著者
鈴木 琢也 小口 和代
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.24, pp.P032, 2008

【目的】近年,脳卒中患者の歩行の獲得に部分免荷トレッドミル歩行訓練(以下,BWSTT)が注目されている.しかし,BWSTT後の即時効果の報告は少ない.療養病床入院リハ中の発症後5ヶ月の重度脳卒中患者にBWSTTを施行し,訓練前後の歩行速度・歩行率・股関節伸展角度を検討した.<BR>【症例】64歳男性.脳底動脈閉塞による脳梗塞.Brunnstrom recovery stage test右上肢2・下肢2・手指2,左上肢5・下肢6・手指6.深部覚右上下肢重度鈍麻.FIM運動32点・認知30点・合計62点.<BR>【方法】BWSTTは懸荷モード12m/分で25m歩行を,5分間の休憩を挟んで2回実施した.実施前・直後・2日後に,5m平地歩行(左サイドケイン・右長下肢装具を使用し軽介助)を家庭用ハイビジョンデジタルビデオカメラ(Canon社製)で撮影した.計測の妥当性を検討するため,直後のみ三次元動作解析システムKinemaTracer(キッセイコムテック社製)で同時撮影した.歩行路の中央5歩分の右下肢イニシャルコンタクト時の左股関節伸展角度を検討した.マーカーをつけた腸骨稜と大転子の軸と大転子と膝関節外側上顆の軸で角度を計測した.統計学的処理にはANOVA(有意水準5%)を用いた.<BR>【結果】歩行速度は実施直前5.2m/分,直後5.3m/分,2日後6.5m/分.歩行率は実施前18.6歩/分,直後26.3歩/分,2日後27.4歩/分.股関節伸展角度は,実施前平均-3.6°,直後平均10.8°,2日後平均-3.8°で,直後に有意に増加していた(p<0.05).動作解析システムでの計測値でもほぼ同値であった.<BR>【考察】BWSTTについて寺西らは,膝折れや膝過伸展,股関節伸展不十分などによる歩行異常・不能症例に対して課題指向的歩行訓練実現を可能にすると述べている.多くの先行研究では,効果として歩行速度・歩行率増加が報告されている.本症例でも歩行速度・歩行率増加の効果は,2日後でも持続していた.一方で股関節伸展効果は即時的でキャリーオーバーしなかった.股関節伸展が増大した要因は,懸垂により体幹伸展を促せたことと,トレッドミルにより左下肢の踵からつま先へ重心移動がスムーズに行えたことが考えられた.以上よりBWSTTはアライメントへの効果より歩行周期への効果の方が持続的であることが推測された.<BR>【まとめ】重度脳卒中患者にBWSTTを施行し訓練効果を検討した.アライメントと歩行周期への効果を認め,後者はより持続的であった.動作解析装置のない環境でも,今回のように簡易な歩行評価項目なら,家庭用ビデオ撮影で十分検討が可能である.今後さらに慢性期・重度脳卒中症例にBWSTTを適用し,効果発現機序について検討したい.<BR>

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