著者
秋山 貴 大迫 政浩 松井 康弘 原科 幸彦
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.121-130, 2004-03-31
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

産業廃棄物処理施設は忌避施設と見なされ, その設置をめぐる紛争が多発している。このような特性を有する施設が偏在することは, 環境保護と社会正義の同時達成を目指す「環境的公正」の概念に照らして問題であるとの仮説を基に, 本稿ではその空間的偏在性について定量的に検討した。同時に, 昨今大きな社会問題になっている産業廃棄物の不法投棄についても検討した。分析対象は関東とその周辺の1都8県の最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄とし, それらを市町村ごとに集計してその立地や発生の傾向を調べた。分析の結果, 最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄のすべてにおいて正の空間的自己相関が存在し, これらが市町村単位で見たとき偏在性があることがわかった。さらに, 最終処分場立地点と不法投棄発生点には空間的分布において類似性が認められることから, 問題構造に共通性が存在する可能性があることが示された。
著者
森下 英治 原科 幸彦
出版者
Geographic Information Systems Association
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.131-139, 1994-03-31 (Released:2009-05-29)
参考文献数
5

This study aims to evaluate the accessibility to the natural environments of residential environment evaluation in Utsunomiya City. For the purpose, the evaluation functions which use multiple regression analy-sis with residents'evacuation of accessibility as the criterion variable and the traveling time to the destinations as explanatory variables were developed using GIS.As the result, compared with the case which the air distance was used as explanatory variables, the coefficient of determination becomes more than two times. And this result shows that traveling time is an effective factor and GIS is useful tool for this kinds of study.
著者
原科 幸彦 田中 充 内藤 正明
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.85-98, 1990-04-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
7
被引用文献数
5

環境の快適さの評価は住民の主観によるところが大きく,環境基準というような一律の尺度で行うことはできない。また,快適さの状態も従来の公害項目のように機器計測により把握することは困難である。そこで本研究では,これまでの環境指標の考え方を一歩進め,環境の快適性を人々の目や耳などの五感でとらえ「計量化」することを考えた。すなわち,住民自らが環境を観察してその結果にもとづき評価できる環境観察指標の開発を試みた。 このため,川崎市において小学校5年生の児童とその保護者を対象に環境観察調査を実施し,市内全小学校111校から約3800票が得られた。この調査では,児童に対しては自然観察を,保護者に対しては都市環境の快適面の5つの側面についての観察と評価を行ってもらった。この調査結果の分析から以下の諸点が明らかとなった。 自然環境の観察結果からは,セミ,カブトムシ,ヘビなど特定の生きものの発見率と快適環境評価との間に強い関連のあることがわかった。また環境の快適さの観察と評価からは,機器による計測にはなじまない「街の落ち着きやたたずまい」と「緑のゆたかさ」の2つが住民観察による有力な指標となりうることが示された。これら2つは快適性の総合評価に,特に強く寄与していることも明らかとなった。そして,従来から機器計測が行われてきた大気汚染と騒音も,「空気のきれいさ」と「静かさ」という観察によりかなり適切に把握できることが明らかとなった。さらに,生活環境を安全,健康,利便,快適,地域個性,人間関係の6項目で総合的に評価した場合,快適面は最も高い寄与を示すことが明らかになり,都市環境評価における快適性の重要性が確認された。
著者
原科 幸彦 小野間 史敏
出版者
JAPAN SECTION OF THE REGIONAL SCIENCE ASSOCIATION INTERNATIONAL
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.199-220, 1989-12-30 (Released:2008-10-10)
参考文献数
9

Environmental disputes often arise in the process of planning such public facilities as highways, airports, incineration plants or wastewater treatment plants. Especially in the case of incineration plants, many residents are afraid that their environment would be damaged by smoke and offensive smell from them.We surveyed nine incineration plants among thirteen plants in the twenty-three wards of Tokyo and interviewed some residents living around them. From this survey, it was considerd that the recent incineration plants seemed to give less damage on the environment than that of the old ones in terms of smoke, offensive smell and waste water from them. But some people still have bad images against it. The causes of an environmental dispute like this supposed to be closely related to citizens' images or consciousness on incineration plants.The purpose of this paper is to find out the factors which affect citizens' consciousness on incineration plants. we, therefore, conducted interview surveys of both the related staff to this problem in the Tokyo Metropolitan Government and the members of the opposing citizens' group against the construction. We conducted questionaire sheet surveys in the areas of the two plants, Adachi and Katsushika, based on these interviews.From the analysis of the data collected in case studies, the following three were concluded. (1) Garvage carts have more influences on forming citizens' consciousness than the operation of the incineration facilities. (2) There are two factors which affect on the change of the citizens' attitudes towards the plants. The one is the image of incineration plants held by the citizens' before the disputes and the other is their experiences through participation in the movement against the construction. (3) The citizens' experienced the dispute would have much better images than before.
著者
原科 幸彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.39, 2010

