著者
髙根 雄也 日下 博幸 髙木 美彩 岡田 牧 阿部 紫織 永井 徹 冨士 友紀乃 飯塚 悟
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.14-37, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
52
被引用文献数
1

これまで調査されてこなかった岐阜県多治見市と愛知県春日井市の暑熱環境の実態を明らかにするため,2010年8月の晴天日に,両市の15地点に気温計を,2地点にアスマン通風乾湿計と黒球温度計をそれぞれ設置し,両市の気温と湿球黒球温度WBGTの実態を調査した.次に,領域気象モデルWRFを用いて気温とWBGTの予測実験を行い,これらの予測に対するWRFモデルの有用性を確認した.最後に,WRFモデルの物理モデルと水平解像度の選択に伴うWBGT予測結果の不確実性の大きさを相互比較するために,物理モデルと水平解像度の感度実験を行った.その結果,選択した物理モデルによって予測値が日中平均で最大8.4°C異なること,特に地表面モデルSLABは観測値の過大評価(6.8°C)をもたらすことが確認された.一方,水平解像度が3 km以下の場合,WBGTの予測値の解像度依存性は日中平均で最大0.5°Cと非常に小さいことが確認された.
著者
富山 一 田邊 潔 茶谷 聡 小林 伸治 藤谷 雄二 古山 昭子 佐藤 圭 伏見 暁洋 近藤 美則 菅田 誠治 森野 悠 早崎 将光 小熊 宏之 井手 玲子 日下 博幸 高見 昭憲
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.105-117, 2017-07-10 (Released:2017-09-14)
参考文献数
18

詳細な野焼き頻度分布についての知見を得るために、つくば市において巡回と定点カメラによる観測によって野焼き件数の分布を調査した。2015年秋季 (9~10月) に毎日巡回して燃焼物別の日別野焼き件数を調査し、降雨前に野焼き件数が多くなることが確認されたほか、野焼き件数の57%を占めた稲作残渣は稲の収穫時期から一定期間後に籾殻、稲わらの順で焼却されることが確認された。秋季の巡回調査に続き2016年8月まで4日に1度ほどの頻度で巡回し、月別野焼き件数を比較すると9~11月に多く、1~8月に少ないことが確認された。2016年1~12月にかけて行った筑波山山頂に設置した定点カメラからの観測では、1月、10月~12月に野焼き件数が多く、2~9月に少ないことが確認され、1日の中では午前10~11時および午後2~3時に野焼きが行われやすいことが確認された。2015年秋季の調査結果にもとづいて稲の収穫時期と気象条件から稲作残渣の年間野焼き発生量に対する日別野焼き発生量比を推計する回帰モデルを構築した。回帰係数から、降雨前に野焼き件数が増えること、強風により野焼き件数が減ることが定量的に確認された。構築されたモデルに都道府県別の稲収穫時期と気象データを適用して、従前研究では推計できなかった都道府県別の大気汚染物質排出量の日変動を、2013、2014年の稲収穫時期と気象データを適用して各年の野焼き発生量比の日変動をそれぞれ推計した。
著者
日下 博幸 羽入 拓朗 縄田 恵子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.479-492, 2010-09-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
26
被引用文献数
2 3

本研究では,2000年7月4日に東京で観測された局地豪雨を対象に,GPS可降水量とヒートアイランド現象に着目した気象観測データの解析を行った.その結果,この日,大気の状態は不安定で,平野スケールの地上風の収束場が都心に位置しており,山岳から都心に移動してきた降水系に伴う発散風と海風としての南風の局所的な収束が都心で生じていたことが確認された.さらには,可降水量の増加域は降水域と一致しており,その値は降水の数時間前に増加し,約1時間前に最大になる傾向にあったことがわかった.しかしながら,ヒートアイランド現象は明瞭に見られたものの,それに伴う都心での明瞭な水蒸気の集積は認められなかった.本事例の場合,ヒートアイランドが東京で強い上昇流を引き起こしながら水蒸気を集積し豪雨を発生させたと考えることは難しい.
著者
宮 由可子 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.346-355, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

