- 著者
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阿依 アヒマディ
北脇 裕士
- 出版者
- 宝石学会(日本)
- 雑誌
- 宝石学会(日本)講演会要旨
- 巻号頁・発行日
- vol.28, pp.11, 2006
ブラジルのパライバ州のMina da Batalha鉱区及びリオグランデ ド ノルテ州のMulunguとAlto dos Quintos鉱区から産出された銅とマンガンを含有するブルー~グリーン色調のエルバイトは、1990年の初期に宝石業界において"パライバ"トルマリンと呼ばれるようになった。2001年からナイジェリアの西部イバダン州のEdeko鉱山、そして2005年の中頃、モザンビークのAlto Lingonha地域からも銅を含有するエルバイトの新しい供給源が発見され、ブルー~グリーン、バイオレット、ピンクなどを有するトルマリンが産出されている。色や外観だけでなく化学組成もブラジル産エルバイト・トルマリンと重複しているため、標準的な宝石鑑別や半定量化学分析値 (EDXRF分析により得られる)によってブラジルの素材との識別は困難である。<BR> 本研究では、ブラジル、ナイジェリア及びモザンビークのそれぞれの産地が既知の相当量の銅を含有する198個以上のブルー~グリーンのトルマリンをレーザーアブレーション・誘導結合プラズマ分析装置(LA-ICP-MS)を用いて分析した新しい化学データを示し、さらにこれらのデータをどのように原産地決定に用いるのかを評価した。<BR> 上記の産地からのトルマリンを区別するのに化学分析値が有効であることを示すため、副成分と微量元素の2つの異なった組み合わせ;(Ga + Pb)対(Cu + Mn)、(Cu + Mn)対Pb/Beの比率のプロッティング、微量元素の組み合わせ;Mg-Zn-Pbによるプロッティングをした。<BR> LA-ICP-MS分析によって得られた定量化学分析値では(Ga + Pb)対(Cu + Mn)、(Cu + Mn)対Pb/Beの比率のプロッティングやMg-Zn-Pbによって、3カ国から産出されたトルマリンを区別することができる。また微量元素の特徴として、ナイジェリア産トルマリンはより多くのGa、Ge及びPbを含むのに対してブラジル産はMg、ZnおよびSbが多い。モザンビークからの新しい含Cuトルマリンは、Be、Sc、Ga、Pb、およびBiに富むが、Mgを欠いている。<BR> 各産地のトルマリンの宝石学的特性や蛍光?線分析による化学組成が重複しているため、標準的な分析手法においてはこれらの地理的な産地を識別するのが困難である。世界の主要鑑別ラボや各国の業者団体はこのような状況を踏まえ、産地を問わずCuやMnを含有するブルー、ブルー~グリーン、グリーン、バイオレットのエルバイト・トルマリンを"パライバ・トルマリン"と呼ぶことに同意したが、本研究では産地鑑別にはより高度な定量化学分析が必要であることを強調する。