- 著者
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藤野 淳子
北浦 かほる
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.61, pp.251, 2009
<B>研究の目的</B> 絵本には、作者が幼いころから慣れ親しんだ国の住文化が表現の根底にある。本研究では、住まいの絵本に表れた欧米の個室空間の扱われ方の特徴を捉える。<BR><B>分析の対象</B> 分析対象とした絵本は、前研究で用いた160冊に新たに収集した159冊を加えた合計319冊である。新たに収集した絵本は専門家によって書かれた絵本紹介の雑誌に掲載されていた中から、住まいについての何らかの思潮が読み取れるものを選んだ。<BR><B>結果</B> 欧米では子どもを幼いころから個室で一人で寝かせる就寝形態をとっているため、親が読み聞かせをするために、寝るときの様子を表現した絵本が多くみられる。ベッドタイムストーリーと呼ばれるもので、寝るまでの室内空間や街の様子の変化を描き、安らかな眠りを誘おうとするものが比較的古い絵本にみられる。また、寝る時間における親子の関係や就寝前の支度を通じた躾を描いたもの、ベッドに入ってから寝入るまでの時間を子どもの視点で表現したものがある。二つ目の特徴として、欧米では個室が定着しているため、個室が発想を想起する拠点として位置づけられている。日本の絵本では子どもを空想の世界に導く場所がお風呂やトイレ、おじいちゃんの家など日常の生活の中で親と離れてひとりになれる場所が多くみられる。それに対して欧米の絵本では自分の部屋からイメージの世界を広げており、親子関係の確認や物事を考える場所として扱われている。最後に、欧米の絵本には断面表現が多くみられ、部屋の機能の違いや他人の家どうしでの住まい方の違いを表現する手段にされている。個人が尊重される欧米では他人の暮らしは違うものだという考えが根本にあることがわかる。