著者
井上 賢治 森 美紀 志村 和可 千葉 マリ 桑波田 謙 間瀬 樹省
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.4, 2008

【目的】ロービジョン者ならびに高齢者が、駅からお茶の水・井上眼科クリニックまでのアクセス環境において、不便に感じていることはないかを調査した。<BR>【方法】JRお茶の水駅あるいは東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅を通院のために利用しているロービジョン者あるいは高齢者20名(男性9名、女性11名)を対象とした。「駅から当クリニックに来るまでに困っていること」を駅構内、横断歩道、ビル入り口までの通路・階段、ビル入り口からのエレベーターに分けて、各地点の不便を調査した。<BR>【結果】JRお茶の水駅を利用している患者10名(男性5名、女性5名)は、平均年齢74.0±7.4歳、疾患は緑内障および白内障7名、糖尿病性網膜症 2名、黄斑上膜 1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内80%、通路・階段50%、横断歩道30%、ビル入り口からのエレベーター 10%で、駅構内が一番多く、特にホーム・階段が狭い、案内が見づらいなどの声が多かった。東京メトロ新御茶ノ水駅を利用している患者10名(男性4名、女性6名)は、平均年齢70.8±5.4歳、疾患は緑内障8名、糖尿病性網膜症 1名、ぶどう膜炎1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内70%、通路・階段 50%、ビル入り口からのエレベーター 30%で、駅構内が一番多く、特に千代田線のお茶の水口は駅ホームから改札までが長いエスカレーターのため不便と言う声が多かった。<BR>【結論】JR、東京メトロ利用者に共通していたのは、駅構内で困っていることが多かった。特に駅ホームから改札へのアクセスが階段や長いエスカレーターのみで利用しづらく、案内表示が見づらいと感じていた。患者さんのことを考えると、クリニック内にとどまらず、まち全体のユニバーサルデザイン化を検討すべきである。
著者
吉野 由美子 小田 浩一
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.43, 2008

目的 本発表では事例Aがダイビングというレクリエーション活動の中で、見ることに目覚め、見る能力をもっと高めたいという欲求を持ち、実際に見えなかった海中の小生物が見えるようになっていく過程を追い、ダイビングという活動が視覚リハに役立ちその可能性を広げる存在であることを明らかにする。 方法 事例Aは年齢60歳、先天性白内障手術による両無水晶体眼、矯正視力0.2、片方に杖を持つことで歩行可能な下肢障害がある。下肢障害の原因は不明である。本稿ではAの日記、26年間700回のダイビングログ、撮影した写真などの記録を分析検討する事例研究法を使用する。 結果 事例Aは、下肢障害があり転ぶことに恐怖心を持っていた。偶然に出会ったスクーバーダイビングの無重力で転ぶ心配のない世界に魅せられていった。水中での安全確保のためのゲージのチェックや、言葉でのコミュニケーションが取れない水中でのサインの確認などのため見ることへの動機付けが強まり、見え方を改善するため情報を集め活用することによって見る能力を高めようとした。また、「見えないから興味がない」と思っていた小生物が、アフターダイビングのおり、プロジェクターで拡大され美しい姿を見ることにより「みたい」という欲求が高まった。このように見ることへの有用な刺激を受け、見ることへの欲求がさらに強まり、その結果Aは光学機器や電子エードを積極的に活用し、視覚リハに励むようになり、現在Aは、小生物の世界を見ることができるようになって来ている。 結論 ロービジョン者が見ることの楽しさを知り、見ることに意欲を持って取り組むことが視覚リハを積極的に利用し、その結果視覚活用能力を向上させることにつながって行くのである。見ることへの動機付けと見ることの楽しさを味わう舞台として、スクーバーダイビングは多くの有用な条件を持っている。また「見える」世界が広がることは、ロービジョン者のQOLの向上に多大の貢献をする。
著者
山中 幸宏
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.85, 2006

