14 0 0 0 OA 摂食嚥下障害

著者
小口 和代
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.358-362, 2017-05-18 (Released:2017-07-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

摂食嚥下障害は生命維持に直結する障害である.65歳以上人口あたりの肺炎死は,男性は女性の約1.7倍,食物による気道閉塞死は約1.3倍であり,摂食嚥下障害関連死のリスクは性差がある.男性では喉頭位置低下,最大舌圧低下が女性より若い時期から起きており,嚥下機能の予備能が女性より低い.壮年期から摂食嚥下障害の予防・啓発が必要である.当科で関わった誤嚥性肺炎の性別・年代別の退院時経口摂取獲得率に差はなかった.超高齢者においても個々にリハビリテーション適応を判断すべきである.また,高齢者の食生活の問題点として,買い物の問題を挙げるのはより女性に多かった.IADL低下に対する社会的な食生活支援は,超高齢社会の重要な課題である.
著者
星野 高志 小口 和代 伊藤 正典 小笠原 沙映 田中 元規 松田 華加
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.22005, (Released:2022-08-17)
参考文献数
38

目的:回復期リハビリテーション病棟入院中の片麻痺患者における病棟内杖歩行自立の客観的判定基準を,決定木分析を用いて明らかにする.方法:対象は3年間の脳卒中片麻痺患者のうち,退院時の杖歩行が監視以上の者とし,病棟内杖歩行自立群と非自立群に分けた.評価項目はSIAS下肢運動合計(SIAS-LE),Trunk Control Test(TCT),Berg Balance Scale(BBS),10 m歩行速度(m/s),入院時FIM認知合計(FIM-C)とし,自立群は歩行自立時,非自立群は退院時の評価を用いた.さらに歩行自立後の転倒状況も調査した.統計分析は単変量解析および決定木分析を行った.結果:自立群101名(平均68±13歳),非自立群47名(平均79±12歳)で,歩行速度,TCT,BBS,FIM-Cに有意差を認めた.決定木分析では歩行速度,FIM-C,BBSの順に選択され,①歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C ≧ 22点(自立者割合97%/転倒者割合5%),②歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C<22点,BBS ≧ 50点(100%/0%),③歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C<22点,BBS<50点(52%/8%),④歩行<0.42 m/s,BBS ≧ 28点(49%/28%),⑤歩行<0.42 m/s,BBS<28点(0%/0%)に分けられた.転倒者割合は全体で8.9%,うち④が最も高かった.結論:歩行自立には歩行速度,FIM-C,BBSの順に関与し,各基準値が明らかになった.歩行速度の低い者は易転倒傾向であり,特に慎重な自立判断が求められる.
著者
星野 高志 小口 和代 大高 恵莉 木戸 哲平 田中 元規 早川 淳子 佐藤 浩二 後藤 進一郎
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.432-439, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
23

【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期)における移乗・トイレ・歩行の自立判定と,自立後の転倒を調査した。【方法】対象は回復期の脳損傷者135 名とし,各動作の自立および自立後の転倒状況を調べた。自立は,①療法士が動作評価,②病棟スタッフが実生活で動作観察評価,③医師を含む多職種で判定した。また入棟時FIM,SIAS 運動,BBS を自立後の転倒の有無により比較した。【結果】各自立後の転倒者は,移乗自立77 名中9 名(11.7%),トイレ自立70 名中3 名(4.3%),歩行自立60 名中8 名(13.3%)だった。転倒者の入棟時の機能は,移乗ではFIM 運動,SIAS 運動,BBS,歩行ではBBS が有意に低かった。トイレでは有意差はなかった。【結論】移乗,歩行自立者の約1 割が転倒していた。移乗,歩行自立者のうち運動機能が低い者が転倒していた。今後,客観的指標を含めたさらなる検討が必要である。
著者
小口 和代 才藤 栄一 水野 雅康 馬場 尊 奥井 美枝 鈴木 美保
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.375-382, 2000-06-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
19
被引用文献数
67 117

