著者
木本 浩一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.100043, 2011

中国に次ぐ経済発展によって注目されるインドではあるが、ホットスポットや生物多様性など環境面での懸念や、人口圧力や人権、地域間格差など多くの複雑に絡み合う構造的な諸問題を抱えていることは言うまでもない。 これら諸問題を検討する際に、個々の諸問題や要因を単に「その関連においてみる」ということではなく、それらを「地域的文脈においてみる」ということの重要性を強調したい。例えば、近年注目されつつある経済特区(SEZ)の場合でもその経済効果や影響という側面のみならず、多層的な地域的文脈のなかに位置づけて検討することが可能である。ここで言う「地域的文脈」とは、多様なスケールによって構成されるという(客観的な)側面と、「行為者にとっての地域」が(主観的に)構成されるという側面、という両面によってなる方法的枠組みのことである。その際、抽象的に構成される(と考えられる)「地域的文脈」が具体的「地域」に投錨する形で具体的な土地に関するコンフリクトが生じる。 以上を踏まえ、本研究では、インドにおける土地利用をめぐる正当性と合法性の相克について、いくつかの事例を取り上げながら検討してみたい。 もちろん、正当性の根拠としての合法性という観点からすれば、「相克」は次元を無視した問題設定であるかもしれないが、法的根拠に基づいた各アクターの行為が地域的文脈のなかで衝突しているという現実からすれば、合法性によらない秩序はいかにして可能かという課題に直面することになる。このことは同時に、「方法としての土地利用」という観点の可能性を示唆することにもなる。 本研究で取り上げる事例は、以下のとおりである。1)高規格高速道路建設の事例(図1)、2)都市郊外における反都市化の事例、3)「違法」建築物撤去問題、4)指定部族(ST)に対する再定住集落に関わる問題、などである。いずれもカルナータカ州(南インド)南部の事例である。

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