70歳代の網脈略膜萎縮の女性は、娘さんの手にしがみつくようにして来店されたが、遮光眼鏡CCP-YGを掛けることで「曲がった腰もしゃんと伸び、大またで歩けるようになった」…。60歳代の糖尿病網膜症の女性は「度数が入っていないのに遮光眼鏡CCP400FLを掛けるととてもよく見えるようになる。度数が入っていないメガネでも良く見えるようにする山中さんは手品師か!」と喜んでいただいた。<br>1997年に視覚学会で発表した聞き取り調査では、糖尿病網膜症の方で矯正視力0.6以下に低下した事例では70_%_の方が羞明を感じ、そのうち70_%_の方が自覚的に遮光眼鏡装用により見やすくなることを述べていた。<br>しかし、その後のコントラスト検査装置を使った実験では、糖尿病網膜症の方は、コントラストのほぼ全域で低下する傾向があることもわかった。<br>今回は各事例を紹介すると共に、臨床面では有効性が高いとされる遮光眼鏡の秘めたパワーの理由を検証したい。
著者
内田 まり子 中村 透 山縣 浩 佐藤 幸子 浅野 真晴 秋保 明 阿部 直子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.71, 2005

財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、平成13年11月から平成17年3月まで、仙台市による地域リハビリテーションモデル事業の一環である中途視覚障害者生活訓練事業の委託を受け、訪問による視覚障害リハビリテーションサービスを実施した。このサービスを利用した仙台市民の人数は、平成13年度および平成14年度は16名、平成15年度は16名、平成16年度は23名であった。のべ55名のケースについて、支援に関係した施設および機関は、当訓練センターのみではなく、地域に存在する複数だったケースが大半を占めた。その他、ケースの概要と傾向をまとめ、地域にある複数の関係機関どうしの関わりや支援システムの動きなどについて報告する。 また、受傷後およそ3年間、引きこもりに近い生活をしていたケースが地域のデイサービス利用をきっかけに視覚障害リハビリテーションサービスを利用し、交流会(「仙台市における中途視覚障害者リハビリテーション支援システム第3報」にて発表)にも参加を始めたケースを報告し、地域に住む視覚障害者に提供できるリハビリテーションサービスについて考察したい。
著者
青木 成美 吉野 嘉那子 渡辺 哲也 渡辺 文治 岡田 伸一 山口 俊光
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.74, 2007

視覚障害者に広く使われている既存スクリーンリーダの漢字詳細読みの説明表現は、これらを使用する成人や中・高校生にとって理解しにくいものが少なからずあるといわれてきた。そこで、われわれはこれらに関して検討を行ってきたのでその結果のひとつを報告する。<br> 今回の報告で検討を行った漢字は、常用漢字1945文字から教育漢字1006文字を引いた939文字である。また、単語親密度を主たる指標とし、これら漢字の詳細読みをも新たに作成した。そして、この詳細読みの評価のため大学生を対象に漢字書き取り調査を行った。<br> 結果は、親密度の高い単語を含む詳細読み群は、親密度の低い単語を含む詳細読み群より有意に高い平均正答率が得られた。これは、調査対象者が大学生であったが、理解しやすい詳細読みを作成するにあたっては単語親密度をひとつの指標とすることが有効であることが示された。<br> 今回の調査では、サ変動詞化する名詞を名詞のまま呈示する場合と、動詞として「する」を付けて呈示する場合の正答率も比較した。しかし、両者の間には有意差がみられなかった。
著者
守本 典子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.26, 2007

