著者
髙根 雄也 日下 博幸 髙木 美彩 岡田 牧 阿部 紫織 永井 徹 冨士 友紀乃 飯塚 悟
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.14-37, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
52
被引用文献数
1

これまで調査されてこなかった岐阜県多治見市と愛知県春日井市の暑熱環境の実態を明らかにするため,2010年8月の晴天日に,両市の15地点に気温計を,2地点にアスマン通風乾湿計と黒球温度計をそれぞれ設置し,両市の気温と湿球黒球温度WBGTの実態を調査した.次に,領域気象モデルWRFを用いて気温とWBGTの予測実験を行い,これらの予測に対するWRFモデルの有用性を確認した.最後に,WRFモデルの物理モデルと水平解像度の選択に伴うWBGT予測結果の不確実性の大きさを相互比較するために,物理モデルと水平解像度の感度実験を行った.その結果,選択した物理モデルによって予測値が日中平均で最大8.4°C異なること,特に地表面モデルSLABは観測値の過大評価(6.8°C)をもたらすことが確認された.一方,水平解像度が3 km以下の場合,WBGTの予測値の解像度依存性は日中平均で最大0.5°Cと非常に小さいことが確認された.
著者
富山 一 田邊 潔 茶谷 聡 小林 伸治 藤谷 雄二 古山 昭子 佐藤 圭 伏見 暁洋 近藤 美則 菅田 誠治 森野 悠 早崎 将光 小熊 宏之 井手 玲子 日下 博幸 高見 昭憲
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.105-117, 2017-07-10 (Released:2017-09-14)
参考文献数
18

詳細な野焼き頻度分布についての知見を得るために、つくば市において巡回と定点カメラによる観測によって野焼き件数の分布を調査した。2015年秋季 (9~10月) に毎日巡回して燃焼物別の日別野焼き件数を調査し、降雨前に野焼き件数が多くなることが確認されたほか、野焼き件数の57%を占めた稲作残渣は稲の収穫時期から一定期間後に籾殻、稲わらの順で焼却されることが確認された。秋季の巡回調査に続き2016年8月まで4日に1度ほどの頻度で巡回し、月別野焼き件数を比較すると9~11月に多く、1~8月に少ないことが確認された。2016年1~12月にかけて行った筑波山山頂に設置した定点カメラからの観測では、1月、10月~12月に野焼き件数が多く、2~9月に少ないことが確認され、1日の中では午前10~11時および午後2~3時に野焼きが行われやすいことが確認された。2015年秋季の調査結果にもとづいて稲の収穫時期と気象条件から稲作残渣の年間野焼き発生量に対する日別野焼き発生量比を推計する回帰モデルを構築した。回帰係数から、降雨前に野焼き件数が増えること、強風により野焼き件数が減ることが定量的に確認された。構築されたモデルに都道府県別の稲収穫時期と気象データを適用して、従前研究では推計できなかった都道府県別の大気汚染物質排出量の日変動を、2013、2014年の稲収穫時期と気象データを適用して各年の野焼き発生量比の日変動をそれぞれ推計した。
著者
宮 由可子 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.346-355, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
22

関東平野で冬季に吹く局地風「空っ風」について気候学的な解析を行い,日変化や鉛直構造を明らかにした.結果は以下の通りである.①空っ風日の地上風は明瞭な日変化を示す.関東平野の北西~西北西風の卓越する地域では,日中の風速は冬期平均の2倍近くに達する.②空っ風日の境界層上部の風速は昼前に小さく,夕方に大きくなる.③空っ風日の大気の安定度は冬期平均のそれに比べて弱い.これらの特性は,空っ風日には多くの運動量が地上まで輸送されていること,空っ風が熱対流混合風の性格を持っていることを示唆している.④空っ風日の相対湿度・日降水量は日本海側で高く関東平野で低い.1日当たりの日射量は日本海側で少なく関東平野で多い.これらの傾向は冬期平均に比べてより顕著である.以上の結果は,空っ風がフェーン現象を伴っており,この現象がもたらす晴天が混合層の発達をより助け,熱対流混合層の性格をより強めていることを示唆している.
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.100126, 2016 (Released:2016-11-09)

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。
著者
平田 航 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.338-353, 2013-07-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
17

