著者
難波 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.40, 2006

目的 奈良時代から平安時代、和歌や物語など多くの文学を通し様々な色彩表現等を見ることが出来る。今までは、自然の景物を通しての「見立て」の技法や直接的に現れる色についての言及がなされてきたように考えられる。しかし、古典文学、取り分け『勅撰和歌集』といった和歌の性質上、表面的な露出だけで色表現をしていたとは考え辛い。ここでは、文学を中心に作者の心象表現だけではなく、当時の植物、染料を中心に色表現についての考察を行う。従来先学者がいわれている色の捉え方が、当時の人々が考えていた色とは違った一面もあったのではないか。そこで、文学を忠実に捉え、当時の人々の色を明らかにすることを目的とする。〈BR〉方法 文献研究を中心とする。参考文献、資料は、『万葉集』、『古今和歌集』、『後撰和歌集』、『拾遺和歌集』、『後拾遺和歌集』、『金葉和歌集』、『詞花和歌集』、『千載和歌集』、『新古今和歌集』(新編国歌大観、新日本古典文学大系に拠る)〈BR〉結果 『万葉集』中、梅を詠んだ歌は120首と多く読まれていた。それは、梅が中国原産ということもあり、当時の人々にとって舶来の憧れがあったのであろうが、その印象的な白が圧倒的に多く次に、紅梅を詠むんでいる物であった。平安初期、花と言えば梅であり、香りから花の色を歌に読むといった心象表現が多くされていた。しかし、『古今和歌集』の時になると、桜を歌った詠が34首と多くなる。また、時代が下るに従って、白、赤という単純な色だけでなく、「うすきこきのべのみどりのわかくさにあとまでみゆるゆきのむらぎえ」『新古今集』「もみぢばのいろをやどしてはてはまたさそひていづるやまがはのみづ」のように様々な植物、また自然の中からの表層に現れない色彩表現が見られ『万葉集』から『新古今和歌集』の時代までに、当時の人々の植物、染料、自然に対する変化が見られた事によることが考察できる。本研究を通し、当時の植物、自然から見る色や隠された色を明らかにした。

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