<br>【目的】網膜色素変性(RP)児の親(以下、親)に対し、当ロービジョンクリニックでは疾患の説明、関連情報の提供、視覚障害者の交流会の案内などを行ってきたが、なかなか積極的な姿勢が見られず、親子の心を支えきれていない。そこで、親を対象とする交流会(以下、「親の集い」)を試み、より効果的な支援を模索する。<br><br>【方法】岡山大学病院眼科外来で2回、「親の集い」を開催した。体験談と助言を得るため、参加予定者の状況から適切と思われる大人のRP患者(以下、RP成人)を毎回3名ずつ招待し、参考資料も配付した。その後、参加した親5名(延べ6名)から、電子メールで感想と要望をもらった。<br><br>【結果】病名告知から間のない親は、同じ立場の親と自立したRP成人に会って思考が前向きになり、気持ちを聞いてもらって楽になったと言う。告知後、長く経過していた親は、子どもの将来を考える手がかりが得られ、思いを語ることで気持ちの整理ができたと答えた。「子への告知」の問題は永遠のテーマとなったが、参加者全員が「親の集い」を有意義だったと評価し、RP成人を招く現在の形での継続を希望した。<br><br>【結論】今回は、人選されたRP成人が同席したことで、病名告知から間もない親の悲嘆と孤立の時期がより短くなり、告知後の経過が長い親には次の段階へ進む絶好の機会となった。伝言でない生の声には説得力がある上、1対1では自分への気遣いから加減しているかもしれないと疑いがちだが、皆の前で語られる言葉は真実として吸収しやすいものと思われた。眼科医は患者の個人情報と患者およびその家族からの信頼を得やすいため、個別性と共通性に配慮した企画を実現しやすい立場にある。今後も、ロービジョンクリニックや視覚障害者の交流会を通して築いた人脈を生かし、「親の集い」を発展させていくことで、親、ひいてはRP児の幸福につなげたい。
著者
菊池 智明
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.41, 2006

1.目的<BR>各種の文字情報の入手に制約がある視覚障害者にとっては、インターネットを活用することで、情報の収集が容易になる。しかしながら、パソコン初心者の視覚障害者にとっては、一般のホームページはその構造が比較的複雑で、そこからいろいろな情報を得るのはかなり難しい作業となっている。<BR>そこで、<BR>a.文書構造をできるだけ分かりやすくして、リンクやフレームといった概念を理解しやすくする。<BR>b.リンク間の移動やリンクによるページ移動、フレームの切り替えおよびフォーム入力などといった操作の練習を集中的に行なえるようにする。<BR>ということを考慮して、ホームページ閲覧の練習用ホームページを開設した(http://homepage2.nifty.com/cosmosvision/)。<BR>2.ホームページ作成にあたって留意した点<BR>フレームの概念の理解とその切り替えの練習のために、随所に故意にフレームを使ってページを作成した。また、実際のホームページの中には、リンクを開くと勝手に別ウィンドウで開くものがある。そこで、そういう状況に遭遇した場合でも冷静に対処できるように、別ウィンドウで開くようにしたリンクも随所に設けた。<BR>また、インタラクティブなサイトでは、掲示板をはじめ、フォーム入力が必要になる場合が多い。そこで、フォーム入力練習用として、メールフォームや掲示板なども用意した。<BR>3.フィードバックとサポート<BR>必要に応じて、定例の勉強会の機会を利用するほか、メール等により寄せられる質問に対して随時回答し、回答の結果をホームページ上に掲載してメンバー間で情報の共有化を図っている。<BR>4.経過<BR>フォーム入力に対して抵抗感が少なくなったメンバーの中には自身のブログを開設して記事投稿を定期的に行ったり、他のメンバーが開設しているブログにコメントするなど、徐々にではあるが、ネットの世界が広がりつつあるメンバーも現れてきている。<BR>
著者
仲泊 聡 斎藤 奈緒子 渡邊 公恵 渡辺 文治 末田 靖則
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55, 2005

