著者
福岡 義隆 丸本 美紀
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.215, 2011

1.いま何故、平城京ヒートアイランドか 昨今の温暖化(平成温暖期とする)に類似の平安温暖期(奈良時代から平安時代にかけて)における都市の熱環境はどうであったか。それは平城京や平安京の繁栄の現われなのか。文献的な検証により、古環境とくに気候環境への適応工夫を見直してみて先人の知恵を学ぶ手がかりにしたい。2.研究方法2-1 古典的な気候学研究方法からの類推(1)SchmidtによるWienにおける都市気温の成因分析.1917,(2)福井英一郎による土地利用比率からの都市気温の推定回帰式とAustasch概念導入.1956,(3)高橋百之による家屋密度Dと気温Tの関係式,T=αD+βで概略描写.1959,(4)河村武による都市温度成因分析,熱的指数1/(cρκ1/2)で微差補正.1964,(5)田宮兵衛による団地の気温分布参考.1968,(6)オーク、福岡、朴らによる人口数Pとヒートアイランド強度HII=AlogP+Bの回帰式で京内外の温度差推定(1987・1992,など)。2-2 平城京内の居住環境と土地利用の推定 馬場基著(2010)『平城京に暮らす』(吉川弘文館)~主に「大日本古文書」「平城宮木簡」「平常京木簡」「平城宮発掘調査出土木簡概報」などに基づく著書、宮本長二郎著(2010)『平城京―古代の都市計画と建築』(草思社)~各種古文書のほか奈良国立文化財研究所や歴史民俗博物館などの模型などに基づき穂積和夫によるイラストでの復元図、奈良文化財研究所編(2010)『平常京―奈良の都のまつりごととくらし』など3.冬季夜間のヒートアイランド推定結果 上記の手法、先行研究方法からの概略図把握および各種文献による微差補正などで下図を得る。 根拠とした数値など;_丸1_平城京の人口は10万~20万人と推定されているので、オーク・福岡らの人口とヒートアイランド強度(HII)の相関図から、おおよそHIIは1.5~2℃とした。_丸2_人が集まりやすい区域、例えば市場(東市・西市)とか頻繁に宴会が催された朝堂院、大学寮(式部省近く)、広場(行基の布教活動支援の大衆集合)等は周辺より高温とした。_丸3_大極殿とか長屋王邸などの屋根のように著熱効果のある瓦が大量に使われている建物群区域もやや高温とみなした(平常京全体で500万枚の瓦が使われた)。_丸4_朱雀大路とか二条通りなどの街路樹(槐、エンジュ)や佐保川とか秋篠川、大極殿北隣の溜池あるいは苑内池付近などの蒸発散面区域でやや低温であったと類推される。

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