著者
上野 加代子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.70-86, 2018-06-30

<p>福祉の領域における社会構築主義の研究は多様であるが, この領域に特有の姿勢を見て取ることができる. それは, 自分たちがクライエントを抑圧してきたという「自身の加害性の認識」と, 「研究結果の実践への反映」である. 本稿では, 福祉の領域に特有のこれらの姿勢に着目し, それに関連する文献を中心にレビューする. 具体的に, ひとつはソーシャルワーカーとクライエントを拘束しているドミナント・ストーリーをクライエントと共同で脱構築しようとするナラティヴ・アプローチの研究の流れである. 本稿で取り上げるもうひとつの構築主義的研究の流れは, ソーシャルワークが専門職として確立, 再確立される過程で, 「トラブルをもつ個人」がどのように創りあげられてきたのかを, 外在的に分析するものである. なお, 「自身の加害性の認識」という点は, 英語圏の文献には顕著であるが, 日本語の文献では弱い. そこで, 英語圏の文献をレビューした後, 日本における構築主義研究ではどうして「自身の加害性の認識」という観点が乏しいのかについて考察する. そして最後には, 近年の英語圏の文献では自身の加害性のみならず, 「被害者性」についても議論されていることを踏まえ, 自分自身の知識や実践に対する構築主義研究が, 「自分は加害者たることを強制された被害者だ」という自己弁護に陥る危険をはらみつつも, 社会制度変革へのコミットにつながることに触れておきたい.</p>

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福祉の研究領域における構築主義の展開 https://t.co/068iIsGLz6

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