- 著者
-
加賀美 雅弘
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2016
日本語文献における外国地名の表記方法は,現地語による表記方法が重視されつつも,実際には内生地名endonymと外来地名exodymが混在し,現地語とは異なる表記が慣用化しているケースも少なくない。また,同じ地名が異なる表記なるなど表記のブレもあらわれている。このように外国地名の表記方法は,一定の規定がないために混乱しているといえる。しかし,国際的な情報交流を推進する上でも,地名表記方法の標準化は不可欠である。内生地名と外来地名それぞれの意義と問題点に関する議論が国連地名標準化会議と,その下部組織である国連地名専門家グループUNGEGNで活発に議論されているが,日本の地理学においても,地名の表記方法についての関心を高める必要がある。一方,ドイツ語圏では地名表記に関する議論が積極的になされており,地名の表記が,そこに住んできた人々の歴史や伝統文化を想起させる点で,彼らのアイデンティティと深くかかわっていることが指摘されている。以上を踏まえて,ドイツの地理学文献における東ヨーロッパの地名の表記方法を整理し,日本における外国地名表記のあり方について検討した。その結果として,ドイツ語圏において外国地名の表記方法が過渡的な時期にあることを明示し,日本の外国地名表記にもアイデンティティの問題が考慮されるべきである点に言及した。