- 著者
-
早乙女 梢
太田 祐子
服部 力
柿嶌 眞
- 出版者
- 日本菌学会
- 雑誌
- 日本菌学会大会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.51, pp.21, 2007
<I>Polyporus</I>(タマチョレイタケ属)は,担子菌類サルノコシカケ科の一属であり,子実体が有柄で結合菌糸骨格菌糸の未分化な2菌糸型の種が広く含められている.このため,本属は子実体の外形が多様な種が包括されており,属内には子実体の外部形態に基づいた<I>Polyporus</I>, <I>Favolus</I>, <I>Melanopus</I>, <I>Polyporellus</I>, <I>Admirabilis</I>及び<I>Dendropolyporus</I>という6つの形態グループが設けられている(Núñez and Ryvarden, 1995).<BR>本研究は現在1つの属として扱われている<I>Polyporus</I>の分類学的な妥当性を検証する事を目的とし,本属22種52菌株及び近縁属10属15種18菌株を用い,LSUnrDNA領域, <I>rpb2 </I>遺伝子領域及び<I>atp6</I>領域による分子系統解析を行った. <BR>解析の結果,系統樹上には8個の単系統群が検出され,そのうち2単系統群には本属菌と近縁属菌が含まれていた.したがって, <I>Polyporus</I>は単系統群ではないことが明らかとなった. <BR>属内の各グループの系統関係については, <I>Polyporellus</I>グループの種は同一クレードを形成した.一方, <I>Polyporus</I>グループと<I>Melanopus</I>グループの種は複数のクレードに含まれ,これら2グループは単系統なグループではなかった.なお, <I>Favolus</I>グループ, <I>Admirabilis</I>グループと<I>Dendropolyporus</I>グループの種については系統的な位置を特定することができなかった. <BR>以上の結果から, <I>Polyporus</I>は単系統群ではなく,また形態的にも遺伝的にも多様な種が含まれており,分類学的再構築が必要であることが明らかになった.