著者
武田 祐子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.222, 2004

<b>1.背景と研究目的</b><br><br> GISユーザー層の社会的な増加に伴い、空間データクリアリングハウスには、一次データのみならず、様々なデジタル・マップを整備し公開する役割が期待される。本研究は、センサス統計を利用したデジタル・アトラスを作成し、WEBコンテンツとして公開することを目的とする。<br><br>これまで作成されたデジタルアトラスでは、3大都市圏を対象とした社会地図がWEB上で公開された例があるが、ここでは、WEBマップとして視覚的なインパクトを与えることに成功した(矢野・武田、2001)。本研究では、これにならい、「女性」に関するデジタル・アトラスを作成する。<br><br><b>2.利用データと方法</b><br><br> 利用した統計は、平成12年の国勢調査の都道府県別集計の第1_から_3次集計である。ここでは、関東地方1都3県を対象に、空間単位は、市区町村ベースとした。女性に関する指標として、未婚率、学歴、親との同居の有無、職業・産業別従事者比率、母子家庭率、保育園・幼稚園の児童数を取り上げ、これらの主題図を作成した。それぞれに関して、どのような地域においてどの程度の男女差が生じているのか、その傾向を明らかにする。また、年齢階級別の比較が可能な変数の場合、年齢別に生じる差異も検討していく。<br><br><b>3 ジェンダー・マップ</b><br><br>本アトラスでは、1)未婚率、2)単独世帯率、3)パラサイトシングル率、4)学歴、 5)女性労働力比率、6)パートタイム比率、7)専業主婦比率、8)失業率、 9)職業別人口比率、10)産業別人口比率、11)母子家庭比率、12)保育園・幼稚園児童率、についてのセンサス・マップを作成した。<br><br><br>以下では、このうち、23区内での30代前半の男女の未婚率をとりあげ比較していく。女性では大半の区で30%以上となるが、とりわけ、杉並、中野、目黒、渋谷の各区では50%を越え、地区による未婚率の高低が明瞭で分布に偏りがみられる。一方男性は、おおよそ50%以上となる。とりわけ高い60%以上を示すエリアは、女性と同じ区以外にも、千代田、新宿、豊島、台東と都心部を含む範囲に広がり、かつその地域差は小さい(図1)。女性の就業地は、先の未婚率の顕著な区とは必ずしも一致しないことから、職住近接志向の男性に対し、女性は居住環境に強いこだわりをもって特定の区に集中していることが推測される。<br><br><b>4.まとめ</b><br><br><br>本研究では、関東1都3県を対象としたジェンダー・アトラスを作成し、WEB上のコンテンツとして公開した。未婚率を論ずる場合でも、分布の男女差を説明するためには、複数の地理的な指標を考慮することが必要となる。このため、WEBアトラスとは、地理的な視点の重要性を非GISユーザーに対して発信できる貴重な第一歩といえるのではないか。<br><b><br>謝 辞</b><br><br><br>本研究は、文部省科研費基盤研究B(1)(課題番号(14380026)、研究代表者、由井義道「女性の就業と生活からみた都市空間のジェンダー化に関する研究」)の一部を使用した。その成果は、http://www.sci.metro-u.ac.jp/geog/gis/Gatlas/にて公表予定である。<br><b>文 献</b><br><br><br>矢野桂司・武田祐子、2001、GISによる全国デジタル・メッシュ社会地図、京都地域研究15、264-286.</br><br><br>

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