関東平野で冬季に吹く局地風「空っ風」について気候学的な解析を行い,日変化や鉛直構造を明らかにした.結果は以下の通りである.①空っ風日の地上風は明瞭な日変化を示す.関東平野の北西~西北西風の卓越する地域では,日中の風速は冬期平均の2倍近くに達する.②空っ風日の境界層上部の風速は昼前に小さく,夕方に大きくなる.③空っ風日の大気の安定度は冬期平均のそれに比べて弱い.これらの特性は,空っ風日には多くの運動量が地上まで輸送されていること,空っ風が熱対流混合風の性格を持っていることを示唆している.④空っ風日の相対湿度・日降水量は日本海側で高く関東平野で低い.1日当たりの日射量は日本海側で少なく関東平野で多い.これらの傾向は冬期平均に比べてより顕著である.以上の結果は,空っ風がフェーン現象を伴っており,この現象がもたらす晴天が混合層の発達をより助け,熱対流混合層の性格をより強めていることを示唆している.
著者
平田 航 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.338-353, 2013-07-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2

「二つ玉低気圧型」は日本で有名な気圧配置の一つで,全国各地に大雨や強風をもたらしやすいと言われている.本研究では二つ玉低気圧を並進タイプ,日本海低気圧メインタイプ,南岸低気圧メインタイプの三つに分類し,降水量や降水の強さ,降雪の深さについて気候学的解析を行った.また,比較のために一般的な日本海低気圧と南岸低気圧についても同様の解析を行った.並進タイプは全国に降水をもたらし,日本の南岸で降水量が多い.日本海低気圧メインタイプでは全国的に降水量が少ないが,本州の日本海側で冬季にふぶきとなりやすい特徴があった.南岸低気圧メインタイプは日本の南岸と北陸地方で特に多くの降水をもたらし,冬季には比較的広い範囲に降雪をもたらす.二つ玉低気圧3タイプで降水分布に生じる違いは,前線の有無に依存する.さらに,二つ玉低気圧が強雨をもたらすときは,南側の低気圧が日本列島により近いコースをとることがわかった.
著者
木村 広希 川島 英之 日下 博幸 北川 博之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.323-331, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

気候学研究においては,特定の気圧配置を示す事例を選ぶ必要から,過去の気圧配置を分類することがある.気圧配置の分類は多くの場合,目視で行われており,長期間かけて行うことや複数人で行うことがある.これらの場合,判断にぶれが生じたり,分類結果が研究者の主観に左右されたりする可能性がある.本稿では,この気圧配置の分類に,パターン認識手法であるサポートベクターマシンを用いて,分類を自動化することを提案する.本研究では,日々の気圧配置からの西高東低冬型の検出を目的とし,実験により提案手法の有用性を検討した.JRA-25のデータを用い,1981~1990年を学習期間,1991~2000年を検証期間として実験を行った結果,最良で90%以上の適中率で西高東低冬型を検出できることがわかった.これより,学習データの与え方に主観が影響するものの,分類の際の負担を軽減でき,判断基準が変わることなく,ある程度の精度で気圧配置を分類できると考えられる.
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。

2 0 0 0 OA 日本の局地風

著者
日下 博幸 西 暁史
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会誌 (ISSN:09121935)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.164-171, 2012 (Released:2013-03-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1
著者
川口 純 日下 博幸 木村 富士男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.375-383, 2010-07-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

ヤマセは,夏季の北日本の太平洋側に吹き付ける冷たく湿った東寄りの風である.ヤマセ卓越時には,東北地方太平洋側で東~南東の風が吹く.しかしながら,北上盆地では南風が吹く.本研究では,この南風の成因を明らかにするために,データ解析と領域気象モデルWRFを用いた数値実験を行った.結果を以下に示す.(1)WRFを用いた数値実験の結果,実地形を用いた基準実験と,北上高地の地形高度を90%に減少させた実験では北上盆地で南風が吹くが,北上高地の地形高度を80%,70%に減少させた実験では,北上盆地では南風が吹かずに東風が卓越する.(2)この結果は,フルード数やロスビー数を使った力学的解析の結果と一致する.(3)ヤマセ卓越時の北上盆地の南風は,地形障壁の効果と重力流の特徴をよく表している.
著者
秋本 祐子 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.324-340, 2010-05-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
6 8