1.環境計画・政策への参加環境市民とは何か。市民とは公共的な立場で考え行動のできる人のことで、住民に対置されるものである。環境計画への参加には、計画策定への参加と計画実行への参加があるが、環境市民活動は往々にして後者の参加ととらえられている。特に我が国では、計画や政策の意思決定過程への参加が極めて限られていたが、計画・政策をどう作るかが最も重要である1) 効果的な計画・政策ができてこそ、それらの実行段階での参加が意味をもつ。廃棄物処理における焼却主義は、十分な検討がなされたかに大きな疑問がある。温室効果ガスの削減に原子力発電が有効とされるが、燃料や廃棄物処理の持続可能性を考えると本当に推進して良いのか。この政策決定に国民参加はほとんどない。また、従来、不合理な計画の提案がなされた例も多い。例えば、2005年愛知万博では当初計画に重大な問題があった。だが、計画段階でのアセスメントにより良い計画に変えられた。事業仕分けをより丁寧に行うには、評価過程の透明化のため、アセスが必要。2.参加の保証の制度設計2)我が国の参加の黎明期には、参加の障害を除くことが求められたので「参加の保障」と称したが、今は次の段階、参加を確かなものにする「参加の保証」の時代に。市民参加の5段階モデル1.情報提供 (Informing)2.意見聴取 (Hearing)3.形だけの応答 (Formal Reply Only)4.意味ある応答 (Meaningful Reply)5.パートナーシップ (Partnership)参加の保証のためには、レベル4の意味ある応答の参加を実現する条件を与えることが必要。そこで、フォーラム、アリーナ、コートという枠組みで捉える 公共空間での議論計画の策定段階における参加と、実行段階における参加、オーフス条約で提示された環境政策に国民が関与するための3つの条件 フォーラム(情報交流の場) 情報へのアクセス アリーナ (合意形成の場) 意思決定における参加 コート (異議申立ての場)訴訟へのアクセス 3.オーフス条約の3条件(1)環境情報へのアクセス2001年に情報公開法が施行されたが、かえって情報が出にくくなった。情報を早期に廃棄する例も。アメリカの情報自由法:情報提供あるいは裁量的公開の推進、会議情報の公開。重要な政策の選択は審議会などで議論:議事録は発言順に発言者名を公表すべき。(2)意思決定における参加レベ4「意味ある応答」の参加の実現、公共空間での議論が不可欠、計画の策定から実行までの参加を。事業段階からの参加では遅すぎる。戦略的な意思決定段階での参加が、戦略的環境アセスメント(SEA)。(3)訴訟制度へのアクセス訴訟制度へのアクセスが必須。行政手続法で説明責任を義務付けることが必要。政府の決定への国民関与は1993年の行政手続法の制定時にも議論。当時は時期尚早とされたが、時代は変わった。 行政事件訴訟法の改正社会システム構築のチェック機構として、公益性の観点から争えるようにする。2004年6月の行政事件訴訟法の改正により原告適格の範囲が拡大。法廷で争えれば、参加の結果が意思決定に反映される可能性は高まる。例えば、米国連邦政府レベルのアセス制度(NEPAアセス)は訴訟制度との連動により改善された。社会システムの(ソフト)インフラ整備が不可欠。
著者
錦澤 滋雄 原科 幸彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-6, 2004-10-25
参考文献数
14
被引用文献数
4

本研究では、都市マスタープラン策定における計画枠組みづくりへの住民参加方法論としてワークショップに着目し、通常の自由参加によるワークショップだけでなく、相対的に代表性の高い公募の市民委員によるワークショップを活用した東京都日野市を事例として実証的な分析を行った。具体的な論点として、地域割と計画づくりのプロセス設計について取り上げ、その合意形成過程について整理を行い、政治学における二つの規範的な代表観を踏まえて、市民委員の果たすべき役割に着目し、そこでの意義や課題を分析・考察した。その結果、情報収集の役割では、個別地域だけでなく市全体に関する情報を収集し、さらにアウトリーチ活動によりワークショップに参加しなかった住民からの意向も収集したことを確認した。また、地域合意促進の役割では、複数案の作成や市民委員自らの説明を通して合意を形成していったが、唯一の案に絞り込むことができていなかったことを示し、「決め方」についての合意の必要性を指摘した。さらに計画への反映の役割では、地域住民の個別意向だけでなく、市全体の利益にも考慮して計画に反映していること、などを明らかにした。
著者
手嶋 進 原科 幸彦
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.162-171, 2021-05-31 (Released:2021-05-31)
参考文献数
18

再生可能エネルギーが主力エネルギーの一翼を担うという期待が高まる中,再エネ100%を宣言する企業も増えてきた。しかしながら,再エネ100%の理想を掲げても実際に達成した事例数はまだ限られており,達成の手法もあまり公開されていない。千葉商科大学では,まず,教員有志が再エネ100%の可能性を2014年から検討し,2017年に「自然エネルギー100%大学」に向けたプロジェクトを正式に発足させた。照明のLED化などの省エネ施策と,キャンパスから離れた場所に大学が所有する太陽光発電所の設備を増設し,キャンパス内建物屋上に太陽光発電設備を設置する創エネ施策を実施した結果,2019年1月末までの1年間でキャンパスの年間電力使用量と同量以上の電気を作るという目標を達成することができた。本稿では,再エネ100%を目指す他大学や事業者の参考となるように,再エネ100%達成という理想と経済性などの制約との間でいかにバランスをとって施策実行したかを実行当事者としての立場で報告し,一定の成果を上げることができた要因について考察する。