著者
永塚 規衣 河村 フジ子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.11, 2003

【目的】煮こごりは日本の伝統的な寄せ物料理であり、煮汁中に種々の成分が溶出する為、栄養的にも優れていると考えられる。本研究では、今までのゼラチンの基礎的研究を土台として、特に煮汁に溶出したコラーゲンの可溶化と調味料との関係に注目し、各種調製条件の違いが煮こごりの物性に及ぼす影響について検討した。<BR>【方法】材料は牛肉、豚肉、鶏肉を用いた。それぞれ約1cm角切り50gに6割の水(30ml)を加えて600Wの電熱器で加熱、沸騰後の火加減を300Wに調節して、10_から_120分の定時間加熱した。加熱終了後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した。各試料ゾルの透過色、pH、動的粘弾性、NMRの測定を行った。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保存してゲル化させ、破断特性を比較した。上記材料のうち、鍋物調理に一般的な鶏肉を取り上げ、調味料添加の影響を検討した。砂糖、醤油、酢など調味料は内割りで煮汁の10%添加し、測定方法は上記と同様に行った。<BR>【結果】煮こごりの材料によりゲル化の状況に違いが見られ、特に牛肉は煮こごりゲルを形成しにくかった。煮こごりの滑らかな口当たりは、肉基質たんぱく質であるコラーゲンが分解して得られたゼラチンのゲル化強度によるところが大きいといわれていることから、各種材料(牛肉、豚肉、鶏肉)のたんぱく質中のコラーゲンの結合の仕方が異なると推測される。また、鶏肉の加熱実験においては部位による煮こごりのゲル形成に差が見られた。さらに、調味料を加熱初期から添加した場合と加熱途中で添加した場合との間でも煮こごりの物性が異なることが明らかとなった。

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