【目的】一般に、読書中の眼球運動を観測すると、主に衝動性眼球運動が観察され、きわめて短い時間にある範囲を読み取っているということが知られている。このような短時間提示された視標を瞬時にして視認する能力が、動揺視患者においてどうなっているかは大変に興味深い。なぜなら、もしそのような能力が高いのであれば、文字を瞬間提示することによりエイドを作成することができ、逆に低下していれば、この現象を用いて動揺視の程度の評価を行うことが可能であると考えられるからである。今回、我々は、これを確かめるために動揺視患者の視覚短期記憶を測定した。<BR>【方法】対象は、異常眼球運動を有する脳幹出血・梗塞患者6名、両側迷路障害患者2名、大脳性動揺視患者1名と正常コントロール6名であった。全症例に簡易視野検査にて視野欠損のないことを確認したうえで視覚短期記憶検査を行なった。視覚短期記憶検査は、白背景に130msの間、黒点を提示し、この数を答えさせ、数を増減して臨界算定個数を測定した。また、刺激提示直後にランダムドットマスクと刺激黒点を多数提示するマスクを提示し、これらの条件での測定をも行なった。各マスク条件における正常群と動揺視群の平均値の差を検定した。<BR>【成績】全被験者において視野障害はなかった。正常者における平均臨界算定個数はマスクなし8.8、ランダムドットマスク6.3、黒点マスク3.6であった。一方、動揺視患者における平均臨界算定個数は同様に5.4、3.8、1.9であり、すべてのマスク条件において、正常群に比べ動揺視群では、臨界算定個数が有意に低下していた。【結論】動揺視患者の視覚情報処理障害の一側面として視覚短期記憶の障害が認められた。この現象のメカニズムについては明らかではないが、その異常は極めて明瞭であり、動揺視の程度判定の視標として視覚短期記憶の程度を示す臨界算定個数が有用であることが示唆された。
著者
永井 伸幸
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.59, 2006

目的<BR>筆者は以前、弱視者が主観的に選択する文字サイズと客観的評価から推定される適した文字サイズの違いについて研究を行った。その結果、主観的に選択された文字サイズが、客観的評価の結果と比べて大きくなる傾向にあった<SUP>1)</SUP>。しかし、その後、臨界文字サイズに近い文字サイズを選ぶ者もみられたため、さらに詳細な検討を進めることとした。そこでまず、この研究を更に推進するにあたり、文字サイズの主観的選択方法について検討した。<BR>方法<BR>被験者:以前の研究にも参加した弱視者2名であった。手続き:被験者の眼前30 cmに設置されたCRTディスプレイ上に、1行10文字3行の文章(文の一部を含む)を提示した。文字サイズは、前回の研究で把握した好みの文字サイズの5倍以上(80ポイント前後)あるいは1/2以下(7ポイント前後)の大きさで提示された。被験者はキーボードの上下カーソルキーあるいは画面上の上下ボタンをマウスでクリックすることで、文字サイズを自分が読みやすいと思う文字サイズに調整した。<BR>結果<BR>1名の被験者は、前回の研究とほぼ同じ文字サイズ(約1.0logMAR)を選択したが、もう1名は、約1.0logMARから約1.4logMARへと選択文字サイズが大きくなった。この結果は、同一の目的のための測定でも方法によって被験者内にも差異が生じるおそれがあることを意味している。このことについては、さらに分析を進めたい。また、両被験者とも、選択する文字サイズに一定の範囲があることが示された。<BR><SUP>1)</SUP>Nagai, N(2005)Difference of reading performance in subject selected condition and in reading chart, VISION2005 International Conference on Low Vision abstract CD.
著者
高橋 信行 松田 美代子 井上 たかみ 井川 剛 井川 緑 和田 浩一 松友 博史 村上 博 大西 キミ 鎌村 千秋 小田 由美 佐々木 美津代 中田 ひとみ 黒田 かつ子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.60, 2005

視覚障害と知的障害を併せ持つ盲学校の生徒について、1 保護者、2 教師、3 寄宿舎指導員がインターネットの掲示板システムを利用し生徒に関する情報を共有しようという取り組みをおこなった。我々は、これを「電子連絡帳」と呼んでいる。電子連絡帳により保護者、教師、寄宿舎指導員の連携が強化され、保護者に対するアカウンタビリティーの向上や生徒に対する教育サービスの向上が期待できると考えている。電子連絡帳の仕組みや実施方法、利点、今後改善すべき点などについて報告する。
著者
川嶋 英嗣 川瀬 芳克 高橋 伸子 高橋 啓介
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.33, 2005

