著者
三輪 美樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

集合体恐怖症トライポフォビアとは、蓮の花托やフジツボ等小さな穴や隆起物の集合体に対して名状しがたい不快や嫌悪を抱く状態を指す。公式の恐怖症ではないが世間の関心は非常に高く、2013年に学術的探索が開始されて以来、加速度的に研究が推進されている。生命を脅かす危険生物や病気・病原体に対する生得的適応反応との説が有力であるが、それを裏付けるようなヒト以外の動物での研究はまだない。またトライポフォビアの特徴である「怖いもの見たさ」についても検討されていない。本研究は、トライポフォビアの機序解明のための非ヒト霊長類モデル作製とトライポフォビアの「怖いもの見たさ」立証を目的として実施する。
著者
三輪 美樹 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.65, 2017

<p>南米原産のコモンマーモセット<i>Callithrix jacchus</i>は小型の新世界サルで,白い耳毛や長い尾を特徴とする。その尾の長さは体長と同等かあるいはそれより長いのが本来の姿であるが,飼育下においては部分的ないし全体的に欠損している個体が散見される。新生仔期に同居家族によって捕食されることが原因で,「尾食い」として知られている。我々はこれまでの研究で異味異臭の創傷治療薬ブルンス液塗布によって尾食い行為の継続を防止出来る可能性を見いだし,前々回の本大会で発表した。今回我々は,尾食い発現の発端は新生児の尾の形状にあり,その行為継続には味覚・嗅覚的嗜好が関与しているとの仮定のもと,Tail model testによる新生仔尾に類似した形状物に対する嗜好性検討および尾ぐい発現後のブルンス液塗布効果についての更なる検討を実施した。Tail model testで綿紐を用いて呈示形状の違いよる嗜好性の差を調べたところ,新生仔尾に類似した切り離し形状に対する嗜好性が最も高かった。新生仔の尾の形状がコモンマーモセットにとって齧り易いものである可能性が示唆された。また,ブルンス液塗布の効果を4家族の新生仔で確認したところ,尾食い発現当日から1日1回少量を尾先の患部に塗布することによっていずれの家族においても生後数日までには尾食い行為が終息し,新生仔の尾の欠損を軽微な状態で食い止めることが出来た。行為終息の要因には,味覚・嗅覚的嫌悪条件付けが功を奏した可能性に加えて,創傷治癒が促進されたことも関与するものと推察される。</p>
著者
菊池 瑛理佳 三輪 美樹 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第28回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2012 (Released:2013-11-01)

ヒトの子どもには、おもちゃの選好性に性差があることが報告されている。例えば、男の子はミニカーなどの動くおもちゃを好み、女の子はぬいぐるみや人形などを好む。これらの選好性が親の教育方針などによって左右されるという見解も多くあったが、こうした選好性は、出生前のホルモン暴露の影響を強く受けていることなど生物学的要素が影響しているという考えが支持されている。さらにヒト以外の霊長類でも、ベルベットモンキー(Alexander and Hines, 2002)やアカゲザル(Hassett, Siebert, & Wallen, 2008)でもヒト用おもちゃに対する選好性の性差が報告されている。ヒト以外の霊長類がおもちゃの意味を理解しているとは考えにくいが、こうした物体の何らかの要素に対する選好性の性差が存在することを示唆する。本研究は、小型新世界ザルであるコモンマーモセットが物体の選好性に関する性差を示すか否かを、ヒト用おもちゃを刺激として調べることを目的とした。実験には1歳半以上のコモンマーモセットのオス9頭、メス9頭を対象に実験した。刺激として、ぬいぐるみ(ヒトの女児用おもちゃ)とミニカー(ヒトの男児用おもちゃ)を用いた。実験は飼育ケージで行なった。実験1では、ぬいぐるみとミニカーを同時に30分間個体に提示し、実験2では、ぬいぐるみ2つとミニカー2つを用意し、一つずつ5分間個体に提示した。おもちゃの提示期間中、コモンマーモセットの行動をビデオ撮影した。結果、実験1において有意差は見られず、実験2においてメスがぬいぐるみに接触する時間がオスよりも有意に長かった(Mann-Whitney’s U test, P
著者
三輪 美樹 鴻池 菜保 勝山 成美 中村 克樹
出版者
一般社団法人 日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
pp.38.018, (Released:2022-10-27)
参考文献数
48

Over the past two decades, a number of biomedical studies have been conducted in Japan using common marmosets (Callithrix jacchus). Common marmosets are highly promising experimental animals because of their high fertility, which is noteworthy among primates. Here, based on our breeding experience at Kyoto University, we have compiled a simplified manual that outlines how to breed and raise robust common marmosets, defined as those achieving over 350g in weight, in a captive environment. The manual covers selection of appropriate breeding individuals, effective pairing methods, perinatal management including birth control, feeding and housing management, and precautionary health status monitoring.