著者
加藤 彩 井上 容子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.269, 2006

【目的】今日の視環境計画は視覚の日変化や季節変化を考慮していない。特に、視認能力は一日を通じて一定であると仮定して取り扱っている。しかし、より良い視環境を提供するためには、視認能力の日変化への配慮が求められる。本研究では、視認性の日変化を視環境計画へ取り入れることの可否を検討するために、高齢者と若齢者の視認能力の日変化を比較検討し、その特徴ならびに作業負荷との関係を把握する。【方法】被験者は終日指定された生活パターン(視作業負荷の場合と負荷無の場合)で過ごし、生理量4項目、視認能力5項目、主観的疲労感の合計10項目の測定を行う。測定時間は前日の晩と当日の朝・昼・夕・晩とし、被験者の普段の生活パターン(起床・就寝・食事の時間等)を大きく変えないことに留意している。被験者は高齢者6名、若齢者5名である。【結果】視作業負荷の場合は、年齢層に依らず夕〜晩に最低能力を示す割合が高い。負荷無の場合は高齢者では昼以降、若齢者では朝に最低能力を示す割合が高い。また高齢者では、負荷有の場合の方が負荷無の場合よりも、生理量の変化や作業を伴う視認能力の低下が大きい。若齢者では、作業を伴う視認能力は負荷有の場合の方が低下が大きく、判断を伴う視認能力は負荷無の場合の方が低下が大きい。また年齢層や視作業負荷の有無に依らず、主観的疲労感と生理量や視認能力との相関は見られない。生理量への影響や視認能力の低下をもたらす疲労は、被験者が自覚する疲労とは必ずしも同一ではないと考えられる。特に高齢者は、若齢者よりも主観的疲労感への影響が小さい。しかし、若齢者よりも生理量や視認能力への影響が大きい場合もあることから、日変化への配慮が必要であると考えられる。

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