【目的】短波長をカットする遮光眼鏡は,中間透光体の白濁による光散乱によって起こるグレアを軽減する効果があると考えられている.本研究では人工的に白濁させたフィルタを晴眼者が装用したとき,低コントラスト視力が遮光眼鏡の使用によってどのように変化するかを検討した.<BR>【方法】晴眼者7名を対象とした.プラスチックレンズにサンドペーパーをかけることで製作した白濁フィルタを1条件使用した.遮光眼鏡は東海光学社製CCPシリーズのLY, YL, OY, RO, YG, UG, BRの7種類を用いた.低コントラスト視力測定はナイツ社製CAT2000を用いて,昼間視条件の輝度コントラスト5条件(100, 25, 10, 5, 2.5%)について実施した.測定は白濁フィルタ装用条件と装用しない晴眼条件の2条件でおこない,それぞれで遮光眼鏡を使用したときと,しないときの低コントラスト視力の比較をおこなった.<BR>【結果】白濁フィルタ装用条件では2.5, 5, 10%の低コントラスト視力が晴眼条件に比べて有意に低下していた.しかし,どの種類の遮光眼鏡を使用した場合でも,各被験者間で共通した視力値改善の傾向は見出されなかった.同様の結果は白濁フィルタを装用しない晴眼条件でも得られた.<BR>【考察】今回の実験では,白濁フィルタ装用時の低コントラスト視力が遮光眼鏡の使用で改善するという予測を支持する結果は得られなかった.これは低コントラスト視力測定装置の刺激呈示領域の背景輝度が低かったことや,白濁フィルタの透過率の設定条件が関係しているかもしれない.
著者
高田 篤
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45, 2006

拡大読書器の利用状況○高田 篤、越後谷 法義、豊田 久、永倉 利美、白神 章 (株)高田眼鏡店 加藤 聡、国松 志保、田村 めぐみ、落合眞紀子、柳澤美依子 (東京大学眼科)【目的】拡大読書器は日常生活用具として広く使用されている。今回我々は、拡大読書器の利用状況を追跡調査することによって、社会資源として有効に利用されているか否かを検討した。【対象と方法】平成14年4月から平成18年4月までに拡大読書器を購入した97名を対象としたところ、対象の平均年齢は68.0±17.0歳であった。視機能障害となった原因疾患は糖尿病網膜症:11例、緑内障:30例、黄斑変性:26例、その他:17例、不明:13例で障害者等級の内訳は1,2級:46例、3,4級:24例、5,6級:16例、不明:7例、該当なし:4例であった。購入後調査時期までの期間は15.9±10.8ヶ月であった。拡大読書器の内訳はTimes社製AV-100:48台、AV-100ネオ:14台、AV-300:2台、ナイツ社製VS-1500AF:22台、VS-2000AF:5台、VS-_III_:6台であった。アンケート調査は電話にて行なった。【結果】電話アンケートの結果、連絡が取れなかった7名を除く、90名中拡大読書器を現在も使用しているが79名(87.8%)、使用していないが11名(12.2%)であった。使用していない理由は視力低下の進行:4名、使用時の眼精疲労や頭痛:5名、高齢の為寝たきりの状態になった:2名であった。使用しなくなった時期は購入後18.0±10.9ヶ月であった。【結論】拡大読書器は日常生活用具の一つとして多くの視覚障害者にとって長期にわたり有用に使用されていることが判明したが、使用できなくなる例もあることから販売後1.5年に使用状況を調査し、非使用例での拡大読書器の有効活用が行われることが望ましいと考えられた。
著者
中野 泰志 大河内 直之 布川 清彦 井手口 範男 金沢 真理
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67, 2005

