- 著者
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中野 泰志
大河内 直之
布川 清彦
井手口 範男
金沢 真理
- 出版者
- 日本ロービジョン学会
- 雑誌
- 日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.67, 2005
<BR>目的:<BR>マンホール(manhole)とは、掃除や点検等のために、人の出入りができるように作られた穴のことである。下水道用マンホールは雨水や汚水の排除を目的として設けられるため、いったん人が中に転落すると、人命にかかわる事故となる場合がある。本研究では、視覚障害者のマンホール転落事故事例の分析を行い、原因と対策について検討を行った。<BR>方法:<BR>事故に遭遇した視覚障害者1名に対して、事故直後に面接法によるヒアリングと実地検証を、また、怪我の完治後、精神的に落ち着いた時点でヒアリング調査を実施した。実地検証は、事故当時現場にいた関係者(被害者、作業員3名、現場監督1名)と面接者、記録者の7名により、事故現場で行った。ヒアリングと実地検証の場面は、全員に了解をとった上で、VTR、ICレコーダー、デジタルカメラで記録した。また、測地にはメジャーとハンディ型レーザー距離計(Leica製DISTOclassic5)を用いた。<BR>結果・考察:<BR>ヒアリングの記録と測地データを対象として分析を行った。被害者は日常的に単独歩行を行っている30歳代の全盲男性(先天性緑内障による視覚障害で、4歳のときに網膜剥離を起こして光覚になり、11歳のときに光も失い全盲になった)で、事故は通い慣れた通勤路で起こった。白杖を利用して歩道を歩いてる最中、蓋のあいているマンホールに気づかず、左足より落ち込み、深さ約70cmのマンホールに転落し、左大腿外側擦過傷を負った。分析の結果、あけたままのマンホール(開口部)に、注意喚起を促す人員も配置せず、マンホール周囲にも囲いを設置していなかったことがわかった。これらは「マンホールふたの施工要領」で注意喚起されている事項であり、工事実施者のヒューマンエラーであることがわかった。転落事故は命にかかわる大事故につながりかねないため、今後、ヒューマンエラーが起こったときの二重三重の安全対策を同時に講じる必要がある。