著者
田上 善夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.100, 2010

I 大規模な気温変化<br> 小春日和や寒の戻りなど季節外れの暖かさや寒さは、比較的広域に継続的に現れ、さらに局地的要因が加わって、地点により冬にも夏日となることさえある。こうした異常昇温や異常降温の発生には、大規模な暖気の北上や寒気の南下のもとでの、フェーンや冷気湖のような局地的現象の影響が考えられる。<br> この時ならぬ暖かさや寒さは、異常に大きな平年偏差として示されるが、平年値として日最高気温や日最低気温、あるいは日平均気温が用いられることが多い。これらによる場合、日単位以下の変化は明らかでなく、また極値の起時は異なるため、総観気候学的解析に適合しないことがある。ここではとくに局地的要因の影響解明のために、時別値の平年値にもとづいての解析を試みる。<br><br>II 時別の平年偏差<br> 気温資料には気象庁のアメダスを基本とし、また日本列島付近の総観気候場の解析には京大生存圏研のMSMデータを用いる。平年値としてアメダスの場合、現在は1979-2000年の平均が用いられている。ここでは対象期間を、アメダス再統計の1996年から2004年とし、この9年間の平均を求めて仮に「平年値」として用いることにする。この期間中の観測で、非正常値が1回以下のアメダス801地点を対象とする。なお2月29日は除き、対象時刻は78,840(9×365×24)である。<br><br>III 異常昇温・降温の出現<br> 地点ごとに平年偏差が、異常昇温は+10℃以上、異常降温は-10℃未満として、期間中の出現数を集計する。異常昇温の出現の多い地点は、北海道東部、三陸、北信越、山陰などに分布する(図1)。また異常降温の出現の多い地点は、北海道東部、東北から中部の内陸部、中国と九州の内陸部に分布する。この異常昇温の出現の多い地点は、日最高気温の平年偏差にもとづいてみた場合と類似するが、北海道東部でより顕著となっている。<br> 各時刻について気温平年偏差の全国平均値を求め、+5℃以上を広域異常昇温、-5℃未満を広域異常降温とする。広域異常昇温の出現の延べ時間数は、1998年、2002年、2004年にとくに多い。また広域異常降温は1996年、2001年、2002年にとくに多い。<br> 月別に集計すると、両者の出現は寒候期に多く、暖候期には少ないが、およそ春と秋に集中する(図2)。ただし両者の出現には差異があり、9月から3月には広域異常昇温の出現がより多く、4月から8月のみ、広域異常降温の出現がより多くなる。またとくに2月には広域異常降温の出現が圧倒的に多く、とくに4月には広域異常降温の出現が多くなっている。<br> なお広域異常昇温の出現がとくに多かった1998年4月や,また広域異常降温の出現のとくに多かった1996年4月などでは、全国平均の気温平年偏差の変動には、7日程度の周期がみられる。<br><br>IV 異常昇温と異常降温の発生<br> 顕著な異常昇温期間として、2004年2月19-23日の変化を示す。この間には高気圧が日本列島付近を東進した後、低気圧が日本海を通過した。昇温の中心域は、およそ西から東に移動していく。とくに中部地方内陸部では、日中の昇温が夜間も維持され、東海地方では日中に昇温が相対的に小さい一方、北陸地方では日中に昇温がとくに大きくなる(図3)。この間におよそ南風が吹走するが、南北での差は日中には大きく、夜間は小さい。<br> 顕著な異常降温の期間として、2004年4月23-27日には、降温は東日本側で大きく、とくに北海道東部から東北地方の三陸では顕著な降温がみられる。この間には低気圧が東北日本を横断した後、弱い冬型の気圧配置となった。降温の中心域はオホーツク海方面から東北南部方面に移動して行く。また平年偏差は、日中にとくに低くなっている。<br> このように時別値からみた場合、異常高温は局地的にはとくに山地風下側に日中に現れやすいが、それには日射による加熱や海風浸入の遮断が要因として大きいと考えられる。また異常降温は局地的には山地風上側に日中に表れやすいが、上層の強い寒気に加えて、下層に侵入した冷気が風上側に滞留することが、要因として大きいと考えられる。

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