- 著者
-
小田 匡保
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.63, 2005
_I_.はじめに 発表者の所属する駒澤大学文学部地理学科では、2004年度に学科創立75周年を迎え、2005年2月に記念式典や記念誌の発行を行なった。本発表は、この経験をもとに、地理学科の歴史を記念することについて若干の考察を試みるものである。 「記念」や「記憶」については、近年、地理学でも議論が行なわれている。その場合、記念物や特定の場所など具体的な景観が議論の対象とされることが多いが、本発表はそれらとは文脈を異にする(実際のところ、記念の施設を作ってはいない)。 日本の地理学界では、学会組織の創立何周年、あるいは教員の退職に際して記念事業がしばしば見られるが、これらと並んで地理学教室の創立何周年というタイプがある。このような記念行事も、地理学界の出来事である以上、地理学の研究対象となしえよう。本発表では、地理学科創立記念事業を、地理学科の結束を固めるのに貢献したとか、記念誌の発行によって「歴史」を作ったというような結論には持っていかず、記念事業遂行の実際的な面から考察してみたい。_II_.駒澤大学地理学科の歴史 駒澤大学地理学科の淵源は、1929年(昭和4)、駒澤大学専門部に歴史地理科が設置されたことにさかのぼる。1949年には、新制駒澤大学文学部に地理歴史学科地理学専攻・歴史学専攻が設置され、1967年、地理歴史学科は地理学科と歴史学科に分離した。2001年には、地理学科に地域文化研究専攻と地域環境研究専攻を設けている。なお、1966年には、大学院地理学専攻(修士課程・博士課程)も設置されている。_III_.創立75周年記念事業の内容と経緯 地理学科創立75周年記念事業の内容は、記念誌の発行と、記念式典・記念講演会、祝賀懇親会である。記念誌は、「地理学科75年の歩み」、「地理学科の記録」、「地理学科に関する資料」、「思い出の記」の4章から成り、付録として写真集や卒論題目などを収めたCD-ROMを付けている。 2002年に地理学科75周年記念事業委員会を設置し、まず、記念誌に掲載する「思い出の記」の原稿を2003年12月締切で募集した。2004年5月には記念事業の大要を公表し、記念式典・懇親会参加、記念誌購入の受付を開始した(7月締切)。記念式典は2005年2月19日駒澤大学で行なわれ、それに引き続いて中村和郎教授の記念講演会、また同日夕方に渋谷のホテルで祝賀懇親会を行なった。記念誌は、これに間に合うように刊行された。_IV_.若干の考察 資金面から考察すると、収入の約半分が参加費であり、残りの約半分が大学からの補助金である。一方、支出においては、半分近くが祝賀懇親会費で、次に多いのが記念誌発行費である。懇親会参加費・記念誌購入費だけでは不十分であり、大学からの補助金を得られたことが、この記念事業の遂行にとって大きな手助けとなっている。 次に、75周年記念事業に関わる人について考察すると、活動の中心となったのは地理学科専任教員(特に駒澤大学出身者)であり、一方、卒業生は記念式典・懇親会への参加、記念誌の購入、記念誌の原稿執筆という形で関与した。卒業生の参加者数を年代別に見ると、卒業者数の少ない1960年代卒業の参加者数が最も多い。時間的余裕の問題もあろうが、地理学科卒業後、教職など地理学に関わる職業に就いていることが、地理学科の記念事業への参加を促す一因となっているとも考えられる。