領域気象モデルWRFの入力データ(大気・土地利用・海面水温・地形),および地表面パラメータ(粗度・アルベド)の変化に対する感度実験を行い,それらが地上気温の再現精度に与える影響を定量的に比較した.結果は以下の通りである.デフォルトの設定による計算では,日最高気温・日最低気温がともに関東平野全域で過小評価される.大気の入力データとして,デフォルトのデータの代わりに気象庁のメソ客観解析データを用いると,前述した地上気温の過小評価が改善される.土地利用データとして,デフォルトのデータの代わりに国土数値情報の土地利用データを使用すると,熊谷を含む郊外の中小都市の存在が識別できるようになる.その結果,関東平野の北西部で気温が上昇し,地上気温の過小評価が改善される.海面水温データ・地形データの変更,および地表面パラメータの変更は,地上気温の計算結果に大きな影響を与えないことが分かった.
著者
日下 博幸 猪狩 浩介 小久保 礼子 佐藤 拓人 ドアン グアン ヴァン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.180-196, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
58
被引用文献数
1 1

本研究は,商業地,住宅地,緑地という異なる土地利用を1~2 km以内に有する東京都渋谷区を対象に,土地利用や人間活動の違いが気温とWBGTの非一様性の形成に及ぼす影響を観測によって明らかにした.観測結果から,日中では,住宅地の気温が商業地に比べてやや高く,緑地が最も低いことが明らかとなった.夜間は,商業地の気温が最も高く,緑地が最も低かった.また,緑地では夜間に接地逆転層が認められる一方で,商業地では夜間に少なくとも観測範囲内(地上から高度33 mまで)では絶対不安定となっていた.熱画像観測は,昼夜を問わず,商業地と住宅地で同程度の表面温度であることを示した.これらの結果は,商業地の大きな表面積・建物体積・熱容量による大きな熱慣性と人工排熱によると考えられる.この結果は,多層都市キャノピーモデルを用いた数値実験からも支持された.WBGTの場合は,気温とは異なり,商業地と緑地で大きな差はなかった.これは,緑地の高い湿度が原因であることが分かった.
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100126, 2016 (Released:2016-11-09)

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。
著者
久野 勇太 日下 博幸
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.661-667, 2014

2002~2009年(8年間)の6~9月のアメダス10分値データおよび愛知県・岐阜県の川の防災情報10分間雨量データを用いて,濃尾平野周辺における強雨発生頻度の地理的特性を調査した.熱的局地循環が発達するような条件下での強雨に着目するために,対象期間全日と濃尾平野内で真夏日を記録した午前無降水日の2つの対象日ごとに解析を行った.その結果,以下の傾向が見られた.(1)2つの対象日ともに,10mm/hour以上の1時間降水量を観測した日数は濃尾平野近傍の北~北東の山地で多い.(2)濃尾平野の平均的な強雨日数は,愛知県沿岸部における強雨日数に比べて多い.(3)濃尾平野近傍の北~北東の山地では,15~18時に強雨発生頻度の極大値が存在する.ただし,関東平野とは異なり,濃尾平野の内陸部では時間帯による強雨発生頻度の極大値は見られない.(4)10mm/hour以上の強雨発生日は,強雨の非発生日に比べて濃尾平野周辺の大気が不安定な傾向にある.
著者
富山 一 菅田 誠治 森野 悠 早崎 将光 小熊 宏之 井手 玲子 日下 博幸 高見 昭憲 田邊 潔 茶谷 聡 小林 伸治 藤谷 雄二 古山 昭子 佐藤 圭 伏見 暁洋 近藤 美則
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.105-117, 2017

