著者
田上 善夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.100151, 2011

1.&nbsp; はじめに<br> 近年強風の出現とそれに伴う風害の増加がみられる。そこでは地域的に大被害を生ずる一方,被害の少ない地域もみられる。風は地域差が大きく,局地的強風にみられるように山地や谷などの地形の影響が大きい。さらに台風のように規模の大きな擾乱でも,風向と地形の影響で,強風出現に地域差が大きくなると考えられる。ここでは日本列島における近年の顕著な強風について,その出現の傾向や地域性の解明を試みた。<br>2.&nbsp;強風の出現傾向<br>&nbsp; 顕著強風日の出現は,34年間にも出現に大きな経年変動がみられる。1979年,1991年,2004年にピークとなり,その前後にも多い。さらに日別に全国の顕著強風日出現地点総数を集計すると,出現地点数がきわめて多い,すなわち広域に強風が現れる日があることが示された。その上位事例での強風地点分布からは,強風は近隣同士とは限らず遠隔地点同士にも類似の出現傾向のあることが示された。この地点間での強風出現の類似性を明らかにするため,まず日本列島の全アメダス地点間で,顕著強風日の出現について一致係数を求めた。それにもとづき,中央日本付近の地点について,クラスター分析を適用して分類を行った。その結果大きく2タイプに分かれ,A型は太平洋側に多く、B型は日本海側に多い。ただし,周辺域とは異なる型に属する地点があり,たとえばA2型は日本海側の富山湾や若狭湾周辺,岡山県奈義,滋賀県南小松などに現れる。<br>3.&nbsp; 強風出現の要因<br>&nbsp; この顕著強風日出現の遠隔地同士での関係について,事例日から分析を行った。2011年5月29日には,台風2号が南岸沿いに東進し,中部地方から西ではとくに強風となった。この日には岡山県奈義,兵庫県神戸,滋賀県南小松などでは著しい強風となった。これらの地点はいずれも背後に山地を控え,当日の風向に対して山地の風下に位置しており,広戸風,六甲おろし,比良おろし(比良八荒)などの局地的強風群が各地に発生したと考えられる。一方,富山県魚津などでは,周辺地点が強風となる時間帯には風速が極めて弱くなった。周辺地点の風向からは北アルプスの風陰に入ったことが考えられる。このように吹走範囲の限定された局地的強風や局地的弱風が,広域内の各地に同日に出現することは,大規模場での大気の状態のもとで,地域的な要因が強風発生に大きくかかわることを示すと考えられる。

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こんな論文どうですか? 日本列島における強風出現の地域的差異(田上 善夫),2011 https://t.co/WzH96WZsc1 1.&nbsp; はじめに<br> 近年強風の出現とそれに伴う風害の増加がみられる。そこでは地域的に大被害を生ず…
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