著者
緒方 昭子 井手口 範男 外村 昌子 蓮池 光人
出版者
一般社団法人 日本統合医療学会
雑誌
日本統合医療学会誌 (ISSN:24355372)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.40-46, 2020-05-20 (Released:2021-05-20)
参考文献数
21

近年増加した腹腔鏡手術に対する安楽ケアとしてソフトマッサージの効果ならびに研究方法の検証をするために、消化器がん患者を対象にマッサージ前後の変化についてランダム化比較試験 (RCT) を実施した。男性10名、女性3名 (平均年齢62歳) の対象者の協力が得られた。その結果、体温・脈拍・血圧に有意差はみられなかったが、マッサージ群のKOKOROスケールの 「不安な気分から安心な気分」 は対照群と比較して有意に改善していた。マッサージ後のインタビューから、 「マッサージしているときに痛みがない」 などの発言が得られた。これらのことから、測定値の顕著な変化は得られなかったが、ソフトマッサージは心理的安定に寄与することが考えられる。臨床看護においてRCTの実施はさまざまな困難を伴うため、対象者個別のデータを活用する代替的な研究方法を模索する必要性が示唆された。
著者
中野 泰志 大河内 直之 布川 清彦 井手口 範男 金沢 真理
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67, 2005

<BR>目的:<BR>マンホール(manhole)とは、掃除や点検等のために、人の出入りができるように作られた穴のことである。下水道用マンホールは雨水や汚水の排除を目的として設けられるため、いったん人が中に転落すると、人命にかかわる事故となる場合がある。本研究では、視覚障害者のマンホール転落事故事例の分析を行い、原因と対策について検討を行った。<BR>方法:<BR>事故に遭遇した視覚障害者1名に対して、事故直後に面接法によるヒアリングと実地検証を、また、怪我の完治後、精神的に落ち着いた時点でヒアリング調査を実施した。実地検証は、事故当時現場にいた関係者(被害者、作業員3名、現場監督1名)と面接者、記録者の7名により、事故現場で行った。ヒアリングと実地検証の場面は、全員に了解をとった上で、VTR、ICレコーダー、デジタルカメラで記録した。また、測地にはメジャーとハンディ型レーザー距離計(Leica製DISTOclassic5)を用いた。<BR>結果・考察:<BR>ヒアリングの記録と測地データを対象として分析を行った。被害者は日常的に単独歩行を行っている30歳代の全盲男性(先天性緑内障による視覚障害で、4歳のときに網膜剥離を起こして光覚になり、11歳のときに光も失い全盲になった)で、事故は通い慣れた通勤路で起こった。白杖を利用して歩道を歩いてる最中、蓋のあいているマンホールに気づかず、左足より落ち込み、深さ約70cmのマンホールに転落し、左大腿外側擦過傷を負った。分析の結果、あけたままのマンホール(開口部)に、注意喚起を促す人員も配置せず、マンホール周囲にも囲いを設置していなかったことがわかった。これらは「マンホールふたの施工要領」で注意喚起されている事項であり、工事実施者のヒューマンエラーであることがわかった。転落事故は命にかかわる大事故につながりかねないため、今後、ヒューマンエラーが起こったときの二重三重の安全対策を同時に講じる必要がある。
著者
布川 清彦 伊福 部達 井野 秀一 中邑 賢龍 井手口 範男 大河内 直之
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全盲者の白杖利用を対象として対象認知のために必要となる感覚情報を特定し,感覚情報と機器の身体化との関係を明らかにするために,マグニチュード推定法を用いて,利き手で握った白杖を用いた場合のゴムの硬度と硬さ感覚の関係を実験的に明らかにした.これにより白杖ユーザの移動支援のために,1)触覚と聴覚というマルチモーダルな情報提供を行う道具としての白杖に関する基礎的知見と,2)それに対応する環境側のデザインを考察するための手がかりが得られた.