- 著者
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土屋 千恵
郷道 順子
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, pp.262, 2007
〈緒言〉核家族化、少子化が進む現代社会において、父親の育児参加の必要性が論じられている。国単位での調査、報告が進む中、高度経済成長時代の親役割分業制から、父親も育児参加はしているもののまだまだ母親の負担が大きい。当院でも妊娠中、分娩、産後と父親への関わりを持っているが、母親と比べ、児の誕生と共に親としての役割を果たしていくのは難しいと感じた。そこで、妊娠後期に父親、母親となる為に、何を考え、どう行動しているのか現状を知り、私たち産科スタッフがどう関われば親を育む一助となれるのか検討したのでここに報告する。<BR>〈対象及び方法〉当院産婦人科に通う妊娠30週以降の妊婦とその夫41組(帰省分娩を除く)にアンケートを配布、回収した。分析では先行研究と研究者が育児参加に影響を及ぼすと考えた「子どもの数」、「夫自身の父親の育児協力」を因子として、質問したそれぞれの項目とχ2検定、一元配置分散分析を行った。<BR>〈結果〉本研究において育児参加に影響を及ぼすと考えた因子、子どもの数、夫自身の父親の育児協力についてのそれぞれの項目とχ<SUP>2</SUP>検定(p<0.05)を行ったが、帰宅時間以外での関係性はみられなかった。また、子どもがうまれたらどのような育児協力をしようと思っているかの項目と家族構成、夫自身の父親の育児協力、赤ちゃんの面倒をみた事があるかどうかの因子で一元配置分散分析を行ったが、こちらも関係性はみられなかった。<BR> 対象者は核家族が7割を占め、すでに子どもを有している夫婦が半数であった。子どもがおらず、赤ちゃんの面倒をみた事がある夫は約20%だった。夫自身の父親が育児に協力的だと思っていた夫は48%いた。妻の妊娠を肯定的に受け止め、胎児の成長を喜び、妊娠に関して肯定的な感情が多かったが、母親学級や助産師外来の夫の参加は2割に満たなかった。育児参加について、赤ちゃんが生まれたら「おむつ交換」「沐浴」「抱っこ、あやす」など高い割合で手伝おう、手伝いたいと思っていることがわかった。妻に夫に希望する育児行動を質問したところ、ほぼ同じ項目であった。育児行動に優先順位をつけてもらうと夫は「おむつ交換」などの直接的な育児行動が順位として高く、妻は直接的な育児行動のほかに「精神的なねぎらい」の順位が高かった。<BR>〈考察〉赤ちゃんの接触体験や自分自身の父親の育児協力、夫婦が有している子どもの数が育児参加に影響を及ぼすという結果は得られなかった。アンケートの結果から多くの夫は妊娠、胎児に関心を持ち、肯定的な感情を抱いており、育児に参加しようという気持ちも持っている。その気持ちが実際の育児行動につながるように、妊娠中から多くの夫が母親学級や助産師外来に参加できるような取り組みが必要と感じた。また、妻は夫が考えている以上に精神的なねぎらいを求めており、直接的な育児行動だけではない、共に親として子を育て、共に助け、支えあう存在としての夫を求めていると考えられる。