、妊娠時検査 7.7%であり、自主的に検査を受けて陽性が判明したケースは1例もなかった。感染経路は、84.6%が異性間性的接触であり、大多数を占めた。以下、同性間性的接触による感染 7.7%、薬物使用 2.6%、不詳 5.1%と続いた。また、その転帰は当院通院中 71.8%、死亡 10.3%、帰国支援 7.7%、行方不明 5.1%、他院に紹介 5.1%であった。<BR>【考察】農村地域ではHIV感染の拡大が進んでおり、いわゆる「いきなりエイズ」症例が全国と比しても高く、早期発見がすすんでいない状況が継続している。その背景には、自主的に検査を受けて判明するケースが認められないことからも、一般市民への啓発活動の遅れが大きな要因と考えられる。日本人については様々な施策が展開されつつある。しかし、次いで外国人への感染拡大が確認されるものの、無資格滞在外国人であることが少なくないため、自治体行政によるアプローチが困難となっている。よって、医療機関と地域のNGO活動との連携による展開が求められている。無資格滞在外国人の感染が判明した場合に、単に帰国させる対応では単なる感染者のたらい回しにすぎず、国内でもHIV検査を受けるように促すことができない。よって、陽性判明後に彼らが医療面・社会面において安心して受診できるシステムを事前に策定しておく必要がある。<BR>【提言】この地域でエイズ治療拠点病院として活動してきた佐久総合病院は、自治体や保健所などと連携して様々なHIV対策を実施もしくは検討している。しかしながら、外国人向けの対策は途上であり、感染増加の状況からも緊急の課題と考えている。これまでも外国人向けの医療相談会を年に2回程度実施してきたが、本年度より在日タイ国領事館と協力して佐久総合病院内に移動領事館を開設。このとき併せて、佐久総合病院として医療相談会を実施する方針としている。こうして、タイ人らへの社会的・身体的問題へ包括的に対応できる体制を整え、外国人らとの信頼関係を深めてゆきたい。また、無保険の外国人においてHIV感染が判明した場合、何らかの方式による医療費助成制度を策定し、帰国支援まで安定した医療サービスを提供できるようにしたいと考えている。