<p>詳細な野焼き頻度分布についての知見を得るために、つくば市において巡回と定点カメラによる観測によって野焼き件数の分布を調査した。2015年秋季 (9~10月) に毎日巡回して燃焼物別の日別野焼き件数を調査し、降雨前に野焼き件数が多くなることが確認されたほか、野焼き件数の57%を占めた稲作残渣は稲の収穫時期から一定期間後に籾殻、稲わらの順で焼却されることが確認された。秋季の巡回調査に続き2016年8月まで4日に1度ほどの頻度で巡回し、月別野焼き件数を比較すると9~11月に多く、1~8月に少ないことが確認された。2016年1~12月にかけて行った筑波山山頂に設置した定点カメラからの観測では、1月、10月~12月に野焼き件数が多く、2~9月に少ないことが確認され、1日の中では午前10~11時および午後2~3時に野焼きが行われやすいことが確認された。2015年秋季の調査結果にもとづいて稲の収穫時期と気象条件から稲作残渣の年間野焼き発生量に対する日別野焼き発生量比を推計する回帰モデルを構築した。回帰係数から、降雨前に野焼き件数が増えること、強風により野焼き件数が減ることが定量的に確認された。構築されたモデルに都道府県別の稲収穫時期と気象データを適用して、従前研究では推計できなかった都道府県別の大気汚染物質排出量の日変動を、2013、2014年の稲収穫時期と気象データを適用して各年の野焼き発生量比の日変動をそれぞれ推計した。</p>
著者
小林 峻 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>2017年6月3日、ベトナム北部の都市ハノイで過去40年間で最高となる41.5℃を観測した。このような都市の記録的高温の原因として、地球温暖化や大規模スケールの異常気象といったグローバルスケールの現象だけでなく、フェーン現象や都市ヒートアイランド(UHI)といったローカルスケールの現象が指摘されている。しかしこれら先行研究は、都市の記録的高温に対するグローバルスケールおよびローカルスケールの現象の寄与をまとめて議論していない。そこで本研究は、2017年6月にハノイを襲った記録的高温に対して寄与していた異なる時空間スケール現象を、データ解析および数値シミュレーションにより調査し寄与を定量的に評価するものである。</p><p></p><p> まずWRFによる数値シミュレーションが2017年6月の記録的高温を再現できているか、NOAAの運営するClimate Data Onlineより得られる観測データと比較して評価する。気温や相対湿度、風向については観測値と変化傾向がおおむね一致した。次に観測データを用いて、ベトナム北部の気温の40年(1971-2010)変化傾向を調査した。その結果、1971年から2010年の40年間で0.908℃の気温上昇傾向が認められた。さらに数値シミュレーションを用いてUHIの寄与を定量的に評価したところ、6月2〜5日のハノイでは昼間では0〜+1.0℃、夜間では+2.0〜+4.0℃であった。一方、再解析データのNCEP-FNLを20年(2000-2019)分用いたデータ解析により、大規模スケールの異常気象の寄与を定量的に評価した。その結果、6月2〜5日は20年平均値を+4.0〜+8.0℃上回る暖気が西風によりハノイ上空に移流されていることがわかった。さらに、この気温の正偏差および西風がともに強かった場合にハノイで気温が上昇しやすいことも示唆される。最後に数値シミュレーションにより、6月2〜5日にはハノイの風上側でフェーン現象が継続的に発生し、昼間にはハノイ上空およびその風上側で混合層が顕著に発達していたことがわかった。なお地形の昇温効果は最大+3.0℃、平均+0.33℃であった。</p><p> 以上より、2017年6月にハノイを襲った記録的高温には、地球温暖化や暖気移流といった大規模スケールの現象から、フェーン現象やUHIといったローカルスケールの現象まで寄与していたと結論付けられる。</p>
著者
平田 航 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.119, 2011