「二つ玉低気圧型」は日本で有名な気圧配置の一つで,全国各地に大雨や強風をもたらしやすいと言われている.本研究では二つ玉低気圧を並進タイプ,日本海低気圧メインタイプ,南岸低気圧メインタイプの三つに分類し,降水量や降水の強さ,降雪の深さについて気候学的解析を行った.また,比較のために一般的な日本海低気圧と南岸低気圧についても同様の解析を行った.並進タイプは全国に降水をもたらし,日本の南岸で降水量が多い.日本海低気圧メインタイプでは全国的に降水量が少ないが,本州の日本海側で冬季にふぶきとなりやすい特徴があった.南岸低気圧メインタイプは日本の南岸と北陸地方で特に多くの降水をもたらし,冬季には比較的広い範囲に降雪をもたらす.二つ玉低気圧3タイプで降水分布に生じる違いは,前線の有無に依存する.さらに,二つ玉低気圧が強雨をもたらすときは,南側の低気圧が日本列島により近いコースをとることがわかった.
著者
久野 勇太 日下 博幸
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.661-667, 2014

2002~2009年(8年間)の6~9月のアメダス10分値データおよび愛知県・岐阜県の川の防災情報10分間雨量データを用いて,濃尾平野周辺における強雨発生頻度の地理的特性を調査した.熱的局地循環が発達するような条件下での強雨に着目するために,対象期間全日と濃尾平野内で真夏日を記録した午前無降水日の2つの対象日ごとに解析を行った.その結果,以下の傾向が見られた.(1)2つの対象日ともに,10mm/hour以上の1時間降水量を観測した日数は濃尾平野近傍の北~北東の山地で多い.(2)濃尾平野の平均的な強雨日数は,愛知県沿岸部における強雨日数に比べて多い.(3)濃尾平野近傍の北~北東の山地では,15~18時に強雨発生頻度の極大値が存在する.ただし,関東平野とは異なり,濃尾平野の内陸部では時間帯による強雨発生頻度の極大値は見られない.(4)10mm/hour以上の強雨発生日は,強雨の非発生日に比べて濃尾平野周辺の大気が不安定な傾向にある.
著者
日下 博幸 羽入 拓朗 縄田 恵子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.479-492, 2010-09-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では,2000年7月4日に東京で観測された局地豪雨を対象に,GPS可降水量とヒートアイランド現象に着目した気象観測データの解析を行った.その結果,この日,大気の状態は不安定で,平野スケールの地上風の収束場が都心に位置しており,山岳から都心に移動してきた降水系に伴う発散風と海風としての南風の局所的な収束が都心で生じていたことが確認された.さらには,可降水量の増加域は降水域と一致しており,その値は降水の数時間前に増加し,約1時間前に最大になる傾向にあったことがわかった.しかしながら,ヒートアイランド現象は明瞭に見られたものの,それに伴う都心での明瞭な水蒸気の集積は認められなかった.本事例の場合,ヒートアイランドが東京で強い上昇流を引き起こしながら水蒸気を集積し豪雨を発生させたと考えることは難しい.
著者
岡田 牧 日下 博幸 髙木 美彩 阿部 紫織 高根 雄也 冨士 友紀乃 永井 徹
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.23-29, 2014-01

2010年当時の国内最高気温40.9℃が記録された岐阜県多治見市における夏季の気温分布を調べるために,2010年8月に多治見市並びに愛知県春日井市の学校及び公園に計15台の気温計を設置した.月平均気温の空間分布から,盆地底に位置する多治見市中心部ほど気温の高い様子が示された,また,日最高気温35℃以上の日数(猛暑日数)と日最低気温が25℃以上の日数(熱帯夜数)についても,多治見市中心部で最も多かった.更に,日最低気温が現れやすい早朝の気温分布においても,多治見市中心部ほど気温が高かった.夜間の盆地底は冷気層の形成によりその周囲よりも低温になりやすい.しかしながら気温が下がりにくかったという結果から,多治見市の日最低気温の形成に多治見市の都市化が影響していることが推察された.
著者
加藤 隆之 日下 博幸
出版者
The Association of Japanese Geographers
巻号頁・発行日
pp.8, 2013 (Released:2013-09-04)

