- 著者
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山下 博樹
藤井 正
伊藤 悟
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.125, 2005
1.はじめに 成熟時代を迎えた欧米をはじめとする多くの先進諸国では、20世紀に拡散・肥大化した都市地域をいかに持続可能なかたちに再構成するかが、都市政策の主要テーマのひとつとなりつつある。オーストラリア第2の都市であるメルボルンでもその都市圏の市街地は拡大の一途をたどり、住居・商業施設などの郊外化が進展した。しかし、そのような状況の中、メルボルンが位置するビクトリア州政府は都市圏の無秩序で拡散的な拡大を防ぐために、1970年代より郊外核となるアクティビティ・センターと都心の一体的な整備・開発を行ってきた。本報告では、地域住民の日常的な生活行動と関わりの深いショッピングセンターの立地動向より、メルボルン都市圏の地域構造の一端を明らかにする。さらに、アクティビティ・センター開発の特徴について述べる。2.ショッピングセンターの立地展開 メルボルン都市圏の人口336.7万人(2001年センサス)は、メルボルン市を中心にやや東に偏って分布している。その結果、主要なショッピングセンターの立地もそれに類似した傾向を示している。都市圏内に立地するショッピングセンターは、156カ所でその総売場面積は約255万_m2_である。メルボルン都心部に立地するのは10カ所、約13万_m2_に過ぎず、商業施設立地の郊外化が顕著である。売場面積が8.5万_m2_を超えるスーパーリージョナル型は4カ所、5万_から_8.5万_m2_のメジャーリージョナル型は12カ所となっている。ショッピングセンターの立地は、1970年代以後急速に進められたが、90年代後半よりその新規立地は減少傾向にある。3.アクティビティ・センターの開発 アクティビティ・センターの開発構想は、1970年代にさかのぼる。アクティビティ・センター開発の目的は、鉄道などの公共交通利用を基本とした、小売、サービス、オフィスなどの土地利用のミックス化と就業空間の形成である。その背景には公共交通利用の促進や職住接近などによる持続可能性の高いまちづくりがある。アクティビティ・センター開発の基本的な特徴は次のようにまとめられる。_丸1_アクティビティ・センターの開発は基本的には州が基本方針を立て、各自治体がそれを実行している。_丸2_その財源の確保は、基本的にはケースバイケースである。_丸3_郊外間を結ぶ公共交通は、アクティビティ・センター間をバスで結ぶ形で整備を進めている。_丸4_新規のショッピングセンターの開発は、ゾーニングにより基本的にはアクティビティ・センターへ誘導される。アクティビティ・センター以外へのショッピングセンターの開発などは、各自治体が調整を行っている。_丸5_郊外型の大規模ショッピングセンターもバスなどのアクセスを増やし、公共交通体系の中に位置づけている。 本研究を行うに際し、平成16_から_17年度科学研究費補助金基盤研究(C)(1)「成熟時代における都市圏構造の再編とリバブル・シティの空間構造に関する地理学的研究」(研究代表者:山下博樹)の一部を使用した。メルボルン都市圏における主要シヨッピングセンターの立地 1:メルボルン都心部 2:スーパーリージョナル型(売場面積8.5万_m2_以上)3:メジャーリージョナル型( 〃 5万_から_8.5万_m2_)4:リージョナル型( 〃 3万_から_5万_m2_) 資料:『Shopping Centre Directory Victoria & Tasmania (PROPERTY COUNCIL OF AUSTRALIA 刊)』より作成