著者
深谷 笑子 武井 玲子 難波 めぐみ 佐藤 典子 遠藤 恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

目的:家庭科の最も重要な特徴は、生活に密着していることである。また、生活という概念は、住むこと、生きること、暮らすことと大きくかかわっていることであり、それは、家や家族に人間が護り護られてこそ成り立つことでもある。そこで、家の役割と家族の意義について,東日本大震災に関する調査から家庭科「家族・家庭」の学習内容を検討することを目的とする。方法:1.2012年7月本学生311名を対象にアンケート調査を実施、2.学生の震災体験記録 3.2012年8月にKGCサマーリフレッシュプログラム(教員免許状更新講習)の教員を対象にしたアンケート調査 4.県内の高等学校家庭科教員対象アンケート調査の実施 結果及び考察:1.本学生を対象にしたアンケート結果から1)震災時、どのようなことを考えたか、の自由記述で一番多かったのは、「家族・友人の安否」「自宅の心配」と、自分自身のことではなく他人、身内などの安否を心配していたことがわかった。2)震災前後の意識の変化では、家族を思う気持ちが強くなった、が7割以上であった。このことから普段家族は空気のようなものだが、困難な時ほど家族の存在が大きいことがわかった。2.本学生の震災体験記録から1)大変なときこそ家族といることが安心だと実感した。2)家族と連絡が取れなかったが、家族は家があることで、遅くなっても帰ってきた。家は家族が帰ってくるところ、家があることのありがたさに気づかされた。3)家があるとことは、家族がひとつになれることでもある。4)家に家族がいたから安心だった。5)家に一人でいたので怖かった。6)家族間に政治の話題が多くなった、など家族を守る器として、また住むということは、どこに出かけてもまた戻ってくる所で根を張っている住まいと家の役割があげられていることがわかる。3.サマーフレッシュから(児童・生徒の変化)1)小学校教諭からは、家族を大切に思う子が増えた。2)中学校教諭からは、日々の生活に感謝。防災意識が出た。3)高等学校教諭からは、子供の生活に変化が見られなかったのは、母親がずーとそばにいることができたおかげと思う。4)特別支援学校教諭からは、何かあれば家の人を思い出し、助けてくれる頼りになる人は家の人、など生徒は、日頃考えないことが、この時を境に家族や防災意識そして正常の生活に感謝する気持ちがわいたことがわかった。4.家庭科教員対象アンケート調査結果から1)緊急時は夫婦それぞれ実家を優先に行動した。2)家や家族の大切さを改めて感じた。3)家族を大切にするようになった。4)より団結力が強くなった。5)連絡が密になったなど、教員自身も実家の親を心配したリ家族を意識したり家族の存在の大きさを実感したことがわかった。体験記録(2名)から1)津波の予測で避難所へ、その後まもなく原発で避難場所を次々移動、現在も落ち着いた生活ではなく、5人がばらばらに生活している。2)地震当時頭をよぎったのは、家族、友達、生徒のこと。生活の基盤は家族。離れ離れになった家族がたくさんいることは胸が痛い。家族と共に普通の生活を送ることがいかに幸せなことなのかを感じることができた。いずれも、福島県が他と異なる東日本大震災の特徴である、地震・津波・福島原子力発電事故によって、家族がバラバラに過ごさざるを得ない不安定な状況が述べられている。 今後の課題: 高校『家庭基礎』の内容を見ると、家や家族の意義についての記載が乏しい。そこで、家や家族の存在について、住むことの本質と上記のような非日常的なときこそ強さを持つ家族についての説明、そして体験記録の掲載を期待する。
著者
難波 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.40, 2006

目的 奈良時代から平安時代、和歌や物語など多くの文学を通し様々な色彩表現等を見ることが出来る。今までは、自然の景物を通しての「見立て」の技法や直接的に現れる色についての言及がなされてきたように考えられる。しかし、古典文学、取り分け『勅撰和歌集』といった和歌の性質上、表面的な露出だけで色表現をしていたとは考え辛い。ここでは、文学を中心に作者の心象表現だけではなく、当時の植物、染料を中心に色表現についての考察を行う。従来先学者がいわれている色の捉え方が、当時の人々が考えていた色とは違った一面もあったのではないか。そこで、文学を忠実に捉え、当時の人々の色を明らかにすることを目的とする。〈BR〉方法 文献研究を中心とする。参考文献、資料は、『万葉集』、『古今和歌集』、『後撰和歌集』、『拾遺和歌集』、『後拾遺和歌集』、『金葉和歌集』、『詞花和歌集』、『千載和歌集』、『新古今和歌集』(新編国歌大観、新日本古典文学大系に拠る)〈BR〉結果 『万葉集』中、梅を詠んだ歌は120首と多く読まれていた。それは、梅が中国原産ということもあり、当時の人々にとって舶来の憧れがあったのであろうが、その印象的な白が圧倒的に多く次に、紅梅を詠むんでいる物であった。平安初期、花と言えば梅であり、香りから花の色を歌に読むといった心象表現が多くされていた。しかし、『古今和歌集』の時になると、桜を歌った詠が34首と多くなる。また、時代が下るに従って、白、赤という単純な色だけでなく、「うすきこきのべのみどりのわかくさにあとまでみゆるゆきのむらぎえ」『新古今集』「もみぢばのいろをやどしてはてはまたさそひていづるやまがはのみづ」のように様々な植物、また自然の中からの表層に現れない色彩表現が見られ『万葉集』から『新古今和歌集』の時代までに、当時の人々の植物、染料、自然に対する変化が見られた事によることが考察できる。本研究を通し、当時の植物、自然から見る色や隠された色を明らかにした。