1.はじめに斜面温暖帯の研究は古くから行われ、近年ではKobayasi et al (1994)は夜間の斜面上複数地点の鉛直気温分布を明らかにする実測的研究を行った。また、斜面冷気流、斜面温暖帯、冷気湖が動的相互作用を示すために斜面温暖帯を単独では考えられないことについても明らかにされている(Mori and Kobayasi 1996)。しかしながら、斜面温暖帯の詳細な時系列変化について、上空の風の場を含む観測や高解像度化した数値シミュレーションによる検証は現在まで行われていない。本研究は筑波山を例として、斜面温暖帯と斜面下降流の詳細な構造の時系列変化を観測と数値モデルにより明らかにすることを目的とする。2.斜面温暖帯の観測筑波山での斜面流・温暖帯の実態を明らかにするため2012年12月9日よりウェザーステーション、サーモカメラ、パイバル、係留気球を用いた観測を行っている。本観測は、斜面流・斜面温暖帯の時間変化を気温・風の鉛直分布という双方の視点から捉えることが可能である。12月13日夜~14日の早朝の事例では、筑波山斜面南および北西斜面において顕著な斜面温暖帯が観測された。12月13日21時の筑波山西側斜面のサーモカメラによる表面温度分布(図1左)によれば、標高200~300m付近に上下よりも3℃程温度が高い斜面温暖帯が存在している。一方、14日5時(図1右)のサーモカメラによる観測では、標高400~500mに帯状に高温帯が出現している。この時の斜面温暖帯は、前日21時のものよりも温度差としては小さく、その強度は1.5℃程度である。3.斜面温暖帯の数値実験数値モデルには階段地形を導入した二次元非静力学ブジネスク近似の方程式系を採用した。このような数値モデルは筑波山のような斜面の角度が複数段階となっている地形の斜面温暖帯の時間変化について議論が可能である。計算対象領域を水平20km、上空2500mとし、基本場の温数位勾配を0.004K/m、上空の地衡風を0m/sに設定した数値シミュレーションを行った。実験の結果から、十分に時間が経った山麓(計算開始5時間後)では地上に冷気湖が形成され、基本場の気温逓減率によって冷気湖面上部の斜面上に相対的に気温が高くなる斜面温暖帯が再現された(図2)。この結果は斜面温暖帯が冷気湖面の高度に対応しているという従来の研究結果と合致する。風速分布のシミュレーション結果からは冷気流の流入が活発になる高度と斜面温暖帯が同一であることや、冷気湖の発達により冷気湖面より下部に位置する地点では湖面上部と比較して風速が弱くなる様子が再現された。また、斜面下降流に対する補償流は、主に山地上部の水平方向から供給されており、斜面温暖帯形成要因として鉛直方向からの上空の高温位空気の流入(断熱圧縮による気温上昇)はないものと考えられる。
著者
久野 勇太 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

