- 著者
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平田 航
日下 博幸
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2011, pp.119, 2011
<B>1.はじめに</B><BR> 「二つ玉低気圧型」は日本の代表的な気圧配置の一つで、日本各地に悪天をもたらし、大雨や強風などのシビア現象が起こりやすいことが知られている。<BR> 北畑(2010)は過去20年間の二つ玉低気圧事例を4つのタイプ(並進タイプ・日本海低気圧メインタイプ・南岸低気圧メインタイプ・分裂したように見えるタイプ)に分類し、形成過程における日本列島の影響を調査した。<BR> 他にも二つ玉低気圧に関する統計的研究や事例紹介はいくつか行われているが(Miller, 1946; 櫃間, 2006)、本格的な研究はほとんど行われておらず、二つ玉低気圧とシビア現象の関係は未だ明らかになっていない。<BR><BR><B>2.目的</B><BR> 二つ玉低気圧通過時における降水量・降水強度・風速・降雪の地域的特性について統計解析を行う。また、二つ玉低気圧のタイプ別や日本海低気圧・南岸低気圧との比較を行い、降水の実態を解明する。<BR><BR><B>3.使用データ</B><BR>・気象庁アジア太平洋地上天気図(ASAS)<BR>・AMeDASデータ(降水量の1時間値)<BR>・気象官署データ(風速・降雪の深さの1時間値)<BR><BR><B>4.解析手法</B><BR><B>4.1.二つ玉低気圧の統計解析</B><BR> 北畑(2010)が抽出した二つ玉低気圧解析対象事例10年分の並進タイプ・日本海低気圧メイン(以下、日本海Lメイン)タイプ・南岸低気圧メイン(以下、南岸Lメイン)タイプを使用した。また、比較のために、日本海低気圧事例・南岸低気圧事例を抽出した。<BR><B>4.1.1.事例毎の降水観測期間の設定</B><BR> 「降水観測期間」を定義し、地上天気図で判定。<BR><B>4.1.2.降水・最大風速・降雪の地域的特性の調査</B><BR> 総降水量、1時間・3時間降水量の極値、総降雪量、最大風速を地点毎に算出。<BR><B>4.1.3.全国の降水規模調査</B><BR> 事例毎の全国総降水量・降水観測地点数の調査。<BR><B>4.2.シビア現象を引き起こす環境場の考察</B><BR> 二つ玉低気圧の間隔・気圧下降量などに着目。<BR><BR><B>5.結論</B><BR> 二つ玉低気圧通過に伴う降水は日本の南岸や北陸で強いが、日本海Lメインタイプの降水は全国的に弱い傾向がある。二つ玉低気圧と日本海低気圧・南岸低気圧で全国総降水量の差は小さい。並進タイプは降水観測地点割合が全国で90%近く、次いで、南岸Lメインタイプが広範囲に降水をもたらす。日本海Lメインタイプは東日本で降水観測地点割合が大きい。<BR> 最大降水強度の強い事例は、二つ玉低気圧の3タイプともに南岸低気圧が日本列島により近いところを移動する傾向がある。日本海低気圧の経路には明白な差がみられない。<BR> 最大風速の平均は日本海Lメインタイプが沿岸部を中心に強く、南岸Lメインタイプは全国的に10m/sを下回る。<BR> 二つ玉低気圧は日本海低気圧・南岸低気圧よりも全国で降雪が起こりやすくなる。二つ玉低気圧3タイプの中では並進タイプや日本海Lメインタイプは東北や北海道で比較的ふぶきとなりやすい。南岸Lメインタイプは関東南部まで降雪の可能性があり、全国的に穏やかな降雪をもたらすことがわかった。