機能的嚥下障害スクリーニング法として,「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)を考案した.30秒間の平均空嚥下回数は若年者(N=30)で7.4回,高齢者(N=30)で5.9回,30秒間の平均人工唾液嚥下回数は若年者で7.7回,高齢者で6.2回であった.空嚥下,人工唾液嚥下ともに高齢者は若年者より有意に嚥下回数が少なかった.一方,若年者,高齢者それぞれの空嚥下と人工唾液嚥下の嚥下回数には有意差を認めなかった.嚥下運動の確認は喉頭挙上の触診で可能であった.高齢者の積算嚥下時間(検査開始から嚥下完了時点までの時間)上限より,RSST 2回/30秒間以下が嚥下障害のスクリーニング値として設定できた.
著者
小口 和代 才藤 栄一 馬場 尊 楠戸 正子 田中 ともみ 小野木 啓子
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.383-388, 2000-06-18
参考文献数
10
被引用文献数
36

131名の機能的嚥下障害患者の「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)と嚥下ビデオレントゲン造影(videofluorography : VF)所見を比較し,RSSTの妥当性を検討した.RSSTはVF所見と相関が高く,カットオフ値として3回/30秒間が妥当であると思われた.誤嚥の有無の判別に関する感度と特異度は,0.98,0.66と,感度が非常に高かった.摂食・嚥下障害の診断・評価としては,まずRSSTでスクリーニングを行い,3回/30秒間未満の場合はさらに詳細な病歴,身体所見をとり,必要と判断されればVFを行い,治療方針を決定するのが適当である.
著者
小口 和代 才藤 栄一 馬場 尊 楠戸 正子 田中 ともみ 小野木 啓子
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.383-388, 2000-06-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
10
被引用文献数
55 121

131名の機能的嚥下障害患者の「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)と嚥下ビデオレントゲン造影(videofluorography:VF)所見を比較し,RSSTの妥当性を検討した.RSSTはVF所見と相関が高く,カットオフ値として3回/30秒間が妥当であると思われた.誤嚥の有無の判別に関する感度と特異度は,0.98,0.66と,感度が非常に高かった.摂食・嚥下障害の診断・評価としては,まずRSSTでスクリーニングを行い,3回/30秒間未満の場合はさらに詳細な病歴,身体所見をとり,必要と判断されればVFを行い,治療方針を決定するのが適当である.
著者
小口 和代 才藤 栄一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.83-85, 2007-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

わが国における摂食・嚥下リハビリテーシヨンは1990年代になって急速に発展し, 1995年の日本摂食・嚥下リハビリテーション学会設立起より加速された. 会員数は直線的に増加し, 2006年には5,000名を超え, 内訳は, 言語聴覚士, 歯科医師, 看護師, 医師, 栄養士, 歯科衛生士などである.摂食・嚥下障害患者は, 嚥下の問題だけでなく食べること全体の問題を持っており, 種々の場面で, さまざまな職種によるリハビリテーションチームにより対応される. その際チーム全体として学際的なチームワークが求められる. 今後の課題は, 標準的評価尺度の整備とそれを用いての治療効果の証明である.
著者
小口 和代 才藤 栄一 水野 雅康 馬場 尊 奥井 美枝 鈴木 美保
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.375-382, 2000-06-18
被引用文献数
51

機能的嚥下障害スクリーニング法として,「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)を考案した.30秒間の平均空嚥下回数は若年者(N=30)で7.4回,高齢者(N=30)で5.9回,30秒間の平均人工唾液嚥下回数は若年者で7.7回,高齢者で6.2回であった.空嚥下,人工唾液嚥下ともに高齢者は若年者より有意に嚥下回数が少なかった.一方,若年者,高齢者それぞれの空嚥下と人工唾液嚥下の嚥下回数には有意差を認めなかった.嚥下運動の確認は喉頭挙上の触診で可能であった.高齢者の積算嚥下時間(検査開始から嚥下完了時点までの時間)上限より,RSST 2回/30秒間以下が嚥下障害のスクリーニング値として設定できた.
著者
清水 雅裕 小口 和代 後藤 進一郎 太田 有人 渡邉 郁人
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.446-451, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
22

