著者
三輪 美樹 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.65, 2017

<p>南米原産のコモンマーモセット<i>Callithrix jacchus</i>は小型の新世界サルで,白い耳毛や長い尾を特徴とする。その尾の長さは体長と同等かあるいはそれより長いのが本来の姿であるが,飼育下においては部分的ないし全体的に欠損している個体が散見される。新生仔期に同居家族によって捕食されることが原因で,「尾食い」として知られている。我々はこれまでの研究で異味異臭の創傷治療薬ブルンス液塗布によって尾食い行為の継続を防止出来る可能性を見いだし,前々回の本大会で発表した。今回我々は,尾食い発現の発端は新生児の尾の形状にあり,その行為継続には味覚・嗅覚的嗜好が関与しているとの仮定のもと,Tail model testによる新生仔尾に類似した形状物に対する嗜好性検討および尾ぐい発現後のブルンス液塗布効果についての更なる検討を実施した。Tail model testで綿紐を用いて呈示形状の違いよる嗜好性の差を調べたところ,新生仔尾に類似した切り離し形状に対する嗜好性が最も高かった。新生仔の尾の形状がコモンマーモセットにとって齧り易いものである可能性が示唆された。また,ブルンス液塗布の効果を4家族の新生仔で確認したところ,尾食い発現当日から1日1回少量を尾先の患部に塗布することによっていずれの家族においても生後数日までには尾食い行為が終息し,新生仔の尾の欠損を軽微な状態で食い止めることが出来た。行為終息の要因には,味覚・嗅覚的嫌悪条件付けが功を奏した可能性に加えて,創傷治癒が促進されたことも関与するものと推察される。</p>

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