- 著者
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香内 晃
- 出版者
- 日本鉱物科学会
- 雑誌
- 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2003, pp.1, 2003
1.はじめに<br> 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドの特徴は次の通りである:i) 同位体異常を示すXeが含まれる,ii) SiCやグラファイトより2-3桁多量に存在する,iii)しかし,炭素同位体はsolarである.これまでにいくつかのモデルが提案されているが,以上の3つの特徴をすべて説明できるモデルは存在しておらず,ダイヤモンドの形成機構はいまだによく分かっていない.そこで,星間分子雲から隕石母天体への進化過程で起こりうる有機物の生成・変成過程を再現する実験を行った.<br>2.実験<br> 本研究では,次の2つの実験を行った:1)分子雲中での氷(H<SUB>2</SUB>O:CO:NH<SUB>3</SUB>:CH<SUB>4</SUB>=4:2:2:1)への紫外線照射による有機物の生成と,その有機物が低密度雲でさらに10<SUP>5</SUP>年紫外線照射を受ける過程を再現する実験,および,2)分子雲有機物が炭素質隕石母天体に取り込まれた後に起こる,水質変成・熱変成を再現する実験.<br>3.結果<br> 1)分子雲で生成された有機物は,電子線回折ではハローパターンを示すが,高分解能電子顕微鏡観察では1 nm程度のダイヤモンド微結晶(または,ダイヤモンド前駆体)とグラファイトの存在が明らかになった.さらに,低密度雲でのさらなる紫外線照射によりダイヤモンドが5 nm程度まで成長することがわかった. <br>2)分子雲有機物の炭素質隕石母天体での水質変成(100-200<SUP>o</SUP>C)および熱変成(200-400<SUP>o</SUP>C)により,ダイヤモンド,グラファイト,アモルファスカーボン,カルビンが形成されることが明らかになった.<br>4.議論<br> 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドは炭素星や超新星起源ではなく,星間雲起源だと考えるとこれまで問題になっている以下の事を無理なく説明できる:i)SiCやグラファイトより2-3桁多量に存在することは当然である,ii) 炭素同位体も太陽系と同じ物質からできたので同じで当然である,iii) 超新星起源のXeが星間雲の有機物に打ち込まれ,これがダイヤモンドに取り込まれた.また,プレソーラーダイヤモンドに起源の異なるものがあることや,彗星起源の惑星間塵は小惑星起源の惑星間塵と比べてダイヤモンドの含有率が低いことは,プレソーラーダイヤモンドの一部が隕石母天体で形成された可能性を示唆する.