CI療法原法は療法士の時間を集中的に使用するため,実施に限界があった.そこで,時間的コスト軽減を図ったmCI療法(自主練習を併用し,1日3時間2名ペアで実施)を考案し,脳卒中発症後180日以内の回復期症例31名に対して実施した.実施前,実施後,6ヵ月後に評価し,推移を観察したところ,STEF,FMA-UE,MAL-AOUの平均値は,実施後,6ヵ月後共に有意に改善.変化量は,MAL-AOUは実施後にMCIDを上回り,FMA-UEは6ヵ月後にMCIDを上回った.mCI療法はペアの難易度調整が随時可能という利点がある.ペアで実施することにより,対象者間で会話が生まれ,動機づけの向上や心理的な支援につながる可能性が示唆された.
著者
小池 一郎 小口 和代 保田 祥代
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-74, 2015-04-30 (Released:2020-04-24)
参考文献数
10

本症例は,23 歳の男性であった.勤務中,ベルトコンベアに頭部,体幹,左上肢を挟まれ左肩甲骨骨折,左多発肋骨骨折,左血気胸,両側肺挫傷と診断された.受傷1 日目,経口気管内挿管管理にて,保存的加療となった.受傷13 日目,挿管性と考えられる両側声帯麻痺を認めたため,気管切開術を施行し,カフ付側孔なしカニューレの装用を開始した.受傷17 日目,咽頭の唾液貯留や唾液誤嚥を認めたため,カニューレカフ上吸引ラインからの酸素送気による発声と唾液嚥下訓練(以下,送気訓練)を導入した.酸素1 ~ 3 l/min を使用し,喉頭侵入あるいは誤嚥した唾液を送気により吹き上げ,唾液嚥下を繰り返した.受傷34 日目,内視鏡や酸素送気の刺激で唾液分泌が増加し,送気訓練を継続的に実施するのは困難であったため,持続的酸素送気訓練から,間欠的に送気する方法に変更した.受傷42 日目,両側の声帯内転運動の改善と下咽頭から声門部の唾液貯留の減少を確認できたため,スピーチカニューレに変更した.受傷50 日目,スピーチカニューレを抜去した.経過中,送気訓練導入日である受傷17 日目と,スピーチカニューレ抜去日である受傷50 日目に随意的な唾液嚥下を計測した.評価方法は,本症例に「できるだけ何回も繰り返して唾液を飲むこと」を指示して,綿棒で口腔内を湿らせてから計測を行った.結果は,受傷17 日目と受傷50 日目それぞれにおいて送気なしに比し,送気ありでは随意的な唾液嚥下連続10 回実施所要時間の短縮を認めた.本症例は,送気により命令に応じた反復唾液嚥下回数を即時的に向上させ,唾液嚥下を繰り返すことで嚥下関連筋群を強化することができた.また,発声により声帯運動の廃用を最小限に抑えたことで,唾液処理の能力が改善した可能性が考えられた.
著者
鈴木 琢也 小口 和代
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.24, pp.P032, 2008

