著者
中川 清隆 渡来 靖 福岡 義隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.89, 2010

<B>I.はじめに</B> <BR> 立正大学地球環境科学部環境システム学科環境気象学分野は,1998年の学部創設と同時に,熊谷キャンパス気象観測露場において総合地上気象観測装置設置に着手し,2000年1月からルーチン観測および同記録の整備を開始した(福岡ほか,2004).<BR> 観測開始当初は基本的な気象要素のロガー式観測であったが,近年,放射4成分,地表面温度等の観測項目追加およびデータのリモート収録・管理方式導入に着手し,この度,ハード的な整備がほぼ完了した.<BR> データ収録・管理方式切替作業を開始した2009年8月17日以降4ヶ月余りの間の全天日射および下向き長波放射の時系列に基づいて日界から日界までほぼ完全に快晴であったと判断できるのは,当該期間では12月22日の1日だけであった.出現頻度が極めて低い静穏完全快晴日における地上気象要素の日変化の特徴について検討した結果を報告する.<BR><BR><B>II. 観測結果と考察</B><BR> 12月22日06時の地上天気図(省略)によると,東北以北は冬型気圧配置が継続しているが,関東以西は東支那海に中心を持つ移動性高気圧に覆われて南高型気圧配置となり終日静穏晴天が続いた.<BR> 12月22日の日出,南中,日没時刻は,それぞれ,6:55,11:41,16:27なので完全快晴ならば全天日射量は6:55~16:27のみに出現し,11:41にピークを持つ滑らかな一つ山曲線にならねばならないが,12月21日午前や12月23日正午付近はこの条件を満たしていない.12月21日12時~12月23日18時の下向き下向き長波放射量には急激な増減が存在しないので,雲による付加放射は無かったと判断される.南中前後の非対称な日射量日変化は,対流混合層発達に伴う透過率や直達散乱比率の日変化を反映している可能性がある.<BR> 最低温度は日出直後の07:00に現れ,地表面温度(太実線)は-6.88℃,接地気温(実線)は-5.92℃,地上気温(細実線)は-4.57℃である.地表面温度は13:10に日最高温度13.12℃に達し,日最高気温は14:10に,それぞれ,11.23℃と10.58℃に達した.日射と気温の位相差は2.50時間に及ぶ.この事実は,中川ほか(2008)による水平移流のない平坦地における日射-気温日変化位相差形成メカニズムと整合的である.<BR> 日最高気温起時以降翌朝日出時まで,接地逆転が出現している.夜間の温度時系列には様々な振動が認められる.付加的雲放射を伴った12月23日夕刻の一時的な昇温以外の振動は顕著な放射場の変動を伴っていないが,風速の変動と同期しているものが多い.接地逆転層の破壊・再生による可能性が大きいが,風向と風速の変動が同期しているように見え,静穏晴夜の北西風吹走時は西風吹走時より相対的に強風・高温なので,移流の可能性も有り,更なる検討が必要である.静穏晴夜後早朝に反時計回りに風向変化する東風風系,南中後には南風風系が認められるが,これらの風系の形成メカニズムについても検討が必要である.

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