- 著者
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大邑 潤三
土田 洋一
植村 善博
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2010, pp.75, 2010
I 研究目的<br> 北丹後地震は1927(昭和2)年3月7日(月)18時27分、京都府北西部の丹後半島を中心に発生したM7.3の地震である。震源の深さは極めて浅く、震央は旧中郡河邊村付近であると推測されている。丹後半島地域の被害が最も激しく、全体で死者2,925人、負傷者7,806人、住宅被害17,599戸であった。<br>本地震では郷村地震断層近傍の峰山町で約97%、山田地震断層近傍の市場村で約94%という高い住宅倒壊(全壊)率を示しており、地震断層近傍の地域ほど住宅倒壊率が高い一般的傾向であると言える。<br>しかしこれまで住宅倒壊率に関して小地域レベルでの詳細な検討がされてこなかった。そこで今回小地域レベル(大字)での分析を行った結果、一般的傾向にあてはまらない集落の存在が明らかとなった。本研究ではこれらの地域が一般的傾向に当てはまらない原因について、地震断層からの距離や地形・地盤などの観点から考察する。〈BR〉II 被害分析の結果 今回大字別の被害分析を行うにあたって『丹後地震誌』(永濱1929)の大字別被害統計を採用した。ここから各集落の住宅倒壊率の状況を示した地図と、地震断層からの距離と住宅倒壊率の関係を示した相関図などを作成した。これから総合的に判断して_丸1_地震断層辺遠で倒壊率の高い集落、_丸2_地震断層近傍で倒壊率の低い集落の2種類に分類し表1の通り抽出した。尚、山田断層周辺の集落に関しては比較・抽出が難しいので今回は割愛した。<br>相関図による分析を行った結果、地震断層からの距離と住宅倒壊率との関係は全体的に一般的傾向を示しながらも、かなり散らばる形となった。また比較する集落数の違いはあるものの、郷村地震断層下盤側の被害率が高い傾向にある事も明らかとなった。 <br>作成した地図から郷村地震断層の変位量と住宅倒壊率との関係を分析した。変位量の大きな郷村地震断層中部の被害率が高く、変位量が小さくなる南に移動するに従って被害率も低くなる傾向にあることを確認できた。<br>次に、表1に示した郷村断層東側分類_丸1_の仲禅寺などの4集落は、いずれも島津村の集落である。中でも仲禅寺・島溝川直近には仲禅寺断層が走っており、住宅倒壊率が高い原因が活断層による地質・地盤構造の急激な変化にある可能性が考えられる。また同じく島津村の掛津・遊両集落は砂丘地形に立地している。西側_丸1_浜詰村浜詰は浜堤上、木津村上野は砂丘周辺に立地しており、砂質地盤が倒壊率に大きく影響していると考えられる。<br>以上、地震断層辺遠で住宅倒壊率の高い集落は、いずれも地質・地盤状況に強く影響されていると考えられる。活断層の存在や地質・地盤状況が住宅倒壊率にどれほどの影響を与えたか、ボーリングデータなどからより詳細に分析する必要がある。またこれら特徴的な被害が発生した原因を地質・地盤のみに限定して求めることなく、盛土や建築物の構造など様々なレベルや視点から分析する必要性を感じる。