著者
白井 郁子 武田 祐子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.258, 2010

本研究では、横浜市港北区に2008年3月に開店した複合型商業施設「TRESSA横浜」の顧客カードの情報をもとにGISを利用した詳細な商圏分析を行い、顧客の空間分布の実態を明らかにした結果を報告する。<br><br>TRESSA横浜は、オートモール&ショッピングエリアというタイプの車の販売を含む複合型商業施設である。東急東横線の日吉駅・綱島駅・大倉山駅・菊名駅、JR鶴見駅・新横浜駅の各駅からバスで20分程度の場所に位置しており、車での利用が多い。トヨタの物流拠点整備工場の跡地に開発され、その敷地面積は7万m<sup>2</sup>,テナント220店舗、収容可能駐車数2700台である。<br><br>TRESSA社の独自システムで管理されている顧客データベースの一部の変数を抽出したデータを利用した。このデータには、会員番号、自宅の郵便番号、性別、買上回数、買上金額、DM発行数が含まれており、サンプル数は11万4千件である。また記録された期間は、TRESSAが開店した2008年4月以降2009年9月までである。<BR><BR>顧客カードの郵便番号を住所変換し、CSISアドレスマッチングサービスを利用して経緯度座標を付与することで、顧客の郵便番号区ごとの分布図を作成した。さらに、TRESSAからの距離帯ごと、郵便番号区ごとに会員数、買上回数、買上金額を集計し、顧客の空間分布、売上実績の実態を明らかにした。また、国勢調査の小地域統計より、顧客分布と人口分布との関係を検討した。<BR><BR>顧客カードを利用したGISによる商圏分析の結果は、以下に要約される。1)顧客の分布は、TRESSAから3km圏で全顧客の約50%、5km圏で全顧客のおよそ70%を占めていた。このゾーンは、TRESSAが戦略とする10km圏よりも相当狭いエリアである。また買上金額では、2km圏に全体の50%、4km圏までで全体の80%にのぼる。2)4km圏外であっても、TRESSAより南西に位置する港北区南部と神奈川区西部にかけての地域、およびTRESSA北部にあたる川崎市中原区の会員比率が高い。3)DM発行は、その70%が4キロ圏内で行われているが会員比率の多寡は考慮されていない。4)人口密度と会員比率の多寡には、相関はみられない。以上より、大型商業施設であるTRESSAの商圏は、その規模に相応しない地元完結型と見なされる。

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