<B>1.はじめに</B><BR> 「二つ玉低気圧型」は日本の代表的な気圧配置の一つで、日本各地に悪天をもたらし、大雨や強風などのシビア現象が起こりやすいことが知られている。<BR> 北畑(2010)は過去20年間の二つ玉低気圧事例を4つのタイプ(並進タイプ・日本海低気圧メインタイプ・南岸低気圧メインタイプ・分裂したように見えるタイプ)に分類し、形成過程における日本列島の影響を調査した。<BR> 他にも二つ玉低気圧に関する統計的研究や事例紹介はいくつか行われているが(Miller, 1946; 櫃間, 2006)、本格的な研究はほとんど行われておらず、二つ玉低気圧とシビア現象の関係は未だ明らかになっていない。<BR><BR><B>2.目的</B><BR> 二つ玉低気圧通過時における降水量・降水強度・風速・降雪の地域的特性について統計解析を行う。また、二つ玉低気圧のタイプ別や日本海低気圧・南岸低気圧との比較を行い、降水の実態を解明する。<BR><BR><B>3.使用データ</B><BR>・気象庁アジア太平洋地上天気図(ASAS)<BR>・AMeDASデータ(降水量の1時間値)<BR>・気象官署データ(風速・降雪の深さの1時間値)<BR><BR><B>4.解析手法</B><BR><B>4.1.二つ玉低気圧の統計解析</B><BR> 北畑(2010)が抽出した二つ玉低気圧解析対象事例10年分の並進タイプ・日本海低気圧メイン(以下、日本海Lメイン)タイプ・南岸低気圧メイン(以下、南岸Lメイン)タイプを使用した。また、比較のために、日本海低気圧事例・南岸低気圧事例を抽出した。<BR><B>4.1.1.事例毎の降水観測期間の設定</B><BR> 「降水観測期間」を定義し、地上天気図で判定。<BR><B>4.1.2.降水・最大風速・降雪の地域的特性の調査</B><BR> 総降水量、1時間・3時間降水量の極値、総降雪量、最大風速を地点毎に算出。<BR><B>4.1.3.全国の降水規模調査</B><BR> 事例毎の全国総降水量・降水観測地点数の調査。<BR><B>4.2.シビア現象を引き起こす環境場の考察</B><BR> 二つ玉低気圧の間隔・気圧下降量などに着目。<BR><BR><B>5.結論</B><BR> 二つ玉低気圧通過に伴う降水は日本の南岸や北陸で強いが、日本海Lメインタイプの降水は全国的に弱い傾向がある。二つ玉低気圧と日本海低気圧・南岸低気圧で全国総降水量の差は小さい。並進タイプは降水観測地点割合が全国で90%近く、次いで、南岸Lメインタイプが広範囲に降水をもたらす。日本海Lメインタイプは東日本で降水観測地点割合が大きい。<BR> 最大降水強度の強い事例は、二つ玉低気圧の3タイプともに南岸低気圧が日本列島により近いところを移動する傾向がある。日本海低気圧の経路には明白な差がみられない。<BR> 最大風速の平均は日本海Lメインタイプが沿岸部を中心に強く、南岸Lメインタイプは全国的に10m/sを下回る。<BR> 二つ玉低気圧は日本海低気圧・南岸低気圧よりも全国で降雪が起こりやすくなる。二つ玉低気圧3タイプの中では並進タイプや日本海Lメインタイプは東北や北海道で比較的ふぶきとなりやすい。南岸Lメインタイプは関東南部まで降雪の可能性があり、全国的に穏やかな降雪をもたらすことがわかった。
著者
池田 亮作 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

都市の気温は, 都市化の影響を大きく受けていると考えられており, 都市の暑熱環境の悪化は, 熱中症など都市住民の健康にも影響を与えうると不安視されている. そこで, 街区の風通し, ドライミスト・街路樹の設置などの暑熱環境緩和策への関心が高まっている. これらの効果を, 数値モデルを用いて評価するためには, 街区スケール(10<sup>2</sup>~10<sup>3</sup>m)から建物周辺スケール(10<sup>1</sup>m)の現象を計算できるモデルが必要となる.そのためには, 建物を解像し, 街路樹の効果もモデルに反映させる必要がある.本研究では, 街区・建物周辺スケールのシミュレーションが可能なモデルの開発を行い, 現実都市における熱環境シミュレーションを行った.
著者
岡田 牧 日下 博幸 髙木 美彩 阿部 紫織 高根 雄也 冨士 友紀乃 永井 徹
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.23-29, 2014-01

2010年当時の国内最高気温40.9℃が記録された岐阜県多治見市における夏季の気温分布を調べるために,2010年8月に多治見市並びに愛知県春日井市の学校及び公園に計15台の気温計を設置した.月平均気温の空間分布から,盆地底に位置する多治見市中心部ほど気温の高い様子が示された,また,日最高気温35℃以上の日数(猛暑日数)と日最低気温が25℃以上の日数(熱帯夜数)についても,多治見市中心部で最も多かった.更に,日最低気温が現れやすい早朝の気温分布においても,多治見市中心部ほど気温が高かった.夜間の盆地底は冷気層の形成によりその周囲よりも低温になりやすい.しかしながら気温が下がりにくかったという結果から,多治見市の日最低気温の形成に多治見市の都市化が影響していることが推察された.