著者
香内 晃
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.31-37, 2008-03-31

星間分子雲および隕石母天体で起こりうる新しいダイヤモンド形成過程を実験的に見いだした.星間分子雲では,不純物を含むアモルファス氷に紫外線が照射されることでダイヤモンド前駆体を含む有機物が形成された.さらに,それに紫外線が照射されるとダイヤモンドは5nm 程度に成長した.これ らの過程は宇宙では普通に起こっている現象なので,ダイヤモンドは宇宙のどこにでもあると言える.また,星間分子雲で形成された有機物が隕石母天体上で水と反応し,その後さらにドライな雰囲気で加熱される過程も実験的に再現した.得られた試料中にはかなりの量のダイヤモンドが含まれていた.隕石中に存在する性質の異なるナノダイヤモンドは,星間分子雲および隕石母天体上の双方で形成されたと考えられる.
著者
香内 晃
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-70, 1994-03-30 (Released:2010-02-05)
参考文献数
23

宇宙空間にはアモルファス氷が大量に存在し,太陽系の起源と深くかかわっている.アモルファス氷の構造と性質および生成条件を紹介するとともに,惑星科学上の意義を解説する.
著者
香内 晃
出版者
The Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.194-199, 1988-10-30 (Released:2009-09-07)
参考文献数
29

Experimental results of the measurement of vapour pressure of amorphous H2O(H2Oas), ice Ic and ice Ih are described. The vapour pressure of H2Oas is one or two orders of magnitude larger than those of ice Ic and ice Ih and depends greatly on the condensation temperature, Tc and the rate of condensation, R. When Tc is low and when R is small, the difference in vapour pressure between H2Oas and ice Ic is large. On the other hand, with increasing Tc and R the vapour pressure of H2Oas approaches that of ice Ic. Also the vapour pressure of ice Ic is slightly larger than that of ice Ih. We discuss the condensation and evaporation of H2Oas in space.
著者
香内 晃
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集 2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
巻号頁・発行日
pp.1, 2003 (Released:2004-12-31)

1.はじめに 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドの特徴は次の通りである:i) 同位体異常を示すXeが含まれる,ii) SiCやグラファイトより2-3桁多量に存在する,iii)しかし,炭素同位体はsolarである.これまでにいくつかのモデルが提案されているが,以上の3つの特徴をすべて説明できるモデルは存在しておらず,ダイヤモンドの形成機構はいまだによく分かっていない.そこで,星間分子雲から隕石母天体への進化過程で起こりうる有機物の生成・変成過程を再現する実験を行った.2.実験 本研究では,次の2つの実験を行った:1)分子雲中での氷(H2O:CO:NH3:CH4=4:2:2:1)への紫外線照射による有機物の生成と,その有機物が低密度雲でさらに105年紫外線照射を受ける過程を再現する実験,および,2)分子雲有機物が炭素質隕石母天体に取り込まれた後に起こる,水質変成・熱変成を再現する実験.3.結果 1)分子雲で生成された有機物は,電子線回折ではハローパターンを示すが,高分解能電子顕微鏡観察では1 nm程度のダイヤモンド微結晶(または,ダイヤモンド前駆体)とグラファイトの存在が明らかになった.さらに,低密度雲でのさらなる紫外線照射によりダイヤモンドが5 nm程度まで成長することがわかった. 2)分子雲有機物の炭素質隕石母天体での水質変成(100-200oC)および熱変成(200-400oC)により,ダイヤモンド,グラファイト,アモルファスカーボン,カルビンが形成されることが明らかになった.4.議論 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドは炭素星や超新星起源ではなく,星間雲起源だと考えるとこれまで問題になっている以下の事を無理なく説明できる:i)SiCやグラファイトより2-3桁多量に存在することは当然である,ii) 炭素同位体も太陽系と同じ物質からできたので同じで当然である,iii) 超新星起源のXeが星間雲の有機物に打ち込まれ,これがダイヤモンドに取り込まれた.また,プレソーラーダイヤモンドに起源の異なるものがあることや,彗星起源の惑星間塵は小惑星起源の惑星間塵と比べてダイヤモンドの含有率が低いことは,プレソーラーダイヤモンドの一部が隕石母天体で形成された可能性を示唆する.
著者
香内 晃
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.1, 2003

1.はじめに<br> 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドの特徴は次の通りである:i) 同位体異常を示すXeが含まれる,ii) SiCやグラファイトより2-3桁多量に存在する,iii)しかし,炭素同位体はsolarである.これまでにいくつかのモデルが提案されているが,以上の3つの特徴をすべて説明できるモデルは存在しておらず,ダイヤモンドの形成機構はいまだによく分かっていない.そこで,星間分子雲から隕石母天体への進化過程で起こりうる有機物の生成・変成過程を再現する実験を行った.<br>2.実験<br> 本研究では,次の2つの実験を行った:1)分子雲中での氷(H<SUB>2</SUB>O:CO:NH<SUB>3</SUB>:CH<SUB>4</SUB>=4:2:2:1)への紫外線照射による有機物の生成と,その有機物が低密度雲でさらに10<SUP>5</SUP>年紫外線照射を受ける過程を再現する実験,および,2)分子雲有機物が炭素質隕石母天体に取り込まれた後に起こる,水質変成・熱変成を再現する実験.<br>3.結果<br> 1)分子雲で生成された有機物は,電子線回折ではハローパターンを示すが,高分解能電子顕微鏡観察では1 nm程度のダイヤモンド微結晶(または,ダイヤモンド前駆体)とグラファイトの存在が明らかになった.さらに,低密度雲でのさらなる紫外線照射によりダイヤモンドが5 nm程度まで成長することがわかった. <br>2)分子雲有機物の炭素質隕石母天体での水質変成(100-200<SUP>o</SUP>C)および熱変成(200-400<SUP>o</SUP>C)により,ダイヤモンド,グラファイト,アモルファスカーボン,カルビンが形成されることが明らかになった.<br>4.議論<br> 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドは炭素星や超新星起源ではなく,星間雲起源だと考えるとこれまで問題になっている以下の事を無理なく説明できる:i)SiCやグラファイトより2-3桁多量に存在することは当然である,ii) 炭素同位体も太陽系と同じ物質からできたので同じで当然である,iii) 超新星起源のXeが星間雲の有機物に打ち込まれ,これがダイヤモンドに取り込まれた.また,プレソーラーダイヤモンドに起源の異なるものがあることや,彗星起源の惑星間塵は小惑星起源の惑星間塵と比べてダイヤモンドの含有率が低いことは,プレソーラーダイヤモンドの一部が隕石母天体で形成された可能性を示唆する.