<BR>目的:<BR>マンホール(manhole)とは、掃除や点検等のために、人の出入りができるように作られた穴のことである。下水道用マンホールは雨水や汚水の排除を目的として設けられるため、いったん人が中に転落すると、人命にかかわる事故となる場合がある。本研究では、視覚障害者のマンホール転落事故事例の分析を行い、原因と対策について検討を行った。<BR>方法:<BR>事故に遭遇した視覚障害者1名に対して、事故直後に面接法によるヒアリングと実地検証を、また、怪我の完治後、精神的に落ち着いた時点でヒアリング調査を実施した。実地検証は、事故当時現場にいた関係者(被害者、作業員3名、現場監督1名)と面接者、記録者の7名により、事故現場で行った。ヒアリングと実地検証の場面は、全員に了解をとった上で、VTR、ICレコーダー、デジタルカメラで記録した。また、測地にはメジャーとハンディ型レーザー距離計(Leica製DISTOclassic5)を用いた。<BR>結果・考察:<BR>ヒアリングの記録と測地データを対象として分析を行った。被害者は日常的に単独歩行を行っている30歳代の全盲男性(先天性緑内障による視覚障害で、4歳のときに網膜剥離を起こして光覚になり、11歳のときに光も失い全盲になった)で、事故は通い慣れた通勤路で起こった。白杖を利用して歩道を歩いてる最中、蓋のあいているマンホールに気づかず、左足より落ち込み、深さ約70cmのマンホールに転落し、左大腿外側擦過傷を負った。分析の結果、あけたままのマンホール(開口部)に、注意喚起を促す人員も配置せず、マンホール周囲にも囲いを設置していなかったことがわかった。これらは「マンホールふたの施工要領」で注意喚起されている事項であり、工事実施者のヒューマンエラーであることがわかった。転落事故は命にかかわる大事故につながりかねないため、今後、ヒューマンエラーが起こったときの二重三重の安全対策を同時に講じる必要がある。
著者
藤田 博子 舘田 美保 田村 一 河村 宏
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.62, 2007

<Br>【目的】国立更生施設の理療教育課程(以下 理教)の必須科目である臨床実習において2名の実習生に心理教育的支援を実施したので経過を報告する。<br><br>【プロフィール】 事例1(X年度)は、40歳代、男性、網膜色素変性による視覚障害、軽度難聴あり、事例2(X+1年度)は、20歳代、男性、未熟児網膜症による視覚障害。2例とも理教専門課程3年生。支援開始時、教官らは臨床実習の単位習得及び課程修了の困難を危惧し、かつ指導の難しさ(コミュニケーションが難しい、やる気を感じられない)を感じていた。<br><br>【支援の経過】臨床実習の観察や本人・関係教官との面談等からの情報収集により心理教育的アセスメントを行なった。結果、事例1では、コミュニケーションの難しさの背後に難聴の存在があること、医療面接時に実施する質問内容が十分に身についていないこと、事例2では、青年期特有の職業を中心とした進路選択の課題、障害のある自己の捉え方の課題を抱え、かつ不安が強く自信がもてない状況にあることが明らかになった。そこで、週1回1時間半程度、各約8ヶ月間、教材開発の場を利用した支援を実施した。事例1では試作版の医療面接教材とロールプレイを用いた面接の練習方法の検討、事例2では試作版の医療面接教材の改定作業を行なった。この支援時の様子は本人の了解を得て適宜教官に伝えた。事例2では支援者会議を実施した。2例ともに、教材開発への無断欠席はなく、提示した資料などに意見を述べる等積極的な様子がみられた。また、支援終了時には臨床実習の単位取得、理教課程を修了することができた。<br><br>【考察】心理教育的支援は、事例を学習面、心理社会面、進路面、生活健康面と多角的な把握、指導・支援者の間に繋がりチーム形成を可能にし、多角的な支援を実現したものと考えられる。また、教材開発の場は、学生に自己研究の機会を提供し現実に向き合う態度を養ったものと推察する。
著者
柳原 崇男 北川 博巳 大森 清博 北山 一郎 松本 泰幸
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.6, 2008