1. はじめに<BR> 日本有数の大都市である名古屋が位置する濃尾平野およびその周辺では, 1時間に数十mmにも及ぶ強雨が度々観測されており, 研究が行われてきた. 統計解析を行った研究としては, 以下のようなものがある. 田中ほか(1971)は, 1961~1965年および1968年の計6年間において, 東海地方4県(静岡・愛知・岐阜・三重)の中で日雨量200 mm以上を観測した地点が1か所以上存在した計41日に対して, 名古屋のレーダーによるエコーセルの移動方向と雨量図との関係を調査した. 小花(1977)は, 1975~1976年の計2年間の5~10月に関してアメダスデータを用いて, 東海地方における強雨の発生域と潮岬の下層風向・混合比・不安定度との関係を調査した. 田中ほか(1971)と小花(1977)はともに, 濃尾平野周辺の山地における風上側に強雨域が見られることを示した. このように, これまでの研究の多くでは, 濃尾平野周辺で発生する降水に関して, 風向と降水発生域の関係性に著しい調査がなされてきた. 強雨による災害への対策のためには, さらに空間的・時間的に詳細な降水分布や強雨が発生しやすい時間帯の把握が, 重要であると考えられる.<BR> 本研究では, 空間的・時間的に高密度な観測データを用いて, 夏季の濃尾平野周辺における降水の発生分布・発生時間帯の特性を明らかにすることを目的とする.<BR><BR>2. 方法<BR> 本解析では, アメダスデータおよび愛知県・岐阜県の川の防災情報の10分間雨量データを使用する. 解析期間は, 2002~2009年の6~9月の全日(計976日)および真夏日(計510日)とする. また, 日界は日射の効果を考慮し, 日の出の時刻として06時(日本時間)と定めた. 解析に際して, 強雨日・短時間強雨日をそれぞれ, 以下の条件を全て満たす日と定義する.<BR> 強雨日:<BR> 1) 10 mm/h以上の1時間降水量(連続する6つの10分間降水量の合計値, 以下P_hour)を記録した日.<BR> 短時間強雨日:<BR> 1) 10 mm/h以上のP_hourを記録した日.<BR> 2) 短時間強雨開始時刻から短時間強雨終了時刻までが3時間以内.<BR> 3) P_hourが10 mm/h以上の期間の前後6時間に, 10 mm/h以上の降水が観測されていない.<BR>これらの定義において, 濃尾平野周辺における月平均降水量・強雨日出現確率・短時間強雨日出現確率を調査する. さらには, 濃尾平野周辺における, 強雨・短時間強雨の発生時間帯, 日最大1時間降水量の降水量別頻度を調査する.<BR><BR>3. 結果と考察<BR> 2002~2009年の6~9月における濃尾平野周辺の降水分布および降水発生時間帯の特徴として, 以下の点が挙げられる.<BR>1) 濃尾平野より北~北東側の山地において, 標高の高い地域を除いて, 月平均降水量・強雨日数・短時間強雨日数が多い.<BR>2) 濃尾平野における月平均降水量・強雨日出現確率・短時間強雨日出現確率は, 伊勢湾を囲む他の低標高地域における月平均降水量・強雨日出現確率・短時間強雨日出現確率に比べて値が大きい. さらには, 濃尾平野内でも北部の方がより値が大きい傾向にある.<BR>3) 濃尾平野より北東の山地では, 解析対象期間・真夏日ともに,10 mm/h以上の強雨・短時間強雨の発生は夕方に顕著なピークを持つ. また, 傾向は小さいものの, 濃尾平野内でも真夏日の夕方に10 mm/h以上の強雨の発生ピークが見られた.<BR><BR>謝辞<BR> 本研究は,文部科学省の委託事業「気候変動適応研究推進プログラム」において実施したものである.<BR><BR>参考文献<BR>田中勝夫・深津林・服部満夫・松野光雄 1971. エコーの移動方向で分類した東海地方の大雨の型. 気象庁研究時報 23:431-443.<BR>小花隆司 1977. 東海地方の強雨と地形(Ⅰ). 天気 24:37-43.<BR>
著者
木村 広希 川島 英之 日下 博幸 北川 博之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.323-331, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

気候学研究においては,特定の気圧配置を示す事例を選ぶ必要から,過去の気圧配置を分類することがある.気圧配置の分類は多くの場合,目視で行われており,長期間かけて行うことや複数人で行うことがある.これらの場合,判断にぶれが生じたり,分類結果が研究者の主観に左右されたりする可能性がある.本稿では,この気圧配置の分類に,パターン認識手法であるサポートベクターマシンを用いて,分類を自動化することを提案する.本研究では,日々の気圧配置からの西高東低冬型の検出を目的とし,実験により提案手法の有用性を検討した.JRA-25のデータを用い,1981~1990年を学習期間,1991~2000年を検証期間として実験を行った結果,最良で90%以上の適中率で西高東低冬型を検出できることがわかった.これより,学習データの与え方に主観が影響するものの,分類の際の負担を軽減でき,判断基準が変わることなく,ある程度の精度で気圧配置を分類できると考えられる.
著者
秋本 祐子 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.324-340, 2010-05-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2 4

領域気象モデルWRFの入力データ(大気・土地利用・海面水温・地形),および地表面パラメータ(粗度・アルベド)の変化に対する感度実験を行い,それらが地上気温の再現精度に与える影響を定量的に比較した.結果は以下の通りである.デフォルトの設定による計算では,日最高気温・日最低気温がともに関東平野全域で過小評価される.大気の入力データとして,デフォルトのデータの代わりに気象庁のメソ客観解析データを用いると,前述した地上気温の過小評価が改善される.土地利用データとして,デフォルトのデータの代わりに国土数値情報の土地利用データを使用すると,熊谷を含む郊外の中小都市の存在が識別できるようになる.その結果,関東平野の北西部で気温が上昇し,地上気温の過小評価が改善される.海面水温データ・地形データの変更,および地表面パラメータの変更は,地上気温の計算結果に大きな影響を与えないことが分かった.
著者
鈴木パーカー 明日香 日下 博幸
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.59-72, 2015-03-10 (Released:2015-04-14)
参考文献数
33

