- 著者
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北浦 かほる
- 出版者
- 一般社団法人日本建築学会
- 雑誌
- 日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
- 巻号頁・発行日
- no.275, pp.75-86, 1979-01-30
- 被引用文献数
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建築空間内におけるテクスチュアの視知覚現象については, (その1)で明らかにした。ここでは, その見えの現象を支配すると想定される主な要因, 粒子の断面形粒度面での輝度をとりあげ, 箇々の知覚現象について検討した。最終的には, これらの見えの現象の場である実空間内の視知覚に, より近似されるため, 擬似完全拡散光状態における見えのあらさを求め, その傾向を把握した。これらの分析より明らかになった主要な事項は, (1)粒子の断面形と視知覚現象とは密接に結びついており, 断面形によって, 誘因されやすい知覚型が存在する。例えば, 多角形断面では, 視知覚現象は, A型知覚(暗部図視型)を中心に展開され, それに比して円形断面では, B型知覚(明部図視型)をとりやすい。又, 粒子のあらさと知覚型の関係では, 両断面形とも, 粒子があらい程B型知覚をとりやすい傾向がある。断面形による知覚現象の支配の強さは, 個人の知覚特性よりも強く働いている。(2)同じ知覚型に属していても, 断面形により, 視知覚量に大きな差異が認められる。即ち, 多角形断面粒子では, 明部が多様に分化し, ハイライトをもつ面が特に強調して知覚されるため, 小さな粒子のように理解される。そのためB型知覚の粒子の見えは, ハイライト部分の面積と相関し, A型知覚よりも小さな値をとる。円形断面粒子では, 明度が漸次, 連続的に変化するため, 明部は1つにまとまりをもって知覚される。見えのあらさは球表面積と強い相関をもっている。その結果, B型知覚の見えの大きさは, A型知覚よりも大きな値を有する。(3)見えのあらさにおいて, 10点平均あらさが有効となる閾値は約100μである。それ以下では, 10点平均あらさ, 又はあらさ幅の中, より大きな値を示す方が, 見えのあらさとして判断される。60μ以下の細かい粒子では, 反射グレアの影響がみられる。ハイライト部分を「図」と認識するため, B型知覚が増加する。あらさの知覚尺度の上限については, (その1)の結果とも併せて考えれば, 照射角別の回帰式が一点に集中し, 見えのあらさが, 照射角の影響をうけなくなる値であるといえる。(4)見えのあらさは, 表面あらさ粒子の細かいもの程, 面の明るさに影響されている。明るさによって, 継時的場が構成され, その誘導効果もみられる。即ち, 暗順応の場では, 見えのあらさの誤差率が大きく, 明順応の場では小さい。あらいものでは, 粒子の実像とその上に投影されている明, 暗部分とを分離して知覚出来るため, 輝度による「継時的場」の影響を直接的に受けない。(5)面の明るさと見えのあらさとの関係を実験で求め尺度化した。見えのあらさは輝度による場の誘導効果を除去すれば, 粒度とは関係せず, 輝度との相関のみで表わせる。(6)完全拡散光状態における, 視知覚現象をとらえ定量化した。完全拡散光状態における見えは, 照射角15°におけるA型知覚とほぼ類似した傾向を示している。しかし, 視知覚量は, 粒度の小さい範囲では, 照射角15°のものより大きく, 粒度の大なる範囲では, 幾分小さい値をとる。あらさによる見えの変化率は完全拡散光下の方が幾分小さい。 終りにあたって本研究について, 御指導, 御助言いただいた大阪市立大学, 上林博雄教授に深く感謝致します。又, 実験にあたっては, 丹原, 河原, 畠田, 荒蒔, 福知, 各氏, 及び被験者として協力いただいた大阪市立大学学生諸氏に対し, 心から感謝の意を呈します。 尚, 本研究の一部は文部省化学研究費補助金によってなされた事, 実験用試料の一部は, 天辻鋼球, 田中寛治氏の御厚意によるものであることを付記します。