【目的】本研究はロービジョン者の夜間歩行を支援するために、夜間の低い照度下でもロービジョン者が歩きやすくなる方法として、電柱等に取り付けたLED照射装置から光を照射し、道路面に連続したマークを用いた誘導方法を提案する。そこで平成19年に県道明石宝塚線歩道にて、LED照明を用いた誘導システムの実証実験を実施した。本研究の目的はこのLED照明を用いた夜間歩行支援システムの効果や課題を明らかにすることである。【方法】ロービジョン者21名に対し、上記で提案しているLEDを用いた誘導システム(以下:LED誘導マーク)に加え、市販の地面に埋め込むタイプのLEDも併設し、歩行実験を行った。実験方法はそれぞれの歩行速度、有効性等に関するアンケート調査を実施した。また、LED誘導マーク、埋め込み型LEDの有効性を把握するために、誘導システムが設置されていない区間(以下:LEDなし)も歩行してもらった。【結果】LED誘導マーク、埋め込み型LED、LEDなし区間20mの歩行時間と偏軌距離を比較した。その結果、歩行時間に関しては、埋め込み型LEDが一番早くなっていたが、統計的な有意差はなかった。偏軌距離に関しては、LEDなし(42.60cm)に比べて、LED誘導マーク(10.75cm)、埋め込み型LED(12.5cm)を用いることによって、より直線的に歩いていることがわかった。また、アンケート調査より、LED誘導マーク等のシステムのない場合と比べて、「歩きやすさ」だけでなく、「心理的負担の軽減」にも効果があることがわかった。【結論】歩行実験から歩行速度にはあまり大きな変化はないが、より直線的に歩行できていることがわかった。このことよりも、誘導性だけでなく、より安全な歩行を支援するという効果が見られた。意識調査より、LED誘導マークの設置間隔5mよりも埋め込み型LEDの設置間隔2mの方が高評価であるが、歩行速度、偏軌距離ではほぼ同程度の結果となっている。このことよりも、5m程度の間隔でも誘導性能は高いことがわかる。
著者
速水 洋
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.48, 2007

<br> 1990年4月より始まった長居公園を歩く、月1回の「白い杖のつどい」が2006年7月で200回を数えた。これは歩行訓練終了者から「見えている人と同じように、のんびりと公園を歩いてみたい」という声が上がったのをきっかけに始まったものだ。<br> 長居公園内の外周道路(マラソンコース:1周2813m)は、前に向かって歩けば、スタート地点に戻って来られるワンルートのコース。しかも、幅10mぐらいのマラソンコース(車道)の両側は、幅3mぐらいの歩道になっていて20cmぐらいの段差があるので、その段差に沿って車道を歩けばコースから外れることはない。歩道には街路樹やベンチ、ゴミ箱等、いろいろなものがあってかえって歩きにくい。その点、マラソンコースなら障害物もないし、公園管理の車がたまに通るだけなので安心して歩ける。「すごいスピードで歩く人」「おしゃべりしながらのんびり歩く人」それぞれの歩き方で楽しんでいる。<br> 午後からは公園内の植物園へ。まず、弁当を食べる。そして、散策。四季折々の草花を楽しみ、小鳥の囀りに耳を傾ける。大きな池もあり、カモやコイに餌をやるのも楽しみの一つ。<br> 3人でスタートしたこの「つどい」が、回を重ねるごとに参加者が増え、70人を越えるときもある。この「つどい」は、決められた日時に決められた場所に集まり、集まった人だけで歩く。事前の連絡は不要で、いつ帰ってもかまわないという気楽なものだ。毎回歩く前に自己紹介するので、初めての参加でも気軽に溶け込めることも長く続いている要因の一つだろう。雨天決行、参加者がいる限り行う。まだ中止は一度もない。<br> 参加者は大阪市内を中心に、堺、熊取、泉大津、箕面、寝屋川、枚方、島本町と多彩で、遠くは神戸や和歌山県の御坊、桃山町、三重県の名張からの参加もあった。<br> この「つどい」に参加して、「歩く喜び」を再発見する人も多い。平日の昼間ということもあり、仕事の都合でなかなか参加できない人も多いが、コースが簡単なので、早朝や休日に歩いている人もいる。また、「つどい」を機にいろいろな交流が広く行われている。<br> 全国各地でこのような「つどい」が、ごく自然に行われ、視覚障害者の「ひとり歩き」が当たり前のこととして受け止められるようにと願っている。今回もその途中経過を報告する。<br><br> ※ 参考文献 「キミちゃんのえがお」
著者
新井 哲也 中野 泰志 小平 英治 草野 勉 大島 研介
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.47, 2007

