著者
原科 幸彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.39, 2010

1.環境計画・政策への参加環境市民とは何か。市民とは公共的な立場で考え行動のできる人のことで、住民に対置されるものである。環境計画への参加には、計画策定への参加と計画実行への参加があるが、環境市民活動は往々にして後者の参加ととらえられている。特に我が国では、計画や政策の意思決定過程への参加が極めて限られていたが、計画・政策をどう作るかが最も重要である1) 効果的な計画・政策ができてこそ、それらの実行段階での参加が意味をもつ。廃棄物処理における焼却主義は、十分な検討がなされたかに大きな疑問がある。温室効果ガスの削減に原子力発電が有効とされるが、燃料や廃棄物処理の持続可能性を考えると本当に推進して良いのか。この政策決定に国民参加はほとんどない。また、従来、不合理な計画の提案がなされた例も多い。例えば、2005年愛知万博では当初計画に重大な問題があった。だが、計画段階でのアセスメントにより良い計画に変えられた。事業仕分けをより丁寧に行うには、評価過程の透明化のため、アセスが必要。2.参加の保証の制度設計2)我が国の参加の黎明期には、参加の障害を除くことが求められたので「参加の保障」と称したが、今は次の段階、参加を確かなものにする「参加の保証」の時代に。市民参加の5段階モデル1.情報提供 (Informing)2.意見聴取 (Hearing)3.形だけの応答 (Formal Reply Only)4.意味ある応答 (Meaningful Reply)5.パートナーシップ (Partnership)参加の保証のためには、レベル4の意味ある応答の参加を実現する条件を与えることが必要。そこで、フォーラム、アリーナ、コートという枠組みで捉える 公共空間での議論計画の策定段階における参加と、実行段階における参加、オーフス条約で提示された環境政策に国民が関与するための3つの条件 フォーラム(情報交流の場) 情報へのアクセス アリーナ (合意形成の場) 意思決定における参加 コート (異議申立ての場)訴訟へのアクセス 3.オーフス条約の3条件(1)環境情報へのアクセス2001年に情報公開法が施行されたが、かえって情報が出にくくなった。情報を早期に廃棄する例も。アメリカの情報自由法:情報提供あるいは裁量的公開の推進、会議情報の公開。重要な政策の選択は審議会などで議論:議事録は発言順に発言者名を公表すべき。(2)意思決定における参加レベ4「意味ある応答」の参加の実現、公共空間での議論が不可欠、計画の策定から実行までの参加を。事業段階からの参加では遅すぎる。戦略的な意思決定段階での参加が、戦略的環境アセスメント(SEA)。(3)訴訟制度へのアクセス訴訟制度へのアクセスが必須。行政手続法で説明責任を義務付けることが必要。政府の決定への国民関与は1993年の行政手続法の制定時にも議論。当時は時期尚早とされたが、時代は変わった。 行政事件訴訟法の改正社会システム構築のチェック機構として、公益性の観点から争えるようにする。2004年6月の行政事件訴訟法の改正により原告適格の範囲が拡大。法廷で争えれば、参加の結果が意思決定に反映される可能性は高まる。例えば、米国連邦政府レベルのアセス制度(NEPAアセス)は訴訟制度との連動により改善された。社会システムの(ソフト)インフラ整備が不可欠。

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