【目的】近年,脳卒中患者の歩行の獲得に部分免荷トレッドミル歩行訓練(以下,BWSTT)が注目されている.しかし,BWSTT後の即時効果の報告は少ない.療養病床入院リハ中の発症後5ヶ月の重度脳卒中患者にBWSTTを施行し,訓練前後の歩行速度・歩行率・股関節伸展角度を検討した.<BR>【症例】64歳男性.脳底動脈閉塞による脳梗塞.Brunnstrom recovery stage test右上肢2・下肢2・手指2,左上肢5・下肢6・手指6.深部覚右上下肢重度鈍麻.FIM運動32点・認知30点・合計62点.<BR>【方法】BWSTTは懸荷モード12m/分で25m歩行を,5分間の休憩を挟んで2回実施した.実施前・直後・2日後に,5m平地歩行(左サイドケイン・右長下肢装具を使用し軽介助)を家庭用ハイビジョンデジタルビデオカメラ(Canon社製)で撮影した.計測の妥当性を検討するため,直後のみ三次元動作解析システムKinemaTracer(キッセイコムテック社製)で同時撮影した.歩行路の中央5歩分の右下肢イニシャルコンタクト時の左股関節伸展角度を検討した.マーカーをつけた腸骨稜と大転子の軸と大転子と膝関節外側上顆の軸で角度を計測した.統計学的処理にはANOVA(有意水準5%)を用いた.<BR>【結果】歩行速度は実施直前5.2m/分,直後5.3m/分,2日後6.5m/分.歩行率は実施前18.6歩/分,直後26.3歩/分,2日後27.4歩/分.股関節伸展角度は,実施前平均-3.6°,直後平均10.8°,2日後平均-3.8°で,直後に有意に増加していた(p<0.05).動作解析システムでの計測値でもほぼ同値であった.<BR>【考察】BWSTTについて寺西らは,膝折れや膝過伸展,股関節伸展不十分などによる歩行異常・不能症例に対して課題指向的歩行訓練実現を可能にすると述べている.多くの先行研究では,効果として歩行速度・歩行率増加が報告されている.本症例でも歩行速度・歩行率増加の効果は,2日後でも持続していた.一方で股関節伸展効果は即時的でキャリーオーバーしなかった.股関節伸展が増大した要因は,懸垂により体幹伸展を促せたことと,トレッドミルにより左下肢の踵からつま先へ重心移動がスムーズに行えたことが考えられた.以上よりBWSTTはアライメントへの効果より歩行周期への効果の方が持続的であることが推測された.<BR>【まとめ】重度脳卒中患者にBWSTTを施行し訓練効果を検討した.アライメントと歩行周期への効果を認め,後者はより持続的であった.動作解析装置のない環境でも,今回のように簡易な歩行評価項目なら,家庭用ビデオ撮影で十分検討が可能である.今後さらに慢性期・重度脳卒中症例にBWSTTを適用し,効果発現機序について検討したい.<BR>
著者
杉浦 太紀 小口 和代 後藤 進一郎 河野 純子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1117-1120, 2019-11-10

要旨 【目的】ADL維持向上等体制加算病棟(以下,ADL病棟)におけるリハビリテーション介入の標準化を検討する.【対象】2017年8〜10月に刈谷豊田総合病院(以下,当院)のADL病棟3病棟に入院した641例とした.【方法】専従療法士の介入種類を入院時Barthel Index(BI),年齢,入院前日常生活動作(activities of daily living;ADL)により,評価群,指導群,療法群の3群に分類するアルゴリズムを作成した.評価群はBI 65点以上かつ年齢75歳未満の患者,指導群はBI 65点以上かつ年齢75歳以上の患者とBI 30点以上60点以下の患者,療法群はBI 25点以下の患者とした.BI 25点以下の患者で,入院前と比べADLの低下がない場合は指導群とした.アルゴリズムによる分類と療法士の主観的判断を比較した.【結果】療法士介入アルゴリズムによる3群の構成割合は,評価群338例(52.7%),指導群261例(40.7%),療法群42例(6.6%)だった.アルゴリズムと療法士の判断に相違があった患者は641例中54例であり,全体の8.4%であった.【考察】アルゴリズムの使用は,専従療法士間の介入判断の差を減少させ,専従療法士のリハビリテーション介入基準を一定に保つと考えた.