<br>【目的】<br> ロービジョンの人達の中には、エスカレーターの乗降の際、上りと下りを間違えることがあり、重篤な事故に至るケースもある。中野ら(2006)は、晴眼者、ロービジョン者、高齢者を対象とし、実機を使用した検証実験において、ハンドレールにマークを付すことで、より遠くからエスカレーターの運動方向が判断できることを明らかにした。先行研究で用いられたマークが菱形であったことを受け、本実験では、より効果の大きなハンドレールデザインについて検討した。<br>【方法】<br> 実験参加者は晴眼者10名であり、低視力シミュレーター(Nakano et al., 2006)を用いて各々の視力を段階的に変化させた(視力条件;0.04、0.02、0.015)。マークの種類について、背景色を青、マークの色を黄に固定した上で、a)マークの形状(菱形・矢印)、b)マーク間の間隔(広い・狭い)、c)広告とマークの間隔(狭い・中間・広い・広告のみ・広告なし)の3要因を選出し、それらの組み合わせのうち7種類を検証対象とした。参加者の課題は、回転するベルトを観察し、上下いずれかの運動方向をできる限り素早く正確に判断してキー押しで答えることであった。<br>【結果】<br> 正答率と反応時間を分析の対象とした。その結果、「広告のみ」および「矢印」のマーク条件では正答率が低く、反応時間は長かった。また、マークの間隔については「狭い」条件で、広告とマークの間隔については「広い」条件で高い正答率と短い反応時間を示した。以上の傾向は低視力の条件ほど顕著であった。<br>【結論】<br> 矢印や広告のみでは運動方向の判断に及ぼす効果は小さく、本実験で用いた菱形のように十分な面積をもったマークを付すことが有効である。また、マークの間隔は狭い方が良く、広告を挿入する場合には、できるだけマークと広告との間隔を広げる工夫が必要である。
著者
新阜 義弘 森 一成
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.40, 2005

未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災から10年を目前に控えた平成16年12月4日、震災メモリアルイベント『視覚障害被災者の10年』が神戸で開催されました。当日は大変寒い中にも関わらず中央区の中華会館東亜ホールには、当時被災された視覚障害者をはじめ、救援活動に従事されたボランティアや関係団体の方々が会場一杯に詰めかけていただきました。この集いでは、被災された視覚障害者の方々のほんとうに生々しい体験を聞くことができました。また、大混乱の中で視覚障害被災者支援対策本部(ハビー)を立ち上げ、厳寒の中で視覚障害者の救援活動に従事された川越氏の基調講演、「視覚障害被災者1000人アンケート」に取り組まれた神戸視力障害センターの久保氏による基調報告、そして、「語り継ごう、震災体験」をテーマに熱く語られたパネルディスカッション。改めて、地震の恐ろしさと肉親を失った悲しみ、困難を極めた救援活動の様子が語られるとともに、貴重な教訓や数々の提言が明らかにされました。これからも起こるであろう地震をはじめとする自然災害に対して、視覚障害者のセルフディフェンスや救援活動、復興支援のあり方に一石を投じたものとして、多くの視覚障害者の皆さんや関連団体、ボランティアの皆さん、また行政関係各位に考えていただけますことを心より念願いたします。