暑熱指標 WBGT(wet-bulb globe temperature)に基づき,将来の日本の暑熱環境予測を行なった.これに先立ち,全国の官署データを基に 1991–2010 年 8 月を対象とした現状把握を行った所,現在の日本はすでに厳しい暑熱環境にあることが示された.特に関東以西の地域では 8 月の日中平均 WBGT 気候値が 26℃以上となっているが,これは日本生気象学会等が定める熱中症指針では「警戒レベル」に相当する.比較的冷涼な札幌や仙台などでも,WBGT 値が「危険レベル」に達することもあるという結果が得られた.将来予測は 21 世紀末の 20 年間をターゲットとし,全球気候モデルによる予測データを領域気候モデルによって高解像度化する力学的ダウンスケール手法を用いて行なった.その結果,将来の暑熱環境は現在よりさらに悪化し,特に中部以西の多くの地点で 8 月中 20 日以上が「危険レベル」(日最高 WBGT≧31℃)になると予測された.予測 WBGT 昇温量は東北地方で大きく,例えば将来の秋田市は現在の大阪市のような気候になる可能性が示唆された.
著者
川口 純 日下 博幸 木村 富士男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.375-383, 2010-07-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ヤマセは,夏季の北日本の太平洋側に吹き付ける冷たく湿った東寄りの風である.ヤマセ卓越時には,東北地方太平洋側で東~南東の風が吹く.しかしながら,北上盆地では南風が吹く.本研究では,この南風の成因を明らかにするために,データ解析と領域気象モデルWRFを用いた数値実験を行った.結果を以下に示す.(1)WRFを用いた数値実験の結果,実地形を用いた基準実験と,北上高地の地形高度を90%に減少させた実験では北上盆地で南風が吹くが,北上高地の地形高度を80%,70%に減少させた実験では,北上盆地では南風が吹かずに東風が卓越する.(2)この結果は,フルード数やロスビー数を使った力学的解析の結果と一致する.(3)ヤマセ卓越時の北上盆地の南風は,地形障壁の効果と重力流の特徴をよく表している.
著者
日下 博幸 西森 基貴 安成 哲三
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.369-378, 1998-05-31
被引用文献数
9

最高および最低気温偏差の季節変化パターンに着目した主成分分析を, 日本の24観測点について個別に行った.その結果に基づき, 比較観測点を用いることなく, 1観測点のデータから都市化に伴う過去90年間の気温上昇量を推定した.最低気温の第1主成分は, 冬季に大きな値を持ち, 年間を通して全て同符号となる季節変化パターンである.固有ベクトルとスコア時系列から推定された最低気温偏差の時系列(T′_min)には, 昇温のトレンドが見られる.また, この時系列のトレンド(ΔT′_min)と観測点のある都市の人口の対数との間には, 正の相関(相関係数0.76)がある.以上のこと等から, 第1主成分の季節変化パターンは主として都市気候のパターンであり, 時系列のトレンドは都市化に伴う気温上昇率であると推定された.また, このトレンドは0.4〜3.7℃/100年であり, 多くの地点で1℃/100年を越えている.一方, 日本における過去90年間の最低気温の上昇に対して, バックグラウンドの気候変化の影響は0〜1℃/100年程度であり, 昇温の要因として都市化の影響を無視できない大きさであることが明らかとなった.一方, 最高気温の季節変化パターンは最低気温と異なる.推定された最高気温偏差の時系列(T′_max)には最低気温のそれほど明瞭なトレンドは見られない.この結果, 過去90年間の最高気温の変動には, 都市化の影響が顕著に現れていないことが確認された.
著者
三上 岳彦 高橋 日出男 森島 済 日下 博幸
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

東京首都圏 200 カ所の高密度気温観測データと気象庁 AMeDASの風観測データを用いて、夏季気温分布の時空間変動および要因解明を試みた。夏季の海風卓越日と強い単風日について気温偏差分布の日変化のデータ解析および夏季典型日(夏型)を対象とした気温と風の再現実験(WRF モデル)から、関東平野内陸部での高温域に及ぼす風の効果が明らか担った。また、WRF モデルによる都市型集中豪雨の数値シミュレーションを行った結果、都市の存在が首都圏に降雨をもたらす可能性が示唆された。