著者
船津 香住 西村 南美 井上 容子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.268, 2006

【目的】これまでに階段の昇降し易さに関して、明視要素と段形状の関わり、ならびに順応の変化を考慮した評価法を提案している。同法は照度一様な実験室実験と屋内階段での検証実験に基づいたものであり、「物理量→物理量評価→良否評価→昇降のし易さ」という階層構造となっている。本報では、屋外階段の実測調査と評価実験結果を基に、屋外階段への適用性を検討する。【方法】建物内外をつなぐ階段や屋外階段において、光、色、寸法、材料などの物理環境の実測調査と、被験者による階段昇降時の評価実験を行っている。評価項目は、明るさや段寸法の大小、段の見え方や段寸法の良否、昇降のし易さ、昇降時の怖さ、などである。これらの結果を基に、既提案法の屋外階段に対する予測精度を検討している。対象階段は10箇所、被験者は各5名である。【結果】検討対象とした屋外階段の照度や輝度の範囲は、これまでの屋内階段の検討範囲を大きく越えた幅広いものであり、また、屋外から建物内へのアプローチ階段の場合、段面の照度変化も大きい。従って、明るさや寸法などの物理量に対する主観評価(物理量評価)に関しては、既提案法による予測値と被験者の評価値(実験値)の整合性は低い。このため、物理量から予測した階段の見え方や寸法の良否および昇降のし易さの予測精度は低い。一方、物理量評価の実験値から、良否評価や昇降のし易さを予測した場合には、予測値と実験値の間に十分な相関が認められる。このことより、従来法の中の物理量評価の予測方法を補正することによって、実用可能な屋外階段の評価式を得ることができると考えられる。今後、多種の屋外階段の実測調査ならびに昇降評価実験に基づいて、屋外階段の評価式を求めていく。
著者
石田 享子 井上 容子 内山 寛信 倉田 純一
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.95, no.8A, pp.439-445, 2011-08-01 (Released:2011-10-19)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

This study investigates how the season and the correlated color temperature affect the impression of lighting. However, subjective evaluation inevitably has individual variation. Therefore, the purpose of this paper is to clarify how within- and between-subject variation changes. The experiment variables are the season, the illuminance of the room, and the correlated color temperature of the fluorescent lamp. The seasons are summer and winter, there are 12 levels of vertical illuminance of the room from 0.5 to 2000 lx, and the correlated color temperature of the lamps are 3000 and 6700 K. The subjects are 27 to 31 young women. They evaluate brightness, glare, comfort, and relaxation effect of the lighting. In conclusion : 1) Brightness, glare, and comfortable sensations change depending on the illuminance. The influence on the relaxation effect due to the illuminance is small, and the relation is clear for each individual. The subjects have suitable illuminance levels for relaxation. 2) All four items are influenced by the change of illuminance level in between-subject variation. The range of illuminance in which the evaluation between subjects stabilized is as follows: brightness is 500 lx or more, glare is 50 lx or less, comfort is from 20 to 50 lx, and relaxation is from 10 to 20 lx. 3) The variation between individuals is larger than the variation for each individual, though there is little difference with changes in illuminance.
著者
藤本 亜弓 井上 容子
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.41, pp.30, 2008

犯罪抑止効果に期待して青色防犯灯が普及しつつあるが、犯罪対策上重要な防犯カメラ画像への影響が懸念される。そこで本研究では、青色光が防犯カメラ画像の見えに与える影響を画像評価実験により検討する。実験では、白光と青光の下で撮影された画像をモニターに表示し、色、文字、人物の分りやすさを青年女子36名の被験者に評価させた。色度測定の結果、白光よりも青光で色度の変化が大きく、このことが色の判別の結果に反映されている。輝度測定の結果、0.3 lx標準感度の条件では青光の方が輝度対比が大きいが、その他の条件では光色による差はなく、文字の判別の結果に反映されている。人物の判別は標準・低照度の条件では青光が、高感度・高照度の条件では白光の方が評価が高い。このように青光で見やすい場合が多いのは、使用したカメラの光感度ピークが暗所視の比視感度曲線に近いものであった事に依存しており、光源の分光分布とカメラの光感度ピークによって結果は異なると考えられる。また、評価結果は再生画像の輝度、色度条件と概ね対応しているため、再生画像の物理量を予測する事ができれば見え方は推定できると考える。
著者
加藤 彩 井上 容子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.269, 2006

【目的】今日の視環境計画は視覚の日変化や季節変化を考慮していない。特に、視認能力は一日を通じて一定であると仮定して取り扱っている。しかし、より良い視環境を提供するためには、視認能力の日変化への配慮が求められる。本研究では、視認性の日変化を視環境計画へ取り入れることの可否を検討するために、高齢者と若齢者の視認能力の日変化を比較検討し、その特徴ならびに作業負荷との関係を把握する。【方法】被験者は終日指定された生活パターン(視作業負荷の場合と負荷無の場合)で過ごし、生理量4項目、視認能力5項目、主観的疲労感の合計10項目の測定を行う。測定時間は前日の晩と当日の朝・昼・夕・晩とし、被験者の普段の生活パターン(起床・就寝・食事の時間等)を大きく変えないことに留意している。被験者は高齢者6名、若齢者5名である。【結果】視作業負荷の場合は、年齢層に依らず夕〜晩に最低能力を示す割合が高い。負荷無の場合は高齢者では昼以降、若齢者では朝に最低能力を示す割合が高い。また高齢者では、負荷有の場合の方が負荷無の場合よりも、生理量の変化や作業を伴う視認能力の低下が大きい。若齢者では、作業を伴う視認能力は負荷有の場合の方が低下が大きく、判断を伴う視認能力は負荷無の場合の方が低下が大きい。また年齢層や視作業負荷の有無に依らず、主観的疲労感と生理量や視認能力との相関は見られない。生理量への影響や視認能力の低下をもたらす疲労は、被験者が自覚する疲労とは必ずしも同一ではないと考えられる。特に高齢者は、若齢者よりも主観的疲労感への影響が小さい。しかし、若齢者よりも生理量や視認能力への影響が大きい場合もあることから、日